国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年最新データによると、ガンビアの牛飼養数は1961年の15万頭から1990年代にかけて増加を続け、2009年には43万2,000頭とピークを迎えました。その後、2010年代後半から減少に転じ、2022年には28万1,430頭にまで減少しました。この長期的な増加と近年の減少は、農村経済や環境、気候変動などの複合的な要因が影響していると考えられます。
ガンビアの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 281,430 |
2021年 | 283,300 |
2020年 | 285,182 |
2019年 | 311,237 |
2018年 | 346,860 |
2017年 | 396,554 |
2016年 | 465,381 |
2015年 | 482,905 |
2014年 | 479,183 |
2013年 | 436,054 |
2012年 | 372,801 |
2011年 | 398,472 |
2010年 | 425,000 |
2009年 | 432,000 |
2008年 | 420,000 |
2007年 | 415,000 |
2006年 | 413,000 |
2005年 | 410,000 |
2004年 | 408,000 |
2003年 | 396,000 |
2002年 | 326,556 |
2001年 | 323,167 |
2000年 | 364,113 |
1999年 | 361,402 |
1998年 | 358,712 |
1997年 | 356,042 |
1996年 | 353,392 |
1995年 | 350,761 |
1994年 | 348,150 |
1993年 | 345,558 |
1992年 | 342,986 |
1991年 | 340,433 |
1990年 | 327,000 |
1989年 | 327,000 |
1988年 | 317,000 |
1987年 | 305,000 |
1986年 | 295,000 |
1985年 | 290,000 |
1984年 | 285,000 |
1983年 | 295,000 |
1982年 | 297,000 |
1981年 | 295,000 |
1980年 | 293,210 |
1979年 | 292,000 |
1978年 | 291,000 |
1977年 | 290,000 |
1976年 | 288,000 |
1975年 | 285,000 |
1974年 | 280,000 |
1973年 | 275,000 |
1972年 | 270,000 |
1971年 | 260,000 |
1970年 | 248,698 |
1969年 | 232,695 |
1968年 | 221,227 |
1967年 | 207,329 |
1966年 | 200,000 |
1965年 | 195,000 |
1964年 | 188,000 |
1963年 | 181,996 |
1962年 | 160,600 |
1961年 | 150,000 |
ガンビアの牛飼養数推移を詳細に見てみると、一貫して増加傾向にあった1960年代から1990年代にかけては、農村部を中心とする牧草地の拡大や、家畜飼養が地方経済の主要な活動であったことが飼養頭数の増加を支えたと考えられます。この時期、農業が国民の生活の中核を担っており、牛もまた食料供給のみならず、耕作や輸送手段として広く利用されました。
一方、2009年以降減少に転じた背景としては、一つには気候変動による干ばつや洪水などの悪影響が考えられます。ガンビアを含むサヘル地域では雨量不足の年が続き、牧草地の減少が牛の飼養に直接的な打撃を与えています。また、農村人口の減少や都市部への人口移動も一因とみることができます。都市化が進むにつれ、従来の牧畜に依存した生活スタイルから離れる動きが広がっています。
さらに、疫病や経済的な要因も無視できません。特に2017年以降、急激な減少が見られ、2022年には1960年代の水準(28万頭強)に近い低い数値となっています。この減少傾向は、牛の疫病の蔓延による被害や、新型コロナウイルス感染症による経済的混乱が地方の牧畜経営に悪影響を与えた可能性が考えられます。
これらの背景を考慮すると、未来に向けた課題として、牛飼養数の増加と持続可能性の両立が挙げられます。一つのアプローチとしては、家畜の健康状態を管理し、疫病の予防を徹底するための国際機関や地域レベルでの技術支援が必要です。また、牧草地の減少に対抗するため、持続可能な農業や牧畜技術の導入が求められるでしょう。この際、アフリカ諸国で既に導入が進んでいる「輪作を利用した可動式牧畜システム」の採用も選択肢となります。
さらに、牛の飼養数が減少する中でも、経済的価値を高める方法も検討すべきです。一例として、牛乳や牛肉の高付加価値製品を国内外へ輸出することで、経済的利益を最大化させる政策が考えられます。加えて、地域周辺国との協力を進め、特に乾燥化の影響を受けやすい地域特有の気候変動対策として共同牧草地の運用や水資源管理技術の共有を行うべきです。
結論として、ガンビアの牛飼養数推移は、単なる数値以上に、気候変動や経済状況、農牧業技術の発展など、様々な要因が複雑に絡み合っていることを示しています。この現状をふまえ、国際的な技術協力や政策調整を通じて、環境との調和を保ちながら地域の経済基盤を安定させる取り組みが急務です。特に、2022年の低水準からの回復を目指すには、環境保護、畜産技術教育、そして疫病管理の強化が鍵となります。