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ガンビアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の最新データによれば、ガンビアの牛乳生産量は長期的に増加傾向を示していましたが、近年には著しい減少が見られます。特に1961年から1990年代にかけて、牛乳生産量は安定的に増加し、1997年には約58,911トンに達しました。ただし、2010年代後半から急激に減少し、2023年には48,565トンという水準に留まる結果となっています。この生産量減少には複数の経済的、社会的要因が関係しており、これがガンビアの食料安定性に与える影響が懸念されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 48,565
-0.23% ↓
2022年 48,679
-0.42% ↓
2021年 48,882
-0.42% ↓
2020年 49,087
-6.21% ↓
2019年 52,335
-7.65% ↓
2018年 56,672
-20.49% ↓
2017年 71,276
-4.13% ↓
2016年 74,343
-5.72% ↓
2015年 78,852
2.09% ↑
2014年 77,235
3.09% ↑
2013年 74,921
0.01% ↑
2012年 74,911
0.95% ↑
2011年 74,204
5.55% ↑
2010年 70,304
-2.2% ↓
2009年 71,885
2.9% ↑
2008年 69,857
1.22% ↑
2007年 69,012
0.5% ↑
2006年 68,668
0.75% ↑
2005年 68,158
0.51% ↑
2004年 67,814
3.1% ↑
2003年 65,774
3.29% ↑
2002年 63,679
2.25% ↑
2001年 62,280
3.24% ↑
2000年 60,325
0.71% ↑
1999年 59,900
0.71% ↑
1998年 59,475
0.96% ↑
1997年 58,911
0.73% ↑
1996年 58,486
0.73% ↑
1995年 58,062
0.74% ↑
1994年 57,637
0.74% ↑
1993年 57,213
0.99% ↑
1992年 56,650
0.26% ↑
1991年 56,503
849.63% ↑
1990年 5,950
3.03% ↑
1989年 5,775
3.13% ↑
1988年 5,600
3.23% ↑
1987年 5,425
3.33% ↑
1986年 5,250
3.45% ↑
1985年 5,075
3.57% ↑
1984年 4,900
-6.67% ↓
1983年 5,250
1.01% ↑
1982年 5,198
0.68% ↑
1981年 5,163
0.68% ↑
1980年 5,128
0.34% ↑
1979年 5,110
0.34% ↑
1978年 5,093
0.34% ↑
1977年 5,075
0.69% ↑
1976年 5,040
1.05% ↑
1975年 4,988
1.79% ↑
1974年 4,900
1.82% ↑
1973年 4,813
1.85% ↑
1972年 4,725
3.85% ↑
1971年 4,550
4.54% ↑
1970年 4,352
6.88% ↑
1969年 4,072
5.18% ↑
1968年 3,872
6.7% ↑
1967年 3,628
3.67% ↑
1966年 3,500
2.56% ↑
1965年 3,413
3.72% ↑
1964年 3,290
3.3% ↑
1963年 3,185
13.33% ↑
1962年 2,811
7.07% ↑
1961年 2,625 -

ガンビアの牛乳生産量の推移を見ると、1961年の2,625トンから1960-70年代を通じて安定的な成長を遂げてきたことがわかります。この時期は、農業システムの少しずつの近代化と家畜管理の改善が進み、牛乳生産の基盤が整いつつあったと考えられます。また、地元市場における乳製品需要の緩やかな増加もこれを後押しした要因です。

1990年代に入り、ガンビアは牛乳生産量で飛躍を遂げ、1991年には突如56,503トンを記録しました。この劇的な増加は、牛の飼育頭数の増加や酪農技術の普及が進んだこと、さらには酪農業を支える政策支援が影響したと考えられます。しかし同時に、統計上の急激な変動が見られる点にはデータの信頼性や記録方法の変化などの外的要因の影響も考慮する必要がありそうです。

2000年代になると、ガンビアでは牛乳生産量の成長がやや安定しましたが、それでも年間1,000トン~2,000トン程度の上昇が続きました。2009年には71,885トンに達し、同国の牛乳生産量の歴史におけるピークとなりました。しかし、2016年以降は急激に減少し、2023年には48,565トンまで落ち込み、過去の支持基盤を大きく後退させているのが現状です。この減少は、持続可能な酪農体制の問題や気候変動影響、経済的困難、さらには疫病及び地政学的なリスクが影響していると考えられます。

気候変動による干ばつや降雨の不均衡は、ガンビアの牧草地や水資源に深刻な影響を及ぼしました。これに加え、2020年以降の世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、酪農業の供給チェーンを混乱させています。たとえば、生乳の価格低迷や輸送コストの増加が中小酪農家の収益性を圧迫し、生産意欲の低下を招きました。また、経済的支援策の不足や農業技術の更新の遅れがさらにこの傾向を加速させたと言えるでしょう。

地域的課題として、ガンビアにおける酪農業の近代化が進まず、未だ伝統的な飼育方法に依存している点が挙げられます。これらは環境変化への適応に十分対応できていない状況を反映しています。周辺国との比較では、酪農業が比較的発展しているケニアやエチオピアなどでは、国際市場への輸出を視野に入れた近代的な酪農システムが導入されています。一方、ガンビアのような規模が小さく技術投資の少ない国々では、内需すら満たすのが困難です。

これに対する具体的な提言として、以下のような取り組みが挙げられます。まず、気候変動への適応能力を高めるための技術的支援が不可欠です。特に、干ばつ耐性の高い牧草品種の導入や、水資源の効率的な利用を可能とする灌漑技術の開発は急務です。さらに、酪農家への金融支援や低利融資プログラムの設立も重要です。これは、飼育環境の改善や技術導入を可能にする一助となるでしょう。地域協力の強化も鍵となる課題です。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)を通じて、他国との技術共有や酪農製品の取引促進を図ることが期待されます。

これらの対策を進めることで、ガンビアの牛乳生産量の再建だけでなく、食料安全保障の安定化にも寄与することができると考えられます。一方、国だけでは解決が難しい課題も多く、国連機関や国際NGOの支援を通じて持続可能な酪農発展の枠組みづくりが求められます。

結論として、ガンビアの牛乳生産量の減少は、気候変動や経済問題、技術的制約など複数の課題が絡み合った結果として現れています。ただし、適切な政策と支援を組み合わせることで、再び生産量を増加基調に戻すことは可能です。