国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、フランス領ポリネシアにおけるココナッツの生産量は、1960年代のピーク時には年間約194,300トン(1962年)に達していましたが、それ以降は全体的な減少傾向を示しています。1980年代以降は概ね10万トン未満に落ち込み、直近の2023年時点では82,933トンに留まっています。この推移データは、地域の農業生産状況や経済的背景の変化を反映しており、持続可能な生産と地元経済への影響について改めて考える必要性を示しています。
フランス領ポリネシアのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 82,933 |
-1.14% ↓
|
2022年 | 83,893 |
-0.13% ↓
|
2021年 | 84,000 | - |
2020年 | 84,000 | - |
2019年 | 84,000 | - |
2018年 | 84,000 |
1.2% ↑
|
2017年 | 83,000 | - |
2016年 | 83,000 |
5.06% ↑
|
2015年 | 79,000 |
-4.82% ↓
|
2014年 | 83,000 |
1.22% ↑
|
2013年 | 82,000 |
-2.19% ↓
|
2012年 | 83,840 |
-0.19% ↓
|
2011年 | 84,000 |
3.02% ↑
|
2010年 | 81,540 |
5.42% ↑
|
2009年 | 77,350 |
-13.38% ↓
|
2008年 | 89,300 |
-5.6% ↓
|
2007年 | 94,600 | - |
2006年 | 94,600 |
5.11% ↑
|
2005年 | 90,000 |
12.5% ↑
|
2004年 | 80,000 |
-5.88% ↓
|
2003年 | 85,000 |
-2.3% ↓
|
2002年 | 87,000 |
14.93% ↑
|
2001年 | 75,700 |
-6.2% ↓
|
2000年 | 80,700 |
17.81% ↑
|
1999年 | 68,500 |
8.73% ↑
|
1998年 | 63,000 |
-27.59% ↓
|
1997年 | 87,000 |
-1.89% ↓
|
1996年 | 88,679 |
-4.65% ↓
|
1995年 | 93,000 |
8.14% ↑
|
1994年 | 86,000 |
1.18% ↑
|
1993年 | 85,000 |
-1.16% ↓
|
1992年 | 86,000 |
1.18% ↑
|
1991年 | 85,000 |
-19.05% ↓
|
1990年 | 105,000 |
16.67% ↑
|
1989年 | 90,000 |
-3.23% ↓
|
1988年 | 93,000 |
-19.13% ↓
|
1987年 | 115,000 |
4.55% ↑
|
1986年 | 110,000 |
0.92% ↑
|
1985年 | 109,000 |
60.29% ↑
|
1984年 | 68,000 |
-25.27% ↓
|
1983年 | 91,000 |
-37.24% ↓
|
1982年 | 145,000 |
16% ↑
|
1981年 | 125,000 |
-16.67% ↓
|
1980年 | 150,000 |
33.93% ↑
|
1979年 | 112,000 |
8.74% ↑
|
1978年 | 103,000 |
-8.85% ↓
|
1977年 | 113,000 |
-20.98% ↓
|
1976年 | 143,000 |
-11.73% ↓
|
1975年 | 162,000 |
62% ↑
|
1974年 | 100,000 |
-11.5% ↓
|
1973年 | 113,000 |
-22.07% ↓
|
1972年 | 145,000 |
-11.59% ↓
|
1971年 | 164,000 |
-7.19% ↓
|
1970年 | 176,700 |
-8.16% ↓
|
1969年 | 192,400 |
38.32% ↑
|
1968年 | 139,100 |
-4.6% ↓
|
1967年 | 145,800 |
-9.16% ↓
|
1966年 | 160,500 |
-0.43% ↓
|
1965年 | 161,200 |
-11.86% ↓
|
1964年 | 182,900 |
-3.02% ↓
|
1963年 | 188,600 |
-2.93% ↓
|
1962年 | 194,300 |
15.65% ↑
|
1961年 | 168,000 | - |
フランス領ポリネシアのココナッツ生産量のデータを見てみると、1960年代にピークを迎え、それ以降一貫して下降傾向をたどっています。1962年には194,300トンという歴史的な最高値を記録しましたが、1970年代には15万トン台に、1980年代以降はそれ以下に減少しています。2023年には82,933トンとなり、60年前の半分以下となっています。この減少傾向は、環境、経済、社会的な要因など、複合的な影響を伴っています。
ココナッツは、フランス領ポリネシアにおいて伝統的に重要な農産物であり、地元の生活や文化に深く根付いています。加工品や輸出用原材料としても活用されてきました。しかしながら、生産量の減少は気候変動、土壌の劣化、都市部への人口移動、産業全体の競争力低下といった多様な要因が絡んでいると考えられます。特に南太平洋地域では、台風や潮位上昇による畑地の被害も大きく、自然災害が農業生産を直撃してきました。また、人口減少や若年層の都市部流出により、農業従事者の高齢化や慢性的な労働力不足も顕著になっています。
一方で、生産量が減少した背景には、国際市場における需要動向や産業競争力の低下も関連しています。他国と比較しても、例えばフィリピンやインドネシアは近年においてもココナッツ生産で世界の主要輸出国として存在感を示しており、これらの国々の生産効率や規模と競争するのは容易ではありません。一方で、生産量が安定している他の南太平洋諸島があることを考えると、地元産業のマネジメントや技術導入に改善の余地がある可能性もあります。
将来的な課題として考えられるのは、持続可能な農業の導入や地域経済の多様化を進めつつ、気候変動の影響に適応していくための取り組みです。具体的な対策として、第一に気候に強いココナッツ品種の研究開発・導入が挙げられます。更に、農業従事者の若返りを図るためには、地域での農業教育プログラムや技術導入の促進、経済的インセンティブの提供が必要です。また、加工品産業の振興といった付加価値の高い製品の生産も、直接的な収益の向上と雇用創出に繋がるでしょう。
地政学的な観点では、フランス領ポリネシアは南太平洋地域での戦略的な位置付けを考えると、国際協力に基づく農業支援体制が重要です。オーストラリアやニュージーランドといった近隣諸国、およびフランスを含むEU各国との連携を強化することで、農業技術の共有や資源配分の効率化が期待されます。
最終的に、この推移データが示している現状は、フランス領ポリネシアがその地理的・文化的な特性を活かしつつ、地域全体の課題に適応するための挑戦であると言えます。長期的には、新しい農業技術や労働力確保策、国際市場への適応を進めることで、この伝統的な農業産物であるココナッツの価値を最大限に引き出すことが可能です。この課題を乗り越えるためには、地域に根付いた持続可能性を基盤とした包括的な政策が求められます。