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フランス領ポリネシアのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、フランス領ポリネシアにおけるコーヒー豆の生産量は1960年代には大きく変動しながらも100~200トンの間で推移していました。その後1970年代から1980年代にかけて急激に減少し、1990年代にはほぼ10トン前後という低い水準で安定しました。2000年代以降はやや増加傾向を見せながらも微増に留まり、近年では20トン前後で推移しています。過去の大量生産から現在の少量生産への変化は、地元の農業構造や輸出の方向性、また気候条件や地政学的リスクの影響を反映していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 22
2.19% ↑
2022年 21
-0.51% ↓
2021年 22
0.84% ↑
2020年 21
-0.23% ↓
2019年 21
-1.97% ↓
2018年 22
4.95% ↑
2017年 21
-3.57% ↓
2016年 22
3.4% ↑
2015年 21
4.4% ↑
2014年 20
-9.09% ↓
2013年 22
10% ↑
2012年 20 -
2011年 20
10.44% ↑
2010年 18
2.37% ↑
2009年 18
10.56% ↑
2008年 16
-6.65% ↓
2007年 17
1.78% ↑
2006年 17
5.25% ↑
2005年 16
6.67% ↑
2004年 15
-13.89% ↓
2003年 17
-0.34% ↓
2002年 17
-0.4% ↓
2001年 18
-0.34% ↓
2000年 18
-2.17% ↓
1999年 18
12.5% ↑
1998年 16
45.45% ↑
1997年 11
10% ↑
1996年 10 -
1995年 10
11.11% ↑
1994年 9
12.5% ↑
1993年 8
100% ↑
1992年 4
-69.23% ↓
1991年 13
116.67% ↑
1990年 6
-40% ↓
1989年 10
150% ↑
1988年 4 -
1987年 4
-71.43% ↓
1986年 14
-74.55% ↓
1985年 55
-12.7% ↓
1984年 63
-55.63% ↓
1983年 142
153.57% ↑
1982年 56
-53.72% ↓
1981年 121
-27.98% ↓
1980年 168
-6.67% ↓
1979年 180
44% ↑
1978年 125
48.81% ↑
1977年 84
-17.65% ↓
1976年 102
-36.25% ↓
1975年 160
23.08% ↑
1974年 130
8.33% ↑
1973年 120
9.09% ↑
1972年 110 -
1971年 110
7.84% ↑
1970年 102
-29.66% ↓
1969年 145
-23.68% ↓
1968年 190
50.79% ↑
1967年 126
-27.17% ↓
1966年 173
94.38% ↑
1965年 89
-55.5% ↓
1964年 200
41.84% ↑
1963年 141
-47.97% ↓
1962年 271
139.82% ↑
1961年 113 -

フランス領ポリネシアにおけるコーヒー豆の生産量は、1961年の113トンから1962年には271トンに急増、その後1960年代を通して変動が続きました。しかし1970年代に入ると生産量が減少し、特に1977年以降急激な下落を見せました。そして1980年代後半には生産量が10トンを下回り、1987年から1988年にはわずか4トンにまで縮小しました。この減少の背景には、種植面積の減少、気候変動による農業環境の悪化、農業従事者の減少など、多角的な要因が関係している可能性があります。また、コーヒー産業が他の収益性の高い作物や観光業の発展に伴う土地利用の変化に押され、優先順位が後退したことも一因と考えられます。

1990年代から2000年代初頭にかけて、生産量は10トン前後で安定する低水準期が続きました。この間、国際市場の影響も無視できません。フランス領ポリネシアのような限られた規模の生産地では、大規模な生産国であるブラジルやベトナムとの競争が困難であるため、輸出志向型での拡大は難しい状況でした。加えて、地理的な遠隔性や物流コストの高さも、世界市場への参入を難しくした要因として挙げられます。

2000年代後半以降は、年間生産量が17トンから22トンの間で小幅に推移する安定期に入りました。この時期には、ニッチ市場を狙った高品質な少量生産への転向や、観光地としてのブランド力を生かしたローカル需要の開拓が進められていたとみられます。こうした戦略は、観光業の発展によるフランスや他のヨーロッパ市場の注目を浴びることで、地元産品としての価値を高めることを目的としていた可能性があります。

しかし、生産量が増加に転じることはありませんでした。この背景には、農地の不足や労働力の限界、さらには気候変動による生育環境の難易度の上昇が影響しています。特に気候変動の影響は、将来的なリスク要因として軽視できません。温暖化や台風などの極端な気象条件が、地域の農作物全体に与える影響が懸念されます。

ここで注目すべきは、フランス領ポリネシアの市場がもつ特異性です。他国が大量生産と輸出を目指すのに対し、この地域では高品質・少量生産が中核的な戦略として浮上する可能性があります。例えば、日本国内でも少量生産で特産品として価値づけられている地域ブランドやオーガニック農産物の事例を参考に、フランス領ポリネシアのコーヒーも地元の気候や文化に根ざした特徴を売り込むことで、新しい販路を開拓する余地があるのではないでしょうか。

また、観光業との連携をさらに強化することで、現地での消費を増加させることも鍵となります。地元限定のコーヒーブランドや農家直販の仕組みを整えることで、少ない生産量でも高い付加価値を生み出すことが可能となるでしょう。これらの取り組みは、持続可能な農業の普及に寄与しつつ、地域経済の底上げにも重要な役割を果たすと考えられます。

さらに、地政学的背景も考慮する必要があります。他国と比較してもフランス領ポリネシアは輸出競争が激しくなく、政治的安定性が高い一方で、人口の小規模さから労働力不足に直面しやすい地域です。この課題に対処するためには、移民の受け入れや自動化の導入、農業ツーリズムなど革新的な取り組みが必要となります。

結論として、フランス領ポリネシアのコーヒー豆生産量は過去の変動を見ても、大規模な生産地として復活する可能性は低いでしょう。しかし、高品質・少量生産、観光業との連携、持続可能な農業への移行によって、地域独自の価値を形成することは十分に可能です。国際的な視点からは、国際機関やフランス政府の支援による輸送コスト削減や技術的サポートが効果的であると考えられます。これにより、地元経済の自立をさらに強化しながら、地域と自然資源を守る持続可能なモデルへと発展していくことが期待されます。