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セントビンセントおよびグレナディーン諸島の牛飼養数推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによれば、セントビンセントおよびグレナディーン諸島の牛飼養数は1961年の6,800頭をピークに増減を繰り返しながら、近年は急激な減少傾向を見せています。2022年には2,261頭となり、1961年の約3分の1以下にまで減少しました。この長期間にわたる減少傾向は、農村人口の減少、畜産業者の減少、輸入肉との競争などの複合的な要因によるものと考えられます。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 2,170
-4.02% ↓
2022年 2,261
-6.18% ↓
2021年 2,410
-6.19% ↓
2020年 2,569
-7.19% ↓
2019年 2,768
-0.75% ↓
2018年 2,789
-7.68% ↓
2017年 3,021
-7.5% ↓
2016年 3,266
-7.45% ↓
2015年 3,529
-7.38% ↓
2014年 3,810
-8.79% ↓
2013年 4,177
-12.98% ↓
2012年 4,800
-5.88% ↓
2011年 5,100
-1.92% ↓
2010年 5,200 -
2009年 5,200
1.96% ↑
2008年 5,100 -
2007年 5,100
2% ↑
2006年 5,000 -
2005年 5,000 -
2004年 5,000 -
2003年 5,000
-9.09% ↓
2002年 5,500
-5.17% ↓
2001年 5,800
-3.33% ↓
2000年 6,000
-3.23% ↓
1999年 6,200 -
1998年 6,200 -
1997年 6,200 -
1996年 6,200 -
1995年 6,200 -
1994年 6,200 -
1993年 6,200
1.64% ↑
1992年 6,100
1.67% ↑
1991年 6,000
-4.76% ↓
1990年 6,300
-4.55% ↓
1989年 6,600
-4.35% ↓
1988年 6,900
15% ↑
1987年 6,000
-13.04% ↓
1986年 6,900
-8% ↓
1985年 7,500
-8.54% ↓
1984年 8,200
2.5% ↑
1983年 8,000
3.9% ↑
1982年 7,700
1.32% ↑
1981年 7,600
1.33% ↑
1980年 7,500
1.35% ↑
1979年 7,400
1.37% ↑
1978年 7,300
2.82% ↑
1977年 7,100 -
1976年 7,100
1.43% ↑
1975年 7,000 -
1974年 7,000 -
1973年 7,000 -
1972年 7,000 -
1971年 7,000
-2.78% ↓
1970年 7,200
5.11% ↑
1969年 6,850
-2.14% ↓
1968年 7,000
-6.67% ↓
1967年 7,500
-6.25% ↓
1966年 8,000
15.94% ↑
1965年 6,900
1.47% ↑
1964年 6,800 -
1963年 6,800
-2.86% ↓
1962年 7,000
2.94% ↑
1961年 6,800 -

セントビンセントおよびグレナディーン諸島の牛飼養数データは、同国の農業や食糧供給の現状を考察する上で重要な指標となります。データを振り返ると1961年から1984年にかけて飼養数は6,800頭から8,200頭とゆるやかに増加しました。この時期の増加は、地元の農業活動の強化と国内需要の増加に支えられたものと推察されます。ただし、その後は1985年を境に減少傾向が確認され、1990年代以降は特に顕著な悪化が見られます。

2000年以降にはさらに急速な減少が進み、2022年の2,261頭という水準は、過去60年間で最低値となっています。この減少にはいくつかの背景的要因が関係していると考えられます。一つ目は、食生活の変化に伴い牛肉の国内需要が相対的に低下している点です。観光業など他の主要産業が発展するにつれ、農畜産業への関心が相対的に縮小していることも影響していると考えられます。二つ目は、輸入品との競争が激化していることです。同国では輸入牛肉や他の安価な蛋白源が増え、地元生産者にとって収益性を保つことが困難となっています。また、土地資源の制約やインフラの未発達も、効率的な畜産経営を妨げる要因となっている可能性があります。

地政学的観点から見ると、この島嶼国家は限られた農地面積と気候的な脆弱性を抱えています。気候変動に伴う自然災害の多発は、牧草地の減少や家畜飼養環境の劣化を引き起こしている点で無視できません。加えて、島嶼国家特有の物流コストの高さは、餌料や機材の輸入コストを押し上げ、地元の畜産業者にとって重い負担となっています。

同国の牛飼養数が減少を続けることは、食糧自給率の低下や畜産業を中心とする農村経済にとって深刻な課題をもたらします。この状況に対処するためには、いくつかの施策が考えられます。第一に、畜産業の収益性を向上させるための政策的支援が必要です。例えば、政府や国際機関による技術支援や補助金制度の導入は、生産者の負担を軽減する助けとなるでしょう。第二に、地元産品のブランド化を進め、輸入品に対抗する競争力を高めることも有効です。地元の有機牛肉などの差別化された製品をプロモートすることで、国内外からの需要を呼び込むことが期待できます。

さらに、広域的な視点では、地域間協力を通じて資源の共有や市場の統合を進めることも提案されます。カリブ共同体(CARICOM)との連携強化や、持続可能な食糧生産を目指す国際的な枠組みへの参加が、その具体策となり得ます。また、持続可能性に焦点を当て、農業教育プログラムを強化することで、若年層の関心を農畜産業に向けさせることも長期的な効果をもたらすでしょう。

結論として、セントビンセントおよびグレナディーン諸島の牛飼養数の持続的な減少は、地元経済や食糧安全保障に大きな影響を与える恐れがあります。ただし、適切な政策的支援と地域協力の強化、さらには持続可能性を考慮した産業改革によって、現状を改善し、この重要な産業を再興する道筋はまだ残されています。