国際連合食糧農業機関(FAO)によると、サントメ・プリンシペの羊肉生産量は、1961年の6トンを皮切りに長期間にわたり4トン前後の安定した数値を維持していました。しかし、2000年代後半には一時的に増加し7トンに達したものの、2011年以降再び減少傾向に転じ、2023年には3トンに留まる結果となっています。このデータは同国の農業と食料生産の変遷や課題を反映したものと考えられます。
サントメ・プリンシペの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 3 |
-1.17% ↓
|
2022年 | 3 | - |
2021年 | 3 |
-0.29% ↓
|
2020年 | 3 |
-0.29% ↓
|
2019年 | 3 |
15% ↑
|
2018年 | 3 |
50% ↑
|
2017年 | 2 | - |
2016年 | 2 |
-42.2% ↓
|
2015年 | 3 |
-0.29% ↓
|
2014年 | 3 |
73.5% ↑
|
2013年 | 2 | - |
2012年 | 2 | - |
2011年 | 2 |
-69.23% ↓
|
2010年 | 7 | - |
2009年 | 7 | - |
2008年 | 7 |
3.17% ↑
|
2007年 | 6 | - |
2006年 | 6 | - |
2005年 | 6 |
6.78% ↑
|
2004年 | 6 | - |
2003年 | 6 |
3.51% ↑
|
2002年 | 6 |
3.64% ↑
|
2001年 | 6 | - |
2000年 | 6 | - |
1999年 | 6 |
1.85% ↑
|
1998年 | 5 |
1.89% ↑
|
1997年 | 5 |
6% ↑
|
1996年 | 5 |
4.17% ↑
|
1995年 | 5 |
4.35% ↑
|
1994年 | 5 |
4.55% ↑
|
1993年 | 4 |
4.76% ↑
|
1992年 | 4 |
13.51% ↑
|
1991年 | 4 | - |
1990年 | 4 |
1.37% ↑
|
1989年 | 4 | - |
1988年 | 4 | - |
1987年 | 4 | - |
1986年 | 4 | - |
1985年 | 4 | - |
1984年 | 4 | - |
1983年 | 4 |
1.39% ↑
|
1982年 | 4 | - |
1981年 | 4 | - |
1980年 | 4 |
5.88% ↑
|
1979年 | 3 |
6.25% ↑
|
1978年 | 3 |
6.67% ↑
|
1977年 | 3 |
7.14% ↑
|
1976年 | 3 |
7.69% ↑
|
1975年 | 3 |
4% ↑
|
1974年 | 3 |
3.31% ↑
|
1973年 | 2 |
-21.94% ↓
|
1972年 | 3 |
-14.36% ↓
|
1971年 | 4 |
-15.22% ↓
|
1970年 | 4 |
30.98% ↑
|
1969年 | 3 |
-22.93% ↓
|
1968年 | 4 |
19.83% ↑
|
1967年 | 4 |
-7.35% ↓
|
1966年 | 4 |
-3.79% ↓
|
1965年 | 4 |
-20.48% ↓
|
1964年 | 5 |
-37.75% ↓
|
1963年 | 8 |
-2.79% ↓
|
1962年 | 8 |
27.8% ↑
|
1961年 | 6 | - |
サントメ・プリンシペにおける羊肉生産量は、過去60年以上にわたり比較的低い水準にとどまっています。1961年から1990年代までは4トン前後の安定した量が記録されていました。この小国は赤道直下に位置し、熱帯気候と火山性土壌に恵まれていますが、その条件は羊の飼育に必ずしも適しているわけではありません。これが、生産量が低水準にとどまる背景のひとつと考えられます。
その後、1999年以降、生産量は徐々に上昇し始め、2008年から2010年にかけては最大で7トンに達しました。この一時的な増加は、農業振興政策や国内需要の伸びが影響している可能性があります。また、このタイミングはアフリカ全体で食肉需要が増大した時期と一致しており、サントメ・プリンシペもその影響を受けた可能性が高いと言えます。
しかし、2011年以降、生産量は急激に2トンまで減少し、その後も回復には至っていません。この減少は、いくつかの要因によるものと考えられます。例えば、国の経済的な脆弱性や輸入依存度の高さ、国内農業労働力の不足、さらには自然災害や地球温暖化による気候変動などが挙げられます。また、2011年前後に見られる大幅な減少については、国の社会経済的不安定さや家畜の感染症の流行などの影響も疑われます。
現在、2023年時点で3トンという数値は、国の食肉市場において重要な問題を提起しています。同国の人口は20万人を上回りつつあり、国内の動物性蛋白質需要を満たすには輸入への依存が避けられない状況となっています。これにより、食料自給率の不均衡が懸念されるほか、輸入価格の変動により経済的な衝撃を受ける可能性も考えられます。
サントメ・プリンシペが直面している課題を解決するためには、いくつかの具体的対策が必要です。まず、羊の飼育環境の改善に向けた技術や資源の投入が求められます。例えば、草地管理技術の向上や、感染症対策の充実によって、羊の生存率と繁殖率を向上させることができます。また、地域の農業の強化を目指し、地元で利用可能な資源を活用した小規模農業の支援プログラムを推進することも有効です。
さらに、近隣諸国や地域機関との協力体制の強化が重要です。食肉の取引や技術移転、知識共有を促進することで、地域全体での競争力を高め、経済安定に寄与することが可能です。他国の例として、インドやスーダンでは政府主導で牧畜技術の研究・普及を進めることで生産性の向上を実現しており、これらのモデルを参考にすることができます。
加えて、地政学的リスクや気候変動への対策も欠かせません。具体的には、気候変動影響を緩和するための持続可能な環境管理政策の立案や、地元コミュニティへの教育普及活動が挙げられます。
総じて、こうした取り組みは国内の食品安全保障の確立と持続可能な食料システムの構築に繋がると考えられます。サントメ・プリンシペの羊肉生産量の過去60年の推移は、同国が直面する課題を浮き彫りにしつつも、その解決に向けた明確な方向性を示しています。今後は国際援助や制度的改革を通じて、実効性のある農業政策を実施することが期待されています。