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マレーシアは国王を選挙で選ぶ!9人の君主による5年ごとの選出方法

マレーシアは国王を選挙で選ぶ!9人の君主による5年ごとの選出方法

国王の地位は、親から子へ受け継がれるもの――。多くの王国では、そのイメージが当てはまります。
ところが、マレーシアの国王は選挙で決まります。
投票するのは一般の国民や国会議員ではありません。国内の9州を治める君主たちです。秘密投票によって自分たちの中から1人を選び、選ばれた君主は5年間、国全体の国家元首を務めます。
さらに、投票用紙には候補者が1人だけ記され、投票後には用紙がその場で処分されます。
世襲と選挙を組み合わせた、マレーシア独特の王制を見ていきましょう。

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マレーシアの国王は「ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴン」

マレーシアの国家元首は、マレー語で「Yang di-Pertuan Agong」と呼ばれます。日本語では一般に「国王」と訳され、カタカナでは「ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴン」などと表記されます。

マレーシアは、国王が政治を自由に決定する絶対君主制ではありません。

同国政府は、マレーシアの政治体制を、ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴンを国家元首とする「議会制民主主義の下の立憲君主制」と説明しています。

項目内容
国家元首ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴン
一般的な日本語訳マレーシア国王
選ぶ機関統治者会議
選挙権を持つ者君主がいる9州の統治者
任期5年
投票方法無記名の秘密投票
必要な賛成票5票以上
現国王第17代スルタン・イブラヒム

13州すべてに世襲君主がいるわけではない

マレーシアは13の州と3つの連邦直轄領からなる連邦国家です。

13州のうち、世襲または伝統的な統治者がいるのは9州です。

統治者の称号
ジョホールスルタン
ケダスルタン
クランタンスルタン
パハンスルタン
ペラスルタン
セランゴールスルタン
トレンガヌスルタン
プルリスラジャ
ヌグリ・スンビランヤン・ディ=ペルトゥアン・ブサール

一般に「9州のスルタンから国王を選ぶ」と説明されることがありますが、厳密には9人全員がスルタンという称号ではありません。

スルタンが7人、プルリス州のラジャが1人、ヌグリ・スンビラン州のヤン・ディ=ペルトゥアン・ブサールが1人です。

残る4州には世襲君主がおらず、州元首に当たる「ヤン・ディ=ペルトゥア・ヌグリ」が置かれています。

  • マラッカ
  • ペナン
  • サバ
  • サラワク

4州の州元首も統治者会議の構成員ですが、国王と副国王を選ぶ会議には参加しません。

9人の君主が自分たちの中から選ぶ

マレーシア連邦憲法第32条は、ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴンを統治者会議が選出し、任期を5年と定めています。

選挙には、次の原則があります。

  • 候補者になれるのは9州の君主だけ
  • 投票できるのも9州の君主だけ
  • 候補となる君主本人の同意が必要
  • 選挙は秘密投票で行う
  • 任期は原則5年
  • 国民による直接投票ではない
  • 首相や国会が国王を指名する制度ではない

州の君主としての地位は、それぞれの州の制度に従って継承されます。一方、マレーシア全体の国王の地位は、その子が自動的に引き継ぐわけではありません。

州では伝統的な君主制、連邦では選挙王制という、二つの仕組みが組み合わされています。

国王は単純な「順番制」ではない

マレーシア国王の選出は、9州が交代するため「輪番制」や「持ち回り制」と説明されることがあります。

ただし、順番が来た君主が無条件で国王になるわけではありません。

統治者会議は、過去に国王を務めた州の順序などを基に候補者名簿を管理します。その名簿で優先順位の高い君主から、1人ずつ候補になります。

候補者には辞退する権利があり、ほかの君主による投票で必要な支持を得られない場合もあります。

したがって、より正確には「選出順の目安となる名簿を使った選挙制」です。

投票用紙に書かれる候補者は1人だけ

一般的な選挙では、複数の候補者名が並ぶ投票用紙を想像するでしょう。

マレーシア国王の選挙は異なります。

統治者会議事務局の公式説明によると、投票用紙には候補となる君主1人の名前だけが示されます。投票する君主は、その候補者が国王にふさわしいかどうかを記入します。

手順を簡略化すると次のようになります。

  1. 候補順の上位にいる君主へ、立候補の意思を確認する
  2. 同意した君主1人を候補として投票用紙に示す
  3. ほかの君主が秘密投票を行う
  4. 5票以上を獲得すれば、候補者へ就任を打診する
  5. 本人が受諾すれば国王に選出される
  6. 5票に届かない場合や本人が辞退した場合、次の君主を候補にして再投票する

複数候補の得票数を比較して最多得票者を決める選挙ではありません。

1人ずつ信任の可否を問い、必要な賛成を得るまで候補を替えていく方式です。

秘密投票の方法にも細かな規則がある

国王選挙では、投票の秘密を守るために細かな手続きが定められています。

  • 投票用紙には番号を付けない
  • すべて同じペンとインクを使用する
  • 投票用紙は投票箱へ入れる
  • 候補になっていない、在位期間の短い君主が開票に加わる
  • 結果発表後、投票用紙を君主たちの前で焼却または裁断する

選挙に直接関わるのは、9州の君主、統治者印璽管理官、事務担当者などに限られます。

誰がどのような票を投じたかは公表されません。

候補を辞退することもできる

国王候補になるには、本人の同意が必要です。

就任を望まない君主は、統治者印璽管理官へ書面で辞退の意思を伝えることができます。その場合、その州は候補者名簿の最後へ移されます。

また、次の場合には候補になる資格がありません。

  • 未成年である
  • 本人が選出を希望しない
  • 心身の状態やその他の理由で職務に適さないと、統治者会議が秘密投票で判断した

不適格とする決定には、少なくとも5人の君主による賛成が必要です。

このように、名簿上の順番だけでなく、本人の意思とほかの君主からの信任が必要になります。

選ばれた君主は州の仕事をどうする?

