Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に発表した最新データによると、フランス領ポリネシアの牛飼養数は1961年の13,147頭から2022年の7,543頭まで減少傾向をたどりました。ただし、近年はほぼ安定した状態にあります。特に1960年代から1970年代にかけて顕著な減少が見られ、その後はゆるやかな上下動を経て、2010年代後半以降には大きな変動は見られなくなっています。
フランス領ポリネシアの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 7,543 |
2021年 | 7,542 |
2020年 | 7,541 |
2019年 | 7,528 |
2018年 | 7,593 |
2017年 | 7,525 |
2016年 | 7,384 |
2015年 | 7,305 |
2014年 | 7,300 |
2013年 | 7,400 |
2012年 | 7,400 |
2011年 | 7,300 |
2010年 | 7,300 |
2009年 | 7,300 |
2008年 | 7,200 |
2007年 | 7,200 |
2006年 | 7,200 |
2005年 | 7,000 |
2004年 | 9,300 |
2003年 | 8,300 |
2002年 | 6,300 |
2001年 | 8,500 |
2000年 | 11,000 |
1999年 | 9,000 |
1998年 | 9,200 |
1997年 | 7,600 |
1996年 | 7,200 |
1995年 | 7,000 |
1994年 | 7,300 |
1993年 | 7,500 |
1992年 | 7,000 |
1991年 | 7,000 |
1990年 | 7,000 |
1989年 | 8,500 |
1988年 | 8,200 |
1987年 | 8,200 |
1986年 | 9,907 |
1985年 | 7,300 |
1984年 | 7,400 |
1983年 | 6,300 |
1982年 | 7,600 |
1981年 | 9,000 |
1980年 | 8,000 |
1979年 | 7,000 |
1978年 | 6,500 |
1977年 | 6,500 |
1976年 | 6,300 |
1975年 | 6,200 |
1974年 | 6,000 |
1973年 | 7,000 |
1972年 | 8,000 |
1971年 | 9,000 |
1970年 | 9,800 |
1969年 | 10,000 |
1968年 | 10,604 |
1967年 | 12,000 |
1966年 | 12,000 |
1965年 | 12,000 |
1964年 | 12,000 |
1963年 | 12,400 |
1962年 | 12,700 |
1961年 | 13,147 |
フランス領ポリネシアの牛飼養数の推移を分析すると、大きく3つの時期に分類できます。1960年代初頭から1970年代中盤までは顕著な減少が見られます。例えば、1961年には13,147頭でしたが、1975年には6,200頭と半数近くにまで減少しました。これは、農業の機械化や、地域の地政学的要因により伝統的な畜産業が衰退した可能性を示しています。また、当時のインフラ整備の不足や経済の転換が影響しているとも考えられます。
1970年代後半から1990年代にかけては、飼養数は大きな変動を伴いながら相対的に安定しました。1986年には一時的に9,907頭まで増加しましたが、その後は再び落ち込みが見られました。この時期の変動は、おそらく地域内の需要変化や、輸入牛肉の台頭、それに伴う競争の影響を反映しています。特にフランスからの輸入品が多かったことが、現地の畜産業に影響を及ぼした可能性があります。
そして、2000年以降には、飼養数は徐々に安定しました。2022年時点では7,543頭となっており、ここ10年ほどはほぼ停滞していることが分かります。この安定は、地域の経済成長が比較的停滞していること、国内での牛肉需要が低水準で推移していること、そして他の畜産物や水産物が地域の食文化において重要な位置を占めていることによると考えられます。また、土地が限られており牧草地が拡大できない地理的な事情も重要な制約要因です。
フランス領ポリネシアの牛飼養数の推移からは、国家および地域の経済と農業政策が飼養数に密接に関連していることが理解できます。特に、農業政策の強化や、牛飼育をより持続可能な形にするための環境調整が求められています。これには、例えば、土壌改良技術の導入や飼料の効率的な活用、生態系に負荷をかけない持続可能な牧草の育成が含まれるでしょう。
また、環境保護の視点からは、牛飼養による温室効果ガスの排出量を抑える施策が必要です。フランス領ポリネシアのような島嶼(とうしょ)の地域では、気候変動の影響が顕著に現れるため、畜産による炭素フットプリント(企業や個人の活動が地球に及ぼす温室効果ガスの合計のこと)の最小化が重要です。これは、再生可能エネルギーの利用や飼料の改良、新しい技術の導入によって達成できる可能性があります。
さらに経済的視点からは、飼育頭数は少ないものの、より高品質なブランド牛として差別化を図ることが考えられます。たとえば、地元特有の飼育法や牧草を活用して付加価値を高めることで、競争力を向上させることが期待されます。
今後の課題としては、以下の3点が挙げられます。まず、畜産農家への支援を拡充し、持続可能な農業システムを構築する必要があります。次に、地域内での自給率を高めつつ、輸入牛肉への過度な依存を減少させる施策が求められます。そして、地元の畜産業を再活性化させるために、観光業との連携など新たなビジネスモデルを検討すべきです。
以上を実現するためには、国際機関や環太平洋地域内での協力体制強化も不可欠です。フランス領ポリネシアの地理的特性や地政学的条件を踏まえた戦略的な農業政策の策定が必要となるでしょう。このような取り組みにより、食料安全保障や地元文化の保護が達成されるとともに、長期的な経済的・環境的持続可能性を確保する道が開けると考えられます。