国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、ガンビアの落花生生産量は長期的に大きな変動を見せています。特に1961年から1970年代前半まで生産量が比較的高水準で安定していたものの、その後は減少と回復を繰り返しながら、近年では極端に低い水準に落ち着いています。2023年の生産量は55,000トンで、最盛期の1966年の142,000トンに比べると大幅な減少が見られます。
ガンビアの落花生生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 55,000 |
-1.61% ↓
|
2022年 | 55,902 |
37.24% ↑
|
2021年 | 40,734 |
13.89% ↑
|
2020年 | 35,766 |
5.19% ↑
|
2019年 | 34,000 |
54.55% ↑
|
2018年 | 22,000 |
-62.07% ↓
|
2017年 | 58,000 |
-18.31% ↓
|
2016年 | 71,000 |
-21.11% ↓
|
2015年 | 90,000 |
11.59% ↑
|
2014年 | 80,650 |
-14.08% ↓
|
2013年 | 93,862 |
-21.53% ↓
|
2012年 | 119,614 |
42.64% ↑
|
2011年 | 83,858 |
-39.07% ↓
|
2010年 | 137,631 |
12.86% ↑
|
2009年 | 121,950 |
11.23% ↑
|
2008年 | 109,641 |
51.11% ↑
|
2007年 | 72,557 |
-36.63% ↓
|
2006年 | 114,500 |
7.01% ↑
|
2005年 | 107,000 |
-21.15% ↓
|
2004年 | 135,697 |
46.01% ↑
|
2003年 | 92,937 |
29.93% ↑
|
2002年 | 71,526 |
-52.65% ↓
|
2001年 | 151,069 |
9.47% ↑
|
2000年 | 138,000 |
12.23% ↑
|
1999年 | 122,958 |
67.39% ↑
|
1998年 | 73,457 |
-5.95% ↓
|
1997年 | 78,101 |
70.44% ↑
|
1996年 | 45,822 |
-39.05% ↓
|
1995年 | 75,178 |
-6.96% ↓
|
1994年 | 80,804 |
5.32% ↑
|
1993年 | 76,724 |
39.83% ↑
|
1992年 | 54,869 |
-34.8% ↓
|
1991年 | 84,160 |
12.92% ↑
|
1990年 | 74,530 |
-42.62% ↓
|
1989年 | 129,899 |
32.06% ↑
|
1988年 | 98,360 |
-18% ↓
|
1987年 | 119,950 |
8.7% ↑
|
1986年 | 110,350 |
45.58% ↑
|
1985年 | 75,800 |
-27.88% ↓
|
1984年 | 105,100 |
-7.64% ↓
|
1983年 | 113,800 |
-24.83% ↓
|
1982年 | 151,400 |
39.03% ↑
|
1981年 | 108,900 |
80.9% ↑
|
1980年 | 60,200 |
-10.01% ↓
|
1979年 | 66,900 |
-49.85% ↓
|
1978年 | 133,400 |
33.4% ↑
|
1977年 | 100,000 |
-30.07% ↓
|
1976年 | 143,000 |
1.35% ↑
|
1975年 | 141,100 |
-2.82% ↓
|
1974年 | 145,200 |
-4.16% ↓
|
1973年 | 151,500 |
28.39% ↑
|
1972年 | 118,000 |
-13.24% ↓
|
1971年 | 136,000 |
8.8% ↑
|
1970年 | 125,000 | - |
1969年 | 125,000 |
-8.09% ↓
|
1968年 | 136,000 |
4.21% ↑
|
1967年 | 130,500 |
-8.1% ↓
|
1966年 | 142,000 |
10.94% ↑
|
1965年 | 128,000 |
14.29% ↑
|
1964年 | 112,000 |
1.82% ↑
|
1963年 | 110,000 |
4.76% ↑
|
1962年 | 105,000 | - |
1961年 | 105,000 | - |
ガンビアは、農業が国民経済において重要な役割を果たす国であり、その中でも落花生は伝統的に主力の輸出産品として経済を支えてきました。ピーク時の1966年の生産量は142,000トンを記録し、この時期は落花生の輸出が同国の主要な外貨収入源となっていました。しかし、この後の推移を見ると、ガンビアの落花生生産は大きな浮き沈みが繰り返され、特に2000年代に入るとより顕著な減少傾向が見られるようになりました。
まず、1970年代後半から1980年代にかけての減少については、世界市場における落花生の価格低下や、国内のインフラ不足、肥料や灌漑設備の整備の遅れが大きな要因として挙げられます。同時に、気候変動による降雨パターンの不安定化も干ばつや収穫量の低迷につながりました。その結果、1980年には60,200トン、1985年には75,800トンと、1960年代後期の水準から大幅に低下しました。
2000年代に入ると、一部の年代で突発的な回復が見られるものの、全般的に不安定な推移を続けました。例として、2001年の151,069トンや2004年の135,697トンといった一時的な高水準を記録した後、2002年の71,526トンや2007年の72,557トンといったように、短期間で大幅な減少に転じる傾向が顕著です。この周期的な変動には、降水量の変化や農業指導政策の不徹底が影響していると考えられます。
近年では、生産量はさらに低迷しており、特に2018年に22,000トンという最少値を記録しました。その後、わずかに持ち直し2023年には55,000トンとなっていますが、回復基調は依然として弱い状況です。この低生産量はガンビア農業全般の課題を反映しています。例えば、農業従事者の高齢化や若年労働力の流出、農業技術の停滞といった国内要因が生産量減少の重要な原因です。また、近年の気候変動も問題を深刻化させており、不規則な雨季の到来や頻発する洪水が農作物全般に悪影響を及ぼしています。
さらに、近年のCOVID-19パンデミックが農業分野にも影響を及ぼしました。輸送や物流の停滞によって肥料や種子といった農業資材の供給が困難となり、経済的な打撃がさらに落花生生産における回復を遅らせたことも否めません。
ガンビアの落花生産業を再活性化するにはいくつかの施策が必要です。例えば、持続可能な農法を促進するための国際的な支援を受け入れ、灌漑設備や耐乾性品種の導入を拡充することが重要です。また、若年層を対象とした農業教育や投資を充実させ、人材育成を通じて農業の近代化を進めることも欠かせません。さらに、気候変動に対応するため地域協力を強化し、干ばつ対策や水資源の管理を国際的な枠組みの中で進めていくことが必要です。
加えて国際市場での競争力を取り戻す取り組みも必要です。例えば、生産から輸出に至るサプライチェーンの改善やブランド価値向上を目指した戦略が考えられます。こうした点は、インドや中国のように成長を遂げている他の農産品生産国の成功事例から学ぶべき点が多いです。
総じて、ガンビアの落花生産業は依然として課題が多いものの、適切な政策と国際支援を通じて再び成長軌道に乗せる可能性を秘めています。地理的条件や過去の生産実績を活かした新たな挑戦が必要です。そのためには地域内外の協力をいかに取り付けられるかが鍵となるでしょう。