セントビンセントおよびグレナディーン諸島のオレンジ生産量は、1961年に200トンだったのが1970年代にやや増加した後、1980年代から急激な増産を見せました。1990年代以降、年間生産量は900トンを超え、2000年代には1,600トンを超えるピークに達しました。しかし、その後の10年間以上にわたり、生産量は減少傾向が続き、2020年以降は600~700トン台になっています。
セントビンセントおよびグレナディーン諸島のオレンジ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 709 |
2021年 | 615 |
2020年 | 670 |
2019年 | 1,045 |
2018年 | 1,001 |
2017年 | 901 |
2016年 | 875 |
2015年 | 953 |
2014年 | 1,097 |
2013年 | 1,239 |
2012年 | 1,325 |
2011年 | 1,350 |
2010年 | 950 |
2009年 | 1,800 |
2008年 | 1,750 |
2007年 | 1,700 |
2006年 | 1,650 |
2005年 | 1,607 |
2004年 | 1,600 |
2003年 | 1,523 |
2002年 | 1,400 |
2001年 | 1,200 |
2000年 | 800 |
1999年 | 830 |
1998年 | 937 |
1997年 | 954 |
1996年 | 973 |
1995年 | 960 |
1994年 | 994 |
1993年 | 981 |
1992年 | 967 |
1991年 | 950 |
1990年 | 900 |
1989年 | 700 |
1988年 | 500 |
1987年 | 349 |
1986年 | 349 |
1985年 | 263 |
1984年 | 178 |
1983年 | 200 |
1982年 | 230 |
1981年 | 250 |
1980年 | 270 |
1979年 | 260 |
1978年 | 260 |
1977年 | 250 |
1976年 | 250 |
1975年 | 250 |
1974年 | 260 |
1973年 | 260 |
1972年 | 250 |
1971年 | 230 |
1970年 | 220 |
1969年 | 220 |
1968年 | 210 |
1967年 | 210 |
1966年 | 210 |
1965年 | 200 |
1964年 | 200 |
1963年 | 200 |
1962年 | 200 |
1961年 | 200 |
国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データが示すところによると、セントビンセントおよびグレナディーン諸島のオレンジ生産量は長期的に見ると大きな変動を繰り返してきました。1960年代の生産量は200トン前後で安定しており、1970年代には徐々に増加し始めましたが、この時期ではまだ大きな変化は見られませんでした。1980年代後半から1990年代初頭にかけて、急激に生産量が伸び、1988年には500トン、1993年には981トン、そして1995年にはついに900トンを超える水準に達しました。経済面および農業政策の変化がこうした増産に寄与した可能性があります。
2000年代にはさらなる成長が見られ、2002年の1,400トンから2009年の1,800トンまで生産量が伸びました。この時期は気候条件が良好であったことや、地域の農業技術の向上が主要要因と考えられます。しかし、2010年代に入るとこれまでの成長とは逆に減少傾向が顕著に見られ始めます。例えば、2010年には950トンに大きく落ち込みます。一時的に1,300トン台に回復する年もありましたが、長期的には再び減少に転じ、2022年時点の生産量は709トンに留まっています。
この生産量の不安定性の背後には、さまざまな要因が関係しているとみられます。例えば、気候変動が農作物の生産に影響を与える可能性が高まっていることや、同諸島の地政学的脆弱性が農業労働力の確保と管理を難しくしている点が挙げられます。また、近年の新型コロナウイルスの影響により、農業のサプライチェーンや輸出ルートが部分的に遮断されたことも、生産量の一時的な減少に寄与したと推測されます。
更に、自然災害の影響も無視できません。同諸島はハリケーンや暴風雨の影響を受けやすく、これがオレンジ生産地に対して深刻な損害を及ぼしている可能性があります。また、市場競争の激化やインフラの未整備による生産コストの上昇も課題です。例えば、世界最大のオレンジ生産国であるブラジルやアメリカなどの強力な競争国に比べて、セントビンセントおよびグレナディーン諸島の生産規模が小さく、価格競争力が劣ると考えられます。
このような現状を打開するための提案は以下となります。第一に、気候変動への適応力を高めるための対策として、オレンジ栽培における耐候性品種の導入を進めることが重要です。次に、ハリケーンなどの自然災害の影響を緩和するため、農業用インフラの強化や災害保険の普及が必要です。さらに、サプライチェーン全体を改善し、収穫後の製品ロスを削減する努力も欠かせません。
また、輸出マーケットの多様化と利益向上のため、国内加工施設を整備してオレンジジュースの生産やその他派生商品への展開を図ることが考えられます。他国の成功例として、日本や韓国が農産物ブランドの価値を高め、輸出競争力を強化している事例が参考になるでしょう。
結論として、セントビンセントおよびグレナディーン諸島のオレンジ生産量は、過去には大きな成長を遂げる一方で、近年の地政学的リスクや気候変動による課題を抱え、その生産は減少傾向にあります。しかし、地域特有の条件に適応した農業方針を模索することで、持続可能な農業の発展が期待されます。国際機関や周辺諸国との協力を通じてこれらの課題を共有し、対策を講じていくべきです。