Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、スイスのイチゴ生産量は、1960年代の年間約2,500トンから2020年代には8,000~9,000トン規模に増加しました。しかし、継続的な増加傾向ではなく、大きな変動が見られることが特徴です。特に、2014年に約10,900トンとピークを迎え、その後再び減少し、直近数年間は比較的安定した生産量を維持していることがわかります。地形的条件や気候変動、農業技術向上などの諸要因が、生産量の推移に影響を及ぼしていると考えられます。
スイスのイチゴ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 8,389 |
2021年 | 8,785 |
2020年 | 9,074 |
2019年 | 8,545 |
2018年 | 8,209 |
2017年 | 7,334 |
2016年 | 9,188 |
2015年 | 9,158 |
2014年 | 10,906 |
2013年 | 8,743 |
2012年 | 8,494 |
2011年 | 8,216 |
2010年 | 7,362 |
2009年 | 6,862 |
2008年 | 6,994 |
2007年 | 7,798 |
2006年 | 7,561 |
2005年 | 8,543 |
2004年 | 9,240 |
2003年 | 8,174 |
2002年 | 7,968 |
2001年 | 8,160 |
2000年 | 8,177 |
1999年 | 8,104 |
1998年 | 8,259 |
1997年 | 8,446 |
1996年 | 8,274 |
1995年 | 8,931 |
1994年 | 7,946 |
1993年 | 7,899 |
1992年 | 7,118 |
1991年 | 6,400 |
1990年 | 6,972 |
1989年 | 5,804 |
1988年 | 5,470 |
1987年 | 4,870 |
1986年 | 4,200 |
1985年 | 5,030 |
1984年 | 4,400 |
1983年 | 4,200 |
1982年 | 4,100 |
1981年 | 3,000 |
1980年 | 3,500 |
1979年 | 2,800 |
1978年 | 3,000 |
1977年 | 2,780 |
1976年 | 2,430 |
1975年 | 2,300 |
1974年 | 2,600 |
1973年 | 2,200 |
1972年 | 3,500 |
1971年 | 2,500 |
1970年 | 3,300 |
1969年 | 3,500 |
1968年 | 3,500 |
1967年 | 2,674 |
1966年 | 2,500 |
1965年 | 2,500 |
1964年 | 2,500 |
1963年 | 2,500 |
1962年 | 2,500 |
1961年 | 2,500 |
スイスは、アルプス山脈をはじめとする険しい地形と比較的小規模な農地を持つ国ですが、高品質な農産物で知られています。そんな中で、イチゴ生産は1960年代初期の年間2,500トンを下回る低水準からスタートし、その後数十年にわたり着実に量を増やし、1990年代には概ね7,000~9,000トン台へと大幅な増加を遂げました。この結果、スイスのイチゴ生産は国内需要の一部を賄うのに十分な規模となっています。また、需要に応えるため、輸入イチゴへの依存も一定割合を保持している状況です。
注目すべき点として、1980年代から1990年代にかけて生産量が急成長を遂げた背景には、農業技術の発展や作付面積の拡大が挙げられます。この時期、スイス政府や農業団体は高付加価値農産物へのシフトを推進しました。また、地元消費者が国産品を選好する傾向が、国内生産を支える重要な要因となっています。
近年では、気候変動や異常気象による影響が注目されています。特に2014年には年間約10,900トンとピークを記録しましたが、これが一時的なものであった可能性が高く、それ以降のデータでは再び生産量が低下しています。例として、2022年の生産量は約8,300トンであり、国内需要を満たすには一定の輸入依存が不可避とされています。気候変動は作物の品質やスケジュールにも影響を与え、現地の農業従事者に新たな挑戦をもたらしています。
他国との比較では、近隣のドイツとフランスのイチゴ生産量は、広範な農地と異なる気候条件に恵まれ、スイスの規模をはるかに上回ります。ドイツでは年間約15万トン、フランスでも約6万トンのイチゴが生産されています。同じヨーロッパ各国でありながら、スイスが地形的に作物の大規模栽培に不向きであるという制約がここでも明らかです。
今後の課題としては、気候変動への対応が急務となります。技術革新を通じて効率的な灌漑システムを導入し、農作物のストレスを最小限に抑える必要があります。また、高耐性品種の開発に注力し、気候変動に強いイチゴ栽培を促進することが推奨されます。加えて、持続可能な農業政策や地元生産者への補助金の拡充も必要不可欠と考えられます。さらに、隣国との協力体制を強化し、情報や技術交換を進めることも有益です。
結論として、スイスのイチゴ生産は過去数十年間で大幅に成長しましたが、それを一貫して維持することは難しいという側面もあります。地理的な制約や気候要因が複雑に絡み合う中、未来志向の農業政策と技術革新が、スイスの持続可能なイチゴ生産を実現する鍵となるでしょう。そのためには、地元政府だけでなく、国際機関や隣国との連携も重要となります。