国連の食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、サントメ・プリンシペのトウモロコシ生産量は、1960年代から緩やかな増加を見せながら、1980年代後半から1990年代に急激に成長しました。しかし、1998年を境に大幅な減少が見られ、ここ数年間は減少傾向が続いています。1961年の生産量が400トンであったのに対し、1992年には4,000トンに達しましたが、2022年には532トンまで低下しています。
サントメ・プリンシペのトウモロコシ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 787 |
47.97% ↑
|
2022年 | 532 |
-10.42% ↓
|
2021年 | 594 |
-10.28% ↓
|
2020年 | 662 |
-43.72% ↓
|
2019年 | 1,176 |
24.96% ↑
|
2018年 | 941 |
63.37% ↑
|
2017年 | 576 |
-25% ↓
|
2016年 | 768 |
-6.71% ↓
|
2015年 | 823 |
-0.77% ↓
|
2014年 | 830 |
6.89% ↑
|
2013年 | 776 |
-15.4% ↓
|
2012年 | 917 |
-15.41% ↓
|
2011年 | 1,085 |
-30.53% ↓
|
2010年 | 1,561 |
-21.94% ↓
|
2009年 | 2,000 |
-28.57% ↓
|
2008年 | 2,800 |
-6.67% ↓
|
2007年 | 3,000 |
11.11% ↑
|
2006年 | 2,700 |
-2.09% ↓
|
2005年 | 2,758 |
4.06% ↑
|
2004年 | 2,650 |
1.92% ↑
|
2003年 | 2,600 |
1.96% ↑
|
2002年 | 2,550 |
2% ↑
|
2001年 | 2,500 |
12.11% ↑
|
2000年 | 2,230 |
49.97% ↑
|
1999年 | 1,487 |
9.99% ↑
|
1998年 | 1,352 |
-66.2% ↓
|
1997年 | 4,000 |
-11.11% ↓
|
1996年 | 4,500 |
12.5% ↑
|
1995年 | 4,000 |
-6.98% ↓
|
1994年 | 4,300 |
7.5% ↑
|
1993年 | 4,000 | - |
1992年 | 4,000 |
11.11% ↑
|
1991年 | 3,600 |
33.33% ↑
|
1990年 | 2,700 |
35% ↑
|
1989年 | 2,000 |
33.33% ↑
|
1988年 | 1,500 |
25% ↑
|
1987年 | 1,200 |
33.33% ↑
|
1986年 | 900 |
23.63% ↑
|
1985年 | 728 |
4% ↑
|
1984年 | 700 |
16.67% ↑
|
1983年 | 600 |
20% ↑
|
1982年 | 500 | - |
1981年 | 500 |
11.11% ↑
|
1980年 | 450 | - |
1979年 | 450 |
-10% ↓
|
1978年 | 500 | - |
1977年 | 500 | - |
1976年 | 500 |
-9.09% ↓
|
1975年 | 550 |
3.77% ↑
|
1974年 | 530 |
1.92% ↑
|
1973年 | 520 |
4% ↑
|
1972年 | 500 |
4.17% ↑
|
1971年 | 480 |
2.13% ↑
|
1970年 | 470 |
2.17% ↑
|
1969年 | 460 |
4.55% ↑
|
1968年 | 440 |
2.33% ↑
|
1967年 | 430 |
2.38% ↑
|
1966年 | 420 |
5% ↑
|
1965年 | 400 | - |
1964年 | 400 | - |
1963年 | 400 | - |
1962年 | 400 | - |
1961年 | 400 | - |
サントメ・プリンシペのトウモロコシ生産量推移データは、国の農業構造と社会経済状況の変遷を如実に反映しています。トウモロコシは、同国の食料安全保障において重要な役割を果たしており、国内需要を満たすだけでなく、貴重な輸出収入源ともなっています。このデータは、1960年代から2020年代にかけての農業成長、停滞、そして減少を示す貴重な資料です。
1960年代から1970年代にかけて、同国のトウモロコシ生産量は穏やかな増加を見せていましたが、当時の生産規模は依然として小規模なものでした。1980年代に入ると顕著な増加が見られ、その背景には政府主導の農業政策の推進と外部からの技術支援がありました。特に1983年から1992年にかけては、わずか10年で約7倍に急成長しており、国内農業にとって「黄金期」とも評価できる時代だったと言えます。この成長は、近代的な農業技術の導入や作付面積の拡大に起因すると考えられます。
しかし、1998年以降に生産量が急激に減少している点は注目すべきです。これは国内の政治的・経済的な不安定性や、気候変動による異常気象、インフラの老朽化などが原因である可能性があります。また、労働力の流出や土地の劣化、生産に用いる資材の不足も減少の一因とされます。この減少傾向は、2020年代に至るまで続いており、2022年の532トンという数値は、ピーク時の1992年(4,000トン)の約13%に過ぎません。
なお、周辺地域や他国との比較では、特に西アフリカ諸国の多くがトウモロコシの生産拡大に成功している点が挙げられます。例えば、ナイジェリアやガーナでは、近年の新たな農業技術や品種改良による収量アップが報告されています。これと比べると、サントメ・プリンシペの停滞は顕著で、地域内での競争力が低下していることも懸念されます。
地政学的な背景にも目を向けると、サントメ・プリンシペが小国でありながら地理的に孤立していることが影響を及ぼしています。輸送ネットワークの不備や貿易パートナーの限られた選択肢から、輸入依存度が高まり、国内の農業支援が後回しになっている可能性があります。さらに、気候変動の影響も軽視できません。気温上昇や降雨パターンの変化により、安定した生産が難しくなったとも言えるでしょう。
未来に向けた提案として、同国はまず農業基盤を強化する必要があります。具体的には、灌漑設備の整備、耐乾燥性の高いトウモロコシの品種導入、農業技術の研修プログラムの拡充が考えられます。また、国際機関や地域協力の枠組みを活用し、技術移転や資金援助の支援を受けることも大きな助けとなり得ます。さらに、農業部門の改革を進め、若者の農業参入を促進するためのインセンティブを提供する努力が求められます。
結論として、このデータはサントメ・プリンシペが農業の安定性を失いつつある現状を示しており、緊急の対策が必要な状況と言えます。同国が抱える課題は多岐にわたりますが、持続可能な農業発展を軸とした政策を通じて、国内でのトウモロコシ生産を再び活性化する可能性が残されています。このためには、地域の特性に合った多角的なアプローチが不可欠です。