国王に選ばれた君主は、5年間、自分の州とマレーシア全体を同時に直接統治するわけではありません。

連邦憲法第34条は、国王在任中、原則として出身州の君主としての職務を行わないと定めています。イスラム教の長としての役割など、一部の例外はあります。

州では、その州の憲法に基づいて摂政や摂政評議会などが職務を担います。

任期を終えた国王は、出身州へ戻り、再び州の君主として活動します。

国全体の王座へ移ることで、出身州の王位を失うわけではありません。

一度国王になったら二度となれない?

過去に国王を務めた君主や州は、候補順の最後へ移ります。

しかし、将来もう一度選ばれる可能性まで否定されているわけではありません。

実際に、ケダ州のスルタン・アブドゥル・ハリムは、次の2回、ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴンを務めました。

  • 第5代:1970年9月21日~1975年9月20日
  • 第14代:2011年12月13日~2016年12月12日

同じ人物が、約36年を隔てて二度国王になった例です。

9州すべてが一巡したあと、過去の選出順を基に候補者名簿が再構成されるため、このような再選が起こり得ます。

制度が始まったのは1957年

現在の国王制度は、マラヤ連邦がイギリスから独立した1957年に始まりました。

最初のヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴンに選ばれたのは、ヌグリ・スンビラン州のトゥアンク・アブドゥル・ラーマンです。

マレー半島には独立以前から複数の王家がありました。新国家の国家元首を一つの王家に固定すれば、ほかの州との均衡が問題になります。

そこで、各州の君主制を残しながら、その中から一定期間だけ連邦全体の元首を選ぶ仕組みが採用されました。

選挙を行う統治者会議自体は、1948年2月18日に9州の君主が参加して最初の会議を開催しています。

マレーシア成立以前から存在した州王室と、独立後の連邦国家を結び付けるための制度なのです。

現在の国王はジョホール州のスルタン・イブラヒム

2026年7月時点の国王は、第17代ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴンのスルタン・イブラヒムです。

出身はマレー半島南部のジョホール州で、2010年から同州のスルタンを務めています。

2024年1月31日に国王として宣誓し、同年7月20日に即位式が行われました。

連邦憲法上の任期は5年ですが、辞任、統治者会議による解任、死去などで任期途中に交代する可能性もあります。

人物名を記事に掲載する場合は、必ず基準日を付ける必要があります。

国王と首相は何が違う?

マレーシア国王は国家元首ですが、政府の日常的な政策を指揮する政府首班は首相です。

連邦憲法第40条は、憲法に例外が定められている場合を除き、国王が内閣または担当大臣の助言に従って職務を行うと定めています。

国王には、次のような憲法上の役割があります。

  • 国家元首として国を代表する
  • 連邦議会を構成する
  • 首相を任命する
  • 内閣の助言に基づいて閣僚を任命する
  • 国軍最高司令官を務める
  • 法律の公布に関与する
  • 連邦直轄領などでイスラム教の長を務める
  • 栄典を授与する

一方、首相の任命、議会解散要求への同意を留保することなど、一部の場面では憲法上の裁量が認められています。

「選ばれた国王が5年間自由に政治を行う」のではなく、議会制民主主義の枠内で国家元首を務める制度です。

国民が投票しないのに、なぜ「選挙王制」なのか

選挙という言葉から、国民投票を想像するかもしれません。

しかし、選挙王制とは、君主の地位が血統だけで自動的に決まらず、一定の選挙人による選出を含む制度を指します。

マレーシアの場合、その選挙人が9州の君主です。

  • 州の君主:各州の制度に従って継承
  • 連邦の国王:9州の君主による秘密投票で選出

この二層構造が、マレーシア王制の最大の特徴です。

「国王を選挙で選ぶ」という説明は正しいものの、「全国民による選挙」と誤解させない補足が必要です。

まとめ

マレーシアの国王は、君主がいる9州の統治者による選挙で決まります。

  • 国王の称号はヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴン
  • 任期は原則5年
  • 候補者と投票者は9州の君主
  • 9人のうち7人がスルタンで、2人は別の称号を持つ
  • 投票用紙には候補者1人だけが示される
  • 選出には5票以上が必要
  • 候補者本人の同意も必要
  • 単純な自動持ち回りではない
  • 投票用紙は結果発表後に処分される
  • 現国王はジョホール州のスルタン・イブラヒム
  • 国王は立憲君主で、政治の実務は首相と内閣が担う

世襲の州君主制と、選挙による連邦王制。マレーシアでは、この二つを組み合わせることで、複数の王家と連邦国家の均衡を保っているのです。

この記事に関するクイズ

第1問

マレーシア国王の通常の任期は何年でしょう?

  • A. 1年
  • B. 3年
  • C. 5年
  • D. 終身

答え:

















正解:C. 5年

ヤン・ディ=ペルトゥアン・アゴンは、9州の君主から選ばれ、原則として5年間務めます。

第2問

マレーシア国王を選ぶ選挙で投票できるのは誰でしょう?

  • A. 18歳以上の国民
  • B. 国会議員
  • C. 13州すべての州元首
  • D. 君主がいる9州の統治者

答え:

















正解:D. 君主がいる9州の統治者

世襲君主のいない4州の州元首は、国王選挙には参加しません。

第3問

国王候補が選出されるために必要な票数は何票以上でしょう?

  • A. 3票
  • B. 5票
  • C. 7票
  • D. 9票

答え:

















正解:B. 5票

投票用紙には候補者1人だけが示され、9人の君主のうち5人以上から支持を得る必要があります。

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