ザンビアの牛乳生産量推移（1961年～2023年）

国際連合食糧農業機関（FAO）が最新のデータとして2023年に発表した情報によると、ザンビアの牛乳生産量はここ数十年で顕著な伸びを記録しています。1961年には39,000トンにとどまっていましたが、2022年には514,308トンに達し、およそ13倍の増加となっています。特に1991年の372,782トンへの急増以降、変動を繰り返しながらも全体として生産量は着実に拡大しています。2023年には504,324トンと前年度を若干下回ったものの、依然として高水準を維持しています。一方で、生産量の急激な変動や近年の減少傾向は、基盤の課題を示唆しています。

ザンビアの牛乳生産量は数十年間にわたり、持続的な成長を見せています。1961年から1990年にかけての生産量は年平均で約1,000トンずつ増加しており、安定的な伸びが見られました。しかし、1991年に372,782トンと生産量が急増した背景には、農業技術の進展や新たな政策の導入が関連していると考えられます。この年を境に生産量は急激に増加し、1990年代を通じて30～40万トン台で推移しました。これによりザンビアは地域的な乳製品供給の一翼を担う国としての位置づけを確立しつつあります。

2000年以降は、年々の生産量の波が大きくなった印象を受けます。製造基盤の脆弱性や経済状況、エネルギー供給問題など、農業や酪農に影響を及ぼす要因が変動要因となっている可能性があります。例えば、2015年の382,500トンから2018年の429,024トンへの上昇は、農村地域での牛乳生産の効率向上と天候条件の好転によるものと考えられています。しかし2015年と2016年の減少、また2022年から2023年に513,308トンから504,324トンへのわずかな減少は、市場の競争や自然災害の影響を示唆しています。

一方で、ザンビアはここ数年で家畜経済を支えるインフラ拡充や国際市場への輸出促進に力を入れています。また、多くの家族経営の養牛場が存在し、国内の乳製品需要を支えています。しかし、乾季の水や飼料の不足、新型コロナの直接的な影響、そして地政学的リスクにより物流が混乱したことが生産量減少に拍車をかけた局面も見られました。

他国との比較において、例えばアメリカの牛乳生産量は約1億トン（2020年）に達しており、ザンビアとは大規模さにおいて大きな差があります。しかし、ザンビアは東南アフリカ内での中規模生産国としてのポジションを固めつつあります。さらに中国やインドといった新興経済圏では、国内消費増加に伴い酪農業の成長が著しい一方で、ザンビアは輸出を組み込んだ成長戦略が求められる段階にあるといえます。

ザンビアが直面している主な課題として、農業インフラの整備不足、自然災害による農地の影響、そして乳製品の需要変動が挙げられます。これらの課題を克服するためには、まず灌漑設備やコールドチェーン（冷蔵流通システム）の整備が必要です。また、養牛において効率的な繁殖・育成計画を進めるため、専門知識を持つ技術者の育成と普及が急務です。さらに、地域間協力の強化を通じて、特定市場のみに依存しない需要供給システムの構築が肝心です。

今後、ザンビアが牛乳生産量を持続的に増加させるためには、国際機関や隣国との協力を強化し、技術供与や資金援助を活用した政策を展開する必要があります。また、昨今の気候変動への対応として、灌漑技術や耐乾性を高めた牧草の導入、ならびに自然災害の予防措置を講じることが重要です。これに加え、市場開拓を目的とした広域的な輸出入体制の改善を進めれば、地域経済の活性化とともに持続可能な成長が期待できるでしょう。