Skip to main content

セントビンセントおよびグレナディーン諸島のバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月までの最新データによると、セントビンセントおよびグレナディーン諸島のバナナ生産量は、過去60年間で波動的な上下を見せ、そのピークは1992年の83,900トンでした。その後、1990年代半ばから減少傾向を示し、2000年代後半には生産量が安定化しました。そして2020年代に入ってからは、おおよそ58,000~59,000トン程度で推移しています。一方で、経済的、地政学的、自然災害といった多様な要因がこの地域のバナナ生産に大きな影響を与えていることも観察されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 58,700
-1.15% ↓
2022年 59,381
0.8% ↑
2021年 58,911
0.8% ↑
2020年 58,441
1.21% ↑
2019年 57,742
-0.47% ↓
2018年 58,016
-0.4% ↓
2017年 58,251
-0.03% ↓
2016年 58,269
-3.41% ↓
2015年 60,325
-2.97% ↓
2014年 62,169
8.1% ↑
2013年 57,512
-3.65% ↓
2012年 59,688
0.64% ↑
2011年 59,309
7.5% ↑
2010年 55,170
4.09% ↑
2009年 53,000
1.92% ↑
2008年 52,000
1.96% ↑
2007年 51,000
2% ↑
2006年 50,000 -
2005年 50,000
11.11% ↑
2004年 45,000
-10% ↓
2003年 50,000
4.17% ↑
2002年 48,000
2.13% ↑
2001年 47,000
2.17% ↑
2000年 46,000
7.82% ↑
1999年 42,662
-1.39% ↓
1998年 43,264
21.89% ↑
1997年 35,494
-32.72% ↓
1996年 52,757
-10.58% ↓
1995年 59,000
59.36% ↑
1994年 37,023
-45.27% ↓
1993年 67,652
-19.37% ↓
1992年 83,900
29.52% ↑
1991年 64,779
-21.69% ↓
1990年 82,725
23.93% ↑
1989年 66,752
2.87% ↑
1988年 64,887
73.16% ↑
1987年 37,472
-6.17% ↓
1986年 39,936
-4.74% ↓
1985年 41,922
24.69% ↑
1984年 33,620
-3.73% ↓
1983年 34,921
9.99% ↑
1982年 31,750
-4.43% ↓
1981年 33,220
14.17% ↑
1980年 29,096
1.77% ↑
1979年 28,590
-12.38% ↓
1978年 32,630
13.77% ↑
1977年 28,680
-8.72% ↓
1976年 31,420
61.32% ↑
1975年 19,477
-17.15% ↓
1974年 23,510
-18.83% ↓
1973年 28,964
-0.3% ↓
1972年 29,050
-11.18% ↓
1971年 32,707
6.54% ↑
1970年 30,700
-7.78% ↓
1969年 33,290
7.04% ↑
1968年 31,100
14.13% ↑
1967年 27,250
-10.51% ↓
1966年 30,450
-9.91% ↓
1965年 33,800
2.11% ↑
1964年 33,100
-0.54% ↓
1963年 33,280
15.56% ↑
1962年 28,800
4.92% ↑
1961年 27,450 -

セントビンセントおよびグレナディーン諸島は、カリブ海に位置する小規模な島嶼国家で、長らく農業を経済の中心とする国でした。その中でもバナナは、地域の主要輸出作物として非常に重要な役割を果たしてきました。しかし、過去のデータを見ると、生産量は一定して増加するのではなく、政策的背景、自然災害、世界的市場変動など多様な影響を受けながら複雑に変動してきたことが分かります。

1988年から1992年の間、バナナ生産量は著しい増加を示し、最大の83,900トンを記録しました。この増加背景には、当時の欧州諸国がカリブ諸国の農産物を優遇する政策(リョプロ政策)を実施していたことが影響していることが考えられます。これにより、同地域のバナナ輸出産業は一時的に活況を呈しました。しかしその後、リョプロ政策の変更や、世界市場の自由化政策により、バナナの優遇措置は段階的に撤廃されました。これが、1995年から2000年にかけての生産量の減少に直接的な影響を与えたとされています。

さらに、カリブ海地域は毎年台風の影響を受けやすく、特にバナナのような農作物は強風や水害に非常に脆弱です。例えば、1990年代後半から2000年代にかけてこの地域を襲った複数の自然災害がバナナ農家の持続可能性に大きな打撃を与えました。その結果、生産量の回復には長い時間がかかりました。

一方で、2000年代以降低生産期を脱し、ある程度の安定が見られるようになりました。2020年以降では、毎年約58,000~59,000トン前後の生産量を維持しています。この安定的な変化は、現地での農業技術の改善、病害虫対策、ローカル市場でのバナナ消費の推進など、いくつかの取り組みによるものと考えられます。また、気候変動の影響に対応する新たなバナナ品種が導入されたことも、一定の結果をもたらしていると推測されます。

今後の課題としては、この地域特有のリスクに対する備えが挙げられます。まず、頻発する気候リスクへの更なる耐性強化が必要です。地域ごとにバナナ農地を分散させることや、防風林の設置など、物理的な保護策の強化が有効といえるでしょう。また、病害虫対策として、先進的な農薬管理やオーガニック農業の導入を推進することも重要です。

さらに、国際的な市場動向や貿易政策の変化に柔軟に対応するため、輸出の多角化や、新たな農業協定の形成が必要です。欧州市場に依存した状況は過去の教訓を踏まえると危険であり、新興市場へのアクセスを模索することでリスク分散を図るべきです。また、カリブ諸国間での協力体制を強め、地域全体での農業支援を拡充させることも有望な手立てといえます。

最終的に、データが示すようにセントビンセントおよびグレナディーン諸島はバナナ生産について明確な回復基調を示していますが、今後も持続的発展を遂げるためにはさまざまな課題を解決する必要があります。世界市場における競争力強化とともに、地元農家の経済的安定を達成するための包括的な政策が期待されます。国際的な支援機関や地域間協力の活用を通じて、その基礎を築いていくことが重要です。