国際連合食糧農業機関(FAO)が提供した最新データによると、セントビンセントおよびグレナディーン諸島の羊肉生産量は、1961年のわずか13トンから徐々に増加し、1980年代に最大値を記録しました。その後、比較的安定した推移を見せていますが、2010年代後半以降は減少傾向が続き、2023年には47トンとなりました。特に2020年以降の減少は著しく、近年の状況を示唆しています。
セントビンセントおよびグレナディーン諸島の羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 47 |
0.02% ↑
|
2022年 | 47 |
-2.71% ↓
|
2021年 | 48 |
-2.56% ↓
|
2020年 | 50 |
-3.64% ↓
|
2019年 | 51 |
6.3% ↑
|
2018年 | 48 |
-1.14% ↓
|
2017年 | 49 |
-4.73% ↓
|
2016年 | 51 |
0.31% ↑
|
2015年 | 51 |
-10.34% ↓
|
2014年 | 57 |
-7.48% ↓
|
2013年 | 62 |
3.26% ↑
|
2012年 | 60 | - |
2011年 | 60 | - |
2010年 | 60 | - |
2009年 | 60 |
6.98% ↑
|
2008年 | 56 | - |
2007年 | 56 |
2.38% ↑
|
2006年 | 55 | - |
2005年 | 55 |
1.2% ↑
|
2004年 | 54 | - |
2003年 | 54 |
-5.68% ↓
|
2002年 | 57 | - |
2001年 | 57 |
2.33% ↑
|
2000年 | 56 | - |
1999年 | 56 | - |
1998年 | 56 | - |
1997年 | 56 | - |
1996年 | 56 | - |
1995年 | 56 |
4.88% ↑
|
1994年 | 53 |
3.8% ↑
|
1993年 | 51 | - |
1992年 | 51 | - |
1991年 | 51 |
-9.2% ↓
|
1990年 | 57 |
-2.25% ↓
|
1989年 | 58 | - |
1988年 | 58 |
-1.11% ↓
|
1987年 | 59 |
4.65% ↑
|
1986年 | 56 |
8.86% ↑
|
1985年 | 51 |
14.49% ↑
|
1984年 | 45 |
-13.75% ↓
|
1983年 | 52 |
8.7% ↑
|
1982年 | 48 |
15% ↑
|
1981年 | 42 |
-12.33% ↓
|
1980年 | 47 |
26.74% ↑
|
1979年 | 37 |
3.97% ↑
|
1978年 | 36 |
8.63% ↑
|
1977年 | 33 |
3.24% ↑
|
1976年 | 32 |
147% ↑
|
1975年 | 13 |
-47.37% ↓
|
1974年 | 25 |
26.67% ↑
|
1973年 | 20 | - |
1972年 | 20 | - |
1971年 | 20 |
-6.25% ↓
|
1970年 | 21 | - |
1969年 | 21 |
-3.03% ↓
|
1968年 | 21 |
-2.94% ↓
|
1967年 | 22 |
6.25% ↑
|
1966年 | 21 |
6.67% ↑
|
1965年 | 20 |
7.14% ↑
|
1964年 | 18 |
7.69% ↑
|
1963年 | 17 |
18.18% ↑
|
1962年 | 14 |
10% ↑
|
1961年 | 13 | - |
セントビンセントおよびグレナディーン諸島の羊肉生産量は、過去数十年にわたる推移を振り返ると、幾つかの段階的変化が明らかになります。1960年代には毎年微増を続けていたものの、1970年代前半には一時的な低迷が見られ、1975年には13トンに大幅な減少を記録しました。その後、80年代には大幅な増産が進み、1986年の56トン、1987年の59トンといった高い水準に達しています。1980年代後半から1990年代にかけては、年平均50トン台の水準で横ばいで推移しており、安定的な生産量を維持してきました。この安定性は、生産技術の向上や市場の一貫性が大きく寄与していると考えられます。
2000年代に入っても大きな変化は見られず、小幅な増減を繰り返しながら推移しました。しかし、2010年代後半になると減少が加速する兆候が現れます。2013年には62トンの生産量を記録しましたが、それ以降は下落傾向が続き、最近の2023年では47トンにまで減少しました。この減少は、複数の要因が考えられます。一つには、農業全般が抱える課題として地域特有の自然災害リスクが挙げられます。セントビンセントおよびグレナディーン諸島は火山活動や台風の影響を強く受ける地域であり、特に近年では気候変動による影響も大きく、牧草地の減少や放牧環境の悪化が起こりやすくなっている可能性があります。また、羊肉市場の需要が縮小した場合、需要低迷による生産抑制の可能性も見逃せません。
加えて、世界規模でのトレンドの中では、小規模国家が抱える輸送コストの上昇や、近代的な農業機械の導入困難といった課題も影響を及ぼしている可能性があります。他国との比較では日本、韓国、アメリカなどの飼育大国に比べて、セントビンセントおよびグレナディーン諸島は規模の面で競争力が低い状況です。特に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年以降では、輸出市場へのアクセスや地元市場の消費低迷が負のインパクトを与えたのではないかと推測されます。
今後の課題として、生産効率の向上と市場の多角化が重要になります。具体的には、放牧地の管理や災害対策の強化、そして地域協力による農業インフラの整備が求められます。例えば、耐災害性に優れた品種の導入や、地域経済圏内での農業協力枠組みを通じた持続可能な羊肉生産の仕組み作りです。また、観光業が経済の大部分を占めるこの地域では、観光との連携を強化し、地元産の羊肉を観光客向けの高付加価値商品として活用することで、国内需要を活性化させることも有効です。
さらに、国際機関との連携による技術支援の獲得が重要です。セントビンセントおよびグレナディーン諸島のような小国にとっては、技術移転や資金支援を通じて持続可能な農業システムを構築することが不可欠です。また、他の中小国家と連携し、地域内での資源共有や知識交流による生産性向上を目指すべきです。
結論として、セントビンセントおよびグレナディーン諸島の羊肉生産量は歴史的には安定した時期もありましたが、近年の減少傾向は今後の課題として特に注視する必要があります。生産減少の背景には自然条件、需要低迷、災害リスクなど多岐にわたる要因が存在します。そのため、多方面からの包括的な対策が求められ、国際的な支援の活用も含めた長期的な視点での生産体制の強化が不可欠です。