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ガンビアのフォニオ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、ガンビアにおけるフォニオ(西アフリカ原産の穀物)の生産量は、1960年代には徐々に増加していましたが、1970年代半ばから激減し、その後も不安定な状況が続いています。1961年から1973年にかけては生産量が比較的安定して増加し、1961年の6,000トンから1973年には7,400トンに達しました。しかし、1974年以降から1980年代にかけての間に急激な減少が見られました。1984年にはたった100トンまで減少し、その後は回復を試みるも1987年には390トンとなり、長期的に停滞しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 872
123.65% ↑
1987年 390
95% ↑
1986年 200
-33.33% ↓
1985年 300
200% ↑
1984年 100
-75% ↓
1983年 400
-66.67% ↓
1982年 1,200
-45.45% ↓
1981年 2,200
69.23% ↑
1980年 1,300
550% ↑
1979年 200
-77.78% ↓
1978年 900
50% ↑
1977年 600
-33.33% ↓
1976年 900
-25% ↓
1975年 1,200
-20% ↓
1974年 1,500
-79.73% ↓
1973年 7,400
5.71% ↑
1972年 7,000 -
1971年 7,000 -
1970年 7,000
2.94% ↑
1969年 6,800 -
1968年 6,800
4.62% ↑
1967年 6,500 -
1966年 6,500 -
1965年 6,500 -
1964年 6,500
8.33% ↑
1963年 6,000 -
1962年 6,000 -
1961年 6,000 -

ガンビアのフォニオ生産量データを分析すると、この穀物の生産には特定の時期から大きな変動が見られることが分かります。1960年代は比較的安定した成長期を見せており、特に1961年から1973年にかけての緩やかな増加は、当時の農業基盤や気候条件がフォニオ生産に適していたことを示しています。この期間、ガンビアは他の西アフリカ諸国と同様に農業を主要な収入源としており、フォニオは伝統的な食文化に根付く主要な作物の一つでした。

しかし、1974年以降には急激な減少が顕著となり、たった1年で7,400トンから1,500トンへと生産量が減少しました。この急激な落ち込みの要因として、気候変動による干ばつ、農業技術の遅れ、インフラ不足、さらには国民の嗜好の変化や市場における他の主食作物(コメやトウモロコシなど)との競合が挙げられます。1970年代にはサハラ以南のアフリカを襲った干ばつが広域で影響を与え、多くの農作物の収穫減少が観測されています。ガンビアにおけるフォニオ栽培産業は、小規模農民が主流であり、大規模な灌漑(かんがい)施設や先進的な農業設備が整っていなかったことが、こうした自然災害に対する耐性を低下させた要因として考えられます。

また、1970年代以降の減少は人口動態や政策上の影響も無視できません。多くの若年層が農業ではなく都市部での雇用を求めたため、農業労働力が縮小しました。その一方で、政策としてフォニオ生産に直接的な支援が与えられることは少なく、持続可能な収穫量を確保するための研究や共有技術の発展が十分進んでいなかったことも厳しい状況を助長しました。

さらに、フォニオ生産が不安定であった1980年代の背景には、1970年代後半から西アフリカ地域全体において頻発した政治的混乱や経済危機が関与していると考えられます。ガンビアも例外ではなく、これらの外的環境要因が生産供給の低下を加速させた可能性があります。

現在、フォニオ生産を再び復活させ、安定した供給を実現するにはいくつかの具体的な対策が求められます。まず、気候変動への適応策として、耐干ばつ性の高いフォニオ品種の開発や、地域に適した農法の普及が必要です。また、小規模農家でも導入可能な現地仕様の灌漑システムや、収穫後の加工・保管技術の普及も重要です。これに加えて、国内外の市場におけるフォニオの需要を見据えたマーケティング戦略も検討すべきです。フォニオは近年、グルテンフリー食品として国際市場での評価が高まっており、この機会を捉えて輸出を増やす方策が期待されます。

加えて、地政学的視点から見ても、ガンビアの農産物生産の向上は地域の安定化にも寄与すると考えられます。西アフリカ一帯は、食料安全保障の問題が未だ課題として存在しており、ガンビアがフォニオ生産を強化すれば、地域的な需要を満たす可能性が高まります。その結果、食料不足による社会的不安が軽減される可能性があります。

農業分野の発展をより効果的にするためには、国際的な技術支援の活用も視野に入れるべきです。国際農業開発基金(IFAD)や国際連合食糧農業機関(FAO)との連携を深め、技術支援や資金援助を受けることで、小規模農民への直接的な支援を強化できます。さらに、地域内での協力体制の確立を通じて、知識や資源の共有を進めることも肝要です。

データの長期的な分析から、フォニオ生産は環境、政策、社会経済的要因によって大きな影響を受ける作物であることが明らかです。しかし、持続可能な農業体制を築くことで、生産量の安定と拡大、新たな市場開拓による経済的利益の確保が期待できます。フォニオの復興は単なる農業成長以上に、ガンビアの持続可能な発展や地域の食料安全保障にも大きく寄与するでしょう。