国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月最新データによると、ガンビアの牛乳生産量は長期的には増加傾向を示していましたが、近年では急激な減少が見られます。特に1961年から1990年までは緩やかな成長が続き、1991年以降には飛躍的な増加が観測されました。しかし、ピークを迎えた2015年からは生産量が減少に転じ、2022年には48,679トンと2005年レベルまで後退しました。このデータから、ガンビアの酪農業における現状と将来の課題が浮き彫りになっています。
ガンビアの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 48,679 |
2021年 | 48,882 |
2020年 | 49,087 |
2019年 | 52,335 |
2018年 | 56,672 |
2017年 | 71,276 |
2016年 | 74,343 |
2015年 | 78,852 |
2014年 | 77,235 |
2013年 | 74,921 |
2012年 | 74,911 |
2011年 | 74,204 |
2010年 | 70,304 |
2009年 | 71,885 |
2008年 | 69,857 |
2007年 | 69,012 |
2006年 | 68,668 |
2005年 | 68,158 |
2004年 | 67,814 |
2003年 | 65,774 |
2002年 | 63,679 |
2001年 | 62,280 |
2000年 | 60,325 |
1999年 | 59,900 |
1998年 | 59,475 |
1997年 | 58,911 |
1996年 | 58,486 |
1995年 | 58,062 |
1994年 | 57,637 |
1993年 | 57,213 |
1992年 | 56,650 |
1991年 | 56,503 |
1990年 | 5,950 |
1989年 | 5,775 |
1988年 | 5,600 |
1987年 | 5,425 |
1986年 | 5,250 |
1985年 | 5,075 |
1984年 | 4,900 |
1983年 | 5,250 |
1982年 | 5,198 |
1981年 | 5,163 |
1980年 | 5,128 |
1979年 | 5,110 |
1978年 | 5,093 |
1977年 | 5,075 |
1976年 | 5,040 |
1975年 | 4,988 |
1974年 | 4,900 |
1973年 | 4,813 |
1972年 | 4,725 |
1971年 | 4,550 |
1970年 | 4,352 |
1969年 | 4,072 |
1968年 | 3,872 |
1967年 | 3,628 |
1966年 | 3,500 |
1965年 | 3,413 |
1964年 | 3,290 |
1963年 | 3,185 |
1962年 | 2,811 |
1961年 | 2,625 |
ガンビアの牛乳生産量の推移を見ると、1961年から1990年までの約30年間は年平均3~5%の成長を見せ、主に農村経済の発展に支えられていました。この時期、酪農業は地方地域の主要な生計手段の一つであり、人口増加や生活水準の改善が酪農需要を高めたと考えられます。また、1980年代前半に若干の停滞が見られるものの、1980年代後半から1990年代初頭にかけて急激に生産量が増加しました。1991年には前年比約10倍の56,503トンという大幅な伸びが確認されており、この背景には政策支援や酪農インフラの整備があった可能性があります。
2000年代に入ると、ガンビアの牛乳生産量はさらに安定成長を遂げ、特に2001年から2015年の間は生産量が急速に増加しました。2015年の78,852トンは、ガンビアの酪農業が全盛期を迎えた証といえるでしょう。しかしその後、2016年以降には減少傾向が顕著になり、2022年には48,679トンとピーク時の約六割にまで落ち込んでいます。この減少の背景には、気候変動による干ばつや洪水といった自然災害の影響が挙げられます。これに加え、家畜の飼料不足や家畜の健康状態の悪化、さらには地域的な紛争が経済活動に悪影響を及ぼしていると見られます。
ただし、他国と比較してもこの減少は深刻です。例えば、隣国セネガルでは持続可能な農業政策や国際機関の援助に支えられ、牛乳生産量はここ数年安定的に維持されています。同様に、アジア地域のインドでは酪農業の近代化と農業技術の導入により、生産効率が高まり世界最大の生産国となっています。これらの成功例と比べると、ガンビアの生産量低迷は構造的な問題を抱えていると言わざるを得ません。
さらに、ガンビアは地政学的リスクを抱える地域でもあります。西アフリカ地域では不安定な政治体制が紛争や移民問題を引き起こしやすく、これが農業分野全般に影響を与えています。また、近年のCOVID-19パンデミックも供給チェーンに混乱をもたらし、農業活動が停滞したことが牛乳生産量の減少を加速させた一因とも考えられます。
今後の対策として、まずは気候変動への緩和策が欠かせません。耐久性のある飼料供給システムを構築することや、干ばつに強い家畜種の繁殖を進めることが重要です。また、地域内外での連携を強化し、国際機関と協力して資金や教育プログラムを導入することで、農家が近代的な畜産技術を学ぶ機会を増やすべきです。加えて、全国規模の酪農インフラへの投資を増強し、農村地域へ適切な灌漑設備と保存施設を整えることも急務です。
結論として、ガンビアの牛乳生産量はこれまでの成長期を経たものの、近年は自然環境や地政学的要因の影響で大きく減少しています。ガンビア政府は気候変動対策や農業技術の普及、国際的な協力態勢の強化を通じて、酪農業の持続可能性を回復させる取り組みを進める必要があります。これにより、ガンビアが再び安定した生産国としての地位を取り戻すことが期待されます。