FAO(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、フランス領ポリネシアの天然蜂蜜生産量は、1961年の7トンから2022年の126トンまで、約18倍に増加しています。この期間において、生産量はゆるやかな成長期、停滞期、そして急成長期を経て、2020年代で安定した高水準を維持しています。特に2000年代以降、生産量の顕著な増加が見られ、2010年以降は100トンを超える水準が続いています。環境条件や養蜂技術の向上が生産量の背景として挙げられますが、同地域での持続可能な生産のためには課題も残されています。
フランス領ポリネシアの天然蜂蜜生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 121 |
-3.45% ↓
|
2022年 | 126 |
2.23% ↑
|
2021年 | 123 |
-3.04% ↓
|
2020年 | 127 |
1.46% ↑
|
2019年 | 125 |
6.82% ↑
|
2018年 | 117 |
-0.09% ↓
|
2017年 | 117 |
-1.01% ↓
|
2016年 | 118 |
-6.93% ↓
|
2015年 | 127 |
9.35% ↑
|
2014年 | 116 |
4.17% ↑
|
2013年 | 112 |
-0.29% ↓
|
2012年 | 112 |
17.89% ↑
|
2011年 | 95 |
-9.52% ↓
|
2010年 | 105 |
27% ↑
|
2009年 | 83 |
19.19% ↑
|
2008年 | 69 |
38.74% ↑
|
2007年 | 50 |
35.14% ↑
|
2006年 | 37 |
-32.73% ↓
|
2005年 | 55 |
12.24% ↑
|
2004年 | 49 |
-2% ↓
|
2003年 | 50 |
25% ↑
|
2002年 | 40 |
25.98% ↑
|
2001年 | 32 |
-0.78% ↓
|
2000年 | 32 |
6.67% ↑
|
1999年 | 30 |
3.45% ↑
|
1998年 | 29 |
11.54% ↑
|
1997年 | 26 |
-13.33% ↓
|
1996年 | 30 |
-25% ↓
|
1995年 | 40 |
-18.37% ↓
|
1994年 | 49 |
8.89% ↑
|
1993年 | 45 |
2.27% ↑
|
1992年 | 44 | - |
1991年 | 44 |
-2.22% ↓
|
1990年 | 45 |
-18.18% ↓
|
1989年 | 55 |
30.95% ↑
|
1988年 | 42 |
7.69% ↑
|
1987年 | 39 |
143.75% ↑
|
1986年 | 16 |
-30.43% ↓
|
1985年 | 23 |
64.29% ↑
|
1984年 | 14 | - |
1983年 | 14 |
16.67% ↑
|
1982年 | 12 |
-20% ↓
|
1981年 | 15 |
50% ↑
|
1980年 | 10 | - |
1979年 | 10 |
66.67% ↑
|
1978年 | 6 | - |
1977年 | 6 |
20% ↑
|
1976年 | 5 |
-28.57% ↓
|
1975年 | 7 |
-36.36% ↓
|
1974年 | 11 |
22.22% ↑
|
1973年 | 9 | - |
1972年 | 9 |
80% ↑
|
1971年 | 5 |
66.67% ↑
|
1970年 | 3 |
-40% ↓
|
1969年 | 5 |
66.67% ↑
|
1968年 | 3 |
-25% ↓
|
1967年 | 4 |
33.33% ↑
|
1966年 | 3 |
-50% ↓
|
1965年 | 6 |
50% ↑
|
1964年 | 4 |
-55.56% ↓
|
1963年 | 9 |
12.5% ↑
|
1962年 | 8 |
14.29% ↑
|
1961年 | 7 | - |
フランス領ポリネシアの天然蜂蜜の生産量データを振り返ると、1960年代から1980年代前半までは10トン未満の比較的小規模な生産が続いていました。この初期段階では、主に自然環境への依存度が高く、生産の変動幅も大きいのが特徴でした。特に1966年には3トンまで落ち込む一方、1980年代中期に入ると生産量が急激に増加しています。1985年の23トン、1987年の39トン、そして1989年の55トンと拡大を続けた背景には、養蜂が徐々に商業的な活動として認知されるようになり、養蜂技術が発展したことが関連していると考えられます。
2000年代に入ると、環境の安定化や投資の増加により、蜂蜜の生産量はさらに飛躍的に成長しています。特に2008年には69トンと前年の50トンから約1.4倍に増え、2010年代にはついに生産量が年間100トンを超える新たな段階に到達しました。これは、フランス領ポリネシア独自の生態系と高品質の蜂蜜に対する国際的な需要の高まりが複合的に影響していると考えられます。さらに、地元政府や地域団体が養蜂業を持続可能な形で支援する政策を打ち出したことが大きな要因です。
2020年代に入っても、フランス領ポリネシアの蜂蜜生産量は安定した成長を示しており、年平均120トンを維持しています。ただし、ここ数年間の増加スピードはやや緩やかになっており、2019年以降は125トン前後で横ばい状態です。この安定化の背景には、生態系のプレッシャーや、天候変動、環境汚染、そして密接に関連する地政学的リスクの影響があります。例えば、フランス領ポリネシアは温暖な太平洋地域に位置しており、気候変動によって周辺の生態系が変化するリスクがあります。これらが蜂の生息環境や蜜源植物に影響を与え、生産量に波及的な影響を与える可能性があります。
現在、地域として直面する主な課題のひとつに、生産の安定性と持続可能性の確保があります。具体的には、蜂の健康状態を守るための病害虫管理や、有機蜂蜜認証を受けるための取り組みが挙げられます。また、気候変動への対策として蜜源植物の育成や、災害時にも農業活動を継続できるインフラの整備が重要です。
国際市場に目を向けると、フランス領ポリネシアの蜂蜜は高品質な特産品として高い評価を得ています。これは品質基準を厳格に守りつつ、地元の経済を強化する機会でもあります。他の主要な蜂蜜生産国、例えば中国やアメリカと比較すると、中国は大量生産を得意とし、アメリカは有機蜂蜜の規模が大きいなど、それぞれ異なる強みを持っています。フランス領ポリネシアはこれら既存の主要市場とは異なる、高付加価値の「特殊な蜂蜜市場」をターゲットとすることが有望です。
最終的には、地域社会の文化や環境を守りながら、持続可能な蜂蜜生産に向けた具体的な対策が求められます。例えば、養蜂家への技術研修の充実やエコツーリズムとの連携、地域間の国際協力を強化することが効果的です。また、国際金融機関や環境団体の支援を得て、気候変動や疫病への対応能力を向上させることも必要です。
フランス領ポリネシアの天然蜂蜜生産量は、過去数十年で見事に成長してきました。この豊かな自然を基盤とした成長は、特産品としての可能性を広げ、多くの収益を地域にもたらします。その一方で、環境や気候の変動といった課題はますます高まるため、長期的な視点でバランスを図りながら、持続可能な養蜂を目指すことが必須です。