Skip to main content

スイスのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、スイスのテンサイ(甜菜)の生産量は1961年から2023年までの長期にわたり大きな変動を見せています。1960年代の年間生産量は概ね20~40万トン台でしたが、1980年代以降急激に増加し、1990年代後半から2000年代には100万トンを超える年が続きました。ピークは2014年の1,924,260トンで、その後やや減少傾向にあります。近年では2023年の生産量が1,199,626トンとなり、幅広い要因による回復と減少のサイクルが現れていることがわかります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,199,626
-11.36% ↓
2022年 1,353,353
22.8% ↑
2021年 1,102,116
-15.51% ↓
2020年 1,304,494
-10.32% ↓
2019年 1,454,536
15.12% ↑
2018年 1,263,462
-18.21% ↓
2017年 1,544,781
20.93% ↑
2016年 1,277,407
-5.78% ↓
2015年 1,355,710
-29.55% ↓
2014年 1,924,260
39.82% ↑
2013年 1,376,289
-17.72% ↓
2012年 1,672,761
-8.5% ↓
2011年 1,828,184
40.41% ↑
2010年 1,302,055
-24.29% ↓
2009年 1,719,707
5.81% ↑
2008年 1,625,220
3.32% ↑
2007年 1,572,925
26.57% ↑
2006年 1,242,728
-11.82% ↓
2005年 1,409,357
-3.19% ↓
2004年 1,455,811
15.79% ↑
2003年 1,257,314
-10.7% ↓
2002年 1,407,910
34.06% ↑
2001年 1,050,200
-25.44% ↓
2000年 1,408,448
18.74% ↑
1999年 1,186,176
5.47% ↑
1998年 1,124,644
-4.69% ↓
1997年 1,180,030
3.31% ↑
1996年 1,142,199
38.62% ↑
1995年 823,955
-2.07% ↓
1994年 841,404
-13.83% ↓
1993年 976,439
7.62% ↑
1992年 907,270
1.21% ↑
1991年 896,446
2.58% ↑
1990年 873,885
-1.62% ↓
1989年 888,251
-3.71% ↓
1988年 922,479
11.97% ↑
1987年 823,874
8.22% ↑
1986年 761,300
-3.5% ↓
1985年 788,900
-8.27% ↓
1984年 860,000
3.37% ↑
1983年 832,000
-0.48% ↓
1982年 836,000
-7.32% ↓
1981年 902,000
33.63% ↑
1980年 675,000
-13.62% ↓
1979年 781,400
23.31% ↑
1978年 633,700
16.3% ↑
1977年 544,900
-7.18% ↓
1976年 587,031
22.43% ↑
1975年 479,500
-7.5% ↓
1974年 518,400
-3.91% ↓
1973年 539,500
36.34% ↑
1972年 395,700
-16.2% ↓
1971年 472,200
24.53% ↑
1970年 379,200
-3.34% ↓
1969年 392,300
-13.4% ↓
1968年 453,000
6.99% ↑
1967年 423,400
15.68% ↑
1966年 366,000
22.98% ↑
1965年 297,600
-17.72% ↓
1964年 361,700
21.83% ↑
1963年 296,900
76.94% ↑
1962年 167,800
-24.99% ↓
1961年 223,700 -

スイスのテンサイ生産量は60年以上の期間で著しい変動を経験しており、この推移については農業技術の進歩、政策の変化、気象条件の影響、そして国際的な市場動向が大きく関与しています。1960年代、テンサイの生産量は年間20万トン台から始まり、次第に40万トンを超える水準へと成長しました。このころの生産量増加は、農業技術の進歩や農地の効率的な利用の影響が大きかったと考えられます。

1980年代から1990年代にかけて、スイスでは収穫量の急上昇がみられ、1996年には1,142,199トン、2000年には1,408,448トンに達しました。この急増は、作物栽培の効率化や、テンサイを原料とする砂糖需要の増加に伴う政策的な奨励策が影響した可能性があります。その後、スイスでは農業分野での環境政策や補助金の改革も進められました。この時期には、EU諸国との統一市場の形成が進む中で、スイスの農業が競争力を維持しつつも、環境負荷を抑える方向へとシフトしていきました。

2014年の1,924,260トンという最大値の後、生産量は減少傾向となりました。特に2018年以降は、再び100万トン台前半に停滞していることが特徴です。収量減少の主な原因は、気候変動に伴う干ばつや異常気象が指摘されています。加えて、テンサイに影響を与える病害虫の発生、そして輸入砂糖との競争激化も意識されます。国際市場において、価格競争力を確保することが難しくなったことが、特に近年の生産量減少を後押ししていると考えられます。

この中で注目すべきは、スイスが環境保護に重点を置いた農業方針を維持しつつ、大規模な農地活用よりも多機能な農業を目指している点です。このことは、スイスのテンサイ生産にも持続可能性を求める課題を課しているといえます。また、新型コロナウイルス感染症が世界的に影響した2020年以降も、一部では労働力確保の難しさや物流の混乱が生産量の制約要因となったと報告されています。

今後の課題としては、気候変動にどう対応していくかが重要です。具体的には、テンサイの病害虫対策や耐干ばつ品種の開発が必要とされます。さらに、持続可能な灌漑システムの導入や、土壌の健康を保つための農法の改良も検討するべきです。また、スイスの農産物が輸入品と競争する中で、消費者への地元産品の価値アピールも欠かせません。例えば、スイス国内の砂糖需要に対する地産地消の概念を広めるマーケティング政策や、農家への直接支援政策も効果的でしょう。

結論として、スイスのテンサイ生産は長期的な成長から安定期、そして近年の揺り戻しが見られる複雑な動態を示しています。このデータが示す現実を踏まえ、テンサイ生産が持続可能であると同時に、経済的にも競争力を持つ取り組みが今後の柱となるべきです。国際競争力と環境保護を両立させる政策と技術革新が、これからのスイス農業の未来を形作っていくことでしょう。