国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、セントビンセントおよびグレナディーン諸島のプランテン・調理用バナナの生産量は、1971年の39トンから2019年の5,166トンへと大幅に増加し、2023年には3,056トンとなりました。このデータを見ると、生産量は全体的に長期的な増加傾向を示していますが、一部には急激な変動が確認され、特に2020年以降、生産量が減少する傾向が目立っています。地政学的背景や気候変動の影響が考えられる中、この動向にはさらなる分析が必要です。
セントビンセントおよびグレナディーン諸島のプランテン・調理用バナナ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 3,056 |
-37.69% ↓
|
2022年 | 4,905 |
13.29% ↑
|
2021年 | 4,329 |
-4.47% ↓
|
2020年 | 4,532 |
-12.27% ↓
|
2019年 | 5,166 |
5% ↑
|
2018年 | 4,920 |
10.34% ↑
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2017年 | 4,459 |
15.19% ↑
|
2016年 | 3,871 |
16.46% ↑
|
2015年 | 3,324 |
5.32% ↑
|
2014年 | 3,156 |
34.01% ↑
|
2013年 | 2,355 |
9.03% ↑
|
2012年 | 2,160 |
25.36% ↑
|
2011年 | 1,723 |
-34.44% ↓
|
2010年 | 2,628 |
9.5% ↑
|
2009年 | 2,400 |
2.13% ↑
|
2008年 | 2,350 |
2.17% ↑
|
2007年 | 2,300 |
-4.17% ↓
|
2006年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
2005年 | 2,300 |
4.55% ↑
|
2004年 | 2,200 |
-35.29% ↓
|
2003年 | 3,400 |
-2.86% ↓
|
2002年 | 3,500 |
52.17% ↑
|
2001年 | 2,300 |
12.3% ↑
|
2000年 | 2,048 |
19.84% ↑
|
1999年 | 1,709 |
20.69% ↑
|
1998年 | 1,416 |
-17.24% ↓
|
1997年 | 1,711 |
2.39% ↑
|
1996年 | 1,671 |
-15.01% ↓
|
1995年 | 1,966 |
22.65% ↑
|
1994年 | 1,603 |
-4.53% ↓
|
1993年 | 1,679 |
25.39% ↑
|
1992年 | 1,339 |
-7.97% ↓
|
1991年 | 1,455 |
8.66% ↑
|
1990年 | 1,339 |
-32.71% ↓
|
1989年 | 1,990 |
-35.6% ↓
|
1988年 | 3,090 |
11.31% ↑
|
1987年 | 2,776 |
-39.9% ↓
|
1986年 | 4,619 |
9.4% ↑
|
1985年 | 4,222 |
20.63% ↑
|
1984年 | 3,500 |
100.8% ↑
|
1983年 | 1,743 |
-12.32% ↓
|
1982年 | 1,988 |
-9.64% ↓
|
1981年 | 2,200 |
50.17% ↑
|
1980年 | 1,465 |
34.03% ↑
|
1979年 | 1,093 |
31.69% ↑
|
1978年 | 830 |
97.62% ↑
|
1977年 | 420 |
60.92% ↑
|
1976年 | 261 |
30.5% ↑
|
1975年 | 200 |
33.33% ↑
|
1974年 | 150 |
50% ↑
|
1973年 | 100 |
75.44% ↑
|
1972年 | 57 |
46.15% ↑
|
1971年 | 39 | - |
セントビンセントおよびグレナディーン諸島は、カリブ海に位置する小さな島国であり、農業は地域経済において重要な役割を果たしています。その中でも、プランテン・調理用バナナは主食および輸出作物としての意義が大きく、この作物の生産量推移は、同国の農業の現状や課題を浮き彫りにします。
1971年から2023年にわたるデータでは、生産量は全体として右肩上がりで増加しています。特に1980年代初頭から1985年にかけての急激な増加は注目に値します。この背景には、農業技術の向上やプランテンに特化した農地開発が貢献した可能性があります。そして、2020年までの長期的な上昇傾向が示すように、この地域はこの作物の生産地としてのポテンシャルを拡大してきました。
一方で、特定の年における生産量の急減や急増も見られます。例えば、1987年や1989年にはそれぞれ約30~50%の生産量低下が確認されており、これらの年における現象はハリケーンやその他気候災害の影響である可能性が高いです。同国は地理的にハリケーンや豪雨の被害に直面しやすく、このことが農業生産に深刻な影響を与えています。
さらに、2020年以降のデータでは、生産量が再び減少傾向を示しています。この減少には、気候変動に伴う長期的な天候不安定化、土壌の劣化、そして新型コロナウイルス感染症の影響が複合的に絡んでいる可能性があります。パンデミックは労働力不足を招き、国際協力や物流の停滞により、肥料や農機具の供給に支障が生じたことが報告されています。
こうした状況を踏まえ、セントビンセントおよびグレナディーン諸島が今後持続的なプランテン・調理用バナナ生産を維持・向上させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、気候変動に対応した農業技術の普及と災害対策強化が重要です。耐候性のあるバナナ品種の導入や、土壌の保全を目的としたスマート農業技術の活用が考えられます。また、輸出環境を整えるための物流インフラの強化や、国際的な農業プロジェクトへの参加も鍵となるでしょう。
加えて、地域の地政学的位置を活用することも可能性があります。カリブ海地域各国と連携して農業技術の共有や共同プロジェクトを推進することで、リスクの分散と競争力の向上が期待できます。さらに、新型コロナウイルスのような感染症が引き続き農業に及ぼす影響に備え、労働力の柔軟な確保を支える仕組みづくりも必要です。
結論として、プランテン生産量の変動は、セントビンセントおよびグレナディーン諸島が気候変動や地域特有の課題に直面していることを浮き彫りにしています。この課題に取り組むためには、地域や国際社会との協力を通じた持続可能な農業の構築が必要不可欠です。持続可能な農業を実現するための政策や支援体制が整えば、この地域のプランテン生産は今後も安定した成長を遂げることが期待されます。