国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、サントメ・プリンシペの牛乳生産量は1961年の143トンから2023年の553トンへと増加しています。しかし、この推移には大きな変動が見られます。特に1990年代には急激な増加が記録されましたが、2006年以降は生産量が大幅に減少し、直近数年間はおおむね500トン前後で横ばいの傾向を示しています。このデータはサントメ・プリンシペの畜産業の現状と課題を示しており、将来的な対策の検討が欠かせません。
サントメ・プリンシペの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 553 |
4.68% ↑
|
2022年 | 529 |
-0.16% ↓
|
2021年 | 529 |
0.28% ↑
|
2020年 | 528 |
0.38% ↑
|
2019年 | 526 |
-1.14% ↓
|
2018年 | 532 |
-5.18% ↓
|
2017年 | 561 |
2.36% ↑
|
2016年 | 548 |
16.1% ↑
|
2015年 | 472 |
-5.81% ↓
|
2014年 | 501 |
3.64% ↑
|
2013年 | 484 |
6.16% ↑
|
2012年 | 456 |
3.38% ↑
|
2011年 | 441 |
-16.63% ↓
|
2010年 | 529 |
-15.23% ↓
|
2009年 | 624 |
-5.81% ↓
|
2008年 | 662 |
-44.65% ↓
|
2007年 | 1,196 |
43.94% ↑
|
2006年 | 831 |
-29.69% ↓
|
2005年 | 1,182 |
10.5% ↑
|
2004年 | 1,070 |
-8.41% ↓
|
2003年 | 1,168 |
1.21% ↑
|
2002年 | 1,154 |
-1.27% ↓
|
2001年 | 1,169 |
2.55% ↑
|
2000年 | 1,140 |
3.79% ↑
|
1999年 | 1,098 |
1.29% ↑
|
1998年 | 1,084 |
1.3% ↑
|
1997年 | 1,071 |
1.32% ↑
|
1996年 | 1,057 |
1.34% ↑
|
1995年 | 1,043 |
1.36% ↑
|
1994年 | 1,029 |
1.37% ↑
|
1993年 | 1,015 |
1.39% ↑
|
1992年 | 1,001 |
1.41% ↑
|
1991年 | 987 |
717.63% ↑
|
1990年 | 121 |
1.43% ↑
|
1989年 | 119 |
1.45% ↑
|
1988年 | 117 |
1.47% ↑
|
1987年 | 116 |
1.49% ↑
|
1986年 | 114 |
1.52% ↑
|
1985年 | 112 |
3.13% ↑
|
1984年 | 109 |
3.23% ↑
|
1983年 | 105 |
3.33% ↑
|
1982年 | 102 |
3.45% ↑
|
1981年 | 99 |
3.57% ↑
|
1980年 | 95 |
3.7% ↑
|
1979年 | 92 |
3.85% ↑
|
1978年 | 88 |
4% ↑
|
1977年 | 85 |
4.17% ↑
|
1976年 | 82 |
9.09% ↑
|
1975年 | 75 |
-6.38% ↓
|
1974年 | 80 |
-7.84% ↓
|
1973年 | 87 |
8.51% ↑
|
1972年 | 80 |
-18.97% ↓
|
1971年 | 99 |
-4.92% ↓
|
1970年 | 104 |
-1.61% ↓
|
1969年 | 105 |
-6.06% ↓
|
1968年 | 112 | - |
1967年 | 112 |
20% ↑
|
1966年 | 94 |
-8.33% ↓
|
1965年 | 102 |
-14.29% ↓
|
1964年 | 119 |
-9.09% ↓
|
1963年 | 131 |
-8.33% ↓
|
1962年 | 143 | - |
1961年 | 143 | - |
サントメ・プリンシペの牛乳生産量の推移を詳しく見ると、独自のパターンが浮かび上がります。この国では1960年代から1980年代までの生産量は非常に低調で、1990年に至るまで年間100トン前後の水準で推移していました。しかし、1991年の987トン以降、1990年代中盤にかけて急激に数倍もの増加が見られ、2000年には1,140トンに達しました。この急上昇はおそらく、農業技術の改善、政府や国際機関からの支援の増加、または地元需要の拡大が影響していると考えられます。
その後、2000年代後半になると、生産量は再び急減し、2010年代には500トン前後へと減少しました。この減少の背景には、経済的な困難、農業インフラの不十分さ、気候変動による影響が想定されます。特に2008年以降の世界的な経済不況が、輸入飼料や畜産関連資材のコストに影響を与え、生産コストが増加した可能性があります。また、サントメ・プリンシペは熱帯地域に位置し、高温多湿な気候が家畜の健康や飼料作物の生産に影響を与えることも考えられます。
2023年のデータを見ると、生産量は553トンとやや上昇傾向が見られます。しかし、1990年代の水準と比較すると依然として低い状態が続いています。この国の畜産業の特徴として、小規模農家を主体とする生産体制が挙げられます。こうした体制は地域社会の経済を支える一方、生産効率や規模拡大に課題を抱えており、市場の急激な変化に対応する柔軟性が限定的です。
これらの背景を踏まえると、サントメ・プリンシペが今後安定した牛乳生産を維持・拡大するためには、いくつかの要点に注目する必要があります。まず、農業インフラを整備し、近代的な畜産技術を導入することが重要です。適切な家畜の管理手法や高栄養価の飼料の普及、畜産業者の教育・トレーニングなどに注力するべきです。さらに、気候変動への対応として、灌漑システムの導入や耐干ばつ性のある飼料作物の開発が求められるでしょう。
また、地域経済への投資を促進するために、国際機関や近隣国との協力が不可欠です。たとえば、地域間協力の枠組みを利用して、クレジット支援や輸送コストの削減に取り組むことが必要です。同時に、付加価値を高めるためには、牛乳の加工製品(例えばチーズやヨーグルト)の生産と輸出戦略を策定することも有益でしょう。
さらに、地政学的背景を考慮すると、サントメ・プリンシペの地理的位置は、大西洋に面する戦略的な位置にあり、隣国との物流協力や貿易関係の深化に可能性を持っています。これを活用すれば、牛乳を国際市場に供給する新たなルートを構築できるかもしれません。
結論として、過去数十年にわたる牛乳生産量の変動は、サントメ・プリンシペの畜産業の脆弱性と可能性を同時に示しています。この国の将来的な発展には、技術的改善、国際的支援、地域的連携の強化が不可欠です。適切な施策を講じることで、持続可能な生産体制の構築と農村地域の発展を実現できる可能性があります。国際社会もまた、こうした取り組みを支援する役割を果たすべき時期に来ているといえるでしょう。