サンマリノの国家元首は2人
サンマリノ共和国の国家元首は「カピターニ・レジェンティ」です。英語では「Captains Regent」と呼ばれます。
この記事では、役割が分かりやすいよう、以降は「執政」と表記します。
サンマリノの2005年憲法法第185号は、2人の執政が共同で国家元首の職務を行うと定めています。2人は国を代表するとともに、憲法秩序を守る最高の保証者です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国家元首 | 2人の執政 |
| 現地語の名称 | Capitani Reggenti |
| 任期 | 6か月 |
| 就任日 | 毎年4月1日、10月1日 |
| 選ぶ機関 | 大評議会 |
| 選挙方法 | 秘密投票 |
| 主な資格 | 生来のサンマリノ市民、25歳超 |
| 再任制限 | 前の任期終了から3年間は再選不可 |
「大統領が2人いる」と紹介されることもありますが、正式な役職名は大統領ではありません。伝統的な名称と制度を持つ共同国家元首です。
任期は4月1日から10月1日までの半年
執政の任期は、次のどちらかです。
- 4月1日から10月1日
- 10月1日から翌年4月1日
2005年資格法第186号第5条に、この就任日と6か月の任期が明記されています。
半年が終われば、同じ2人がそのまま続けるわけではありません。新しく選ばれた2人が宣誓し、国家元首の職務を引き継ぎます。
1年に2組、合計4人が就任する計算です。ただし、同じ人物が生涯に一度しか務められないわけではありません。前の任期が終わってから3年が過ぎれば、再び選ばれる資格を得ます。
なぜ国家元首が2人いるのか
2人制の大きな目的は、国家の最高位にある権力を一人へ集中させないことです。
サンマリノ政府の公式資料によると、執政は共同で職務を行います。公式観光局は、2人が互いに拒否権を持ち、権力が一人の手に入らないようにしていると説明しています。
一方が国を代表し、もう一方が補佐する関係ではありません。2人は対等です。
この仕組みには、次のような意味があります。
- 重要な判断を一人だけで進めにくくする
- 2人が互いの行動を確認する
- 短い任期で権力の固定化を避ける
- 国家元首を恒久的な特権階級にしない
2人制と半年任期は、権力を分け、頻繁に交代させるという一つの考え方から生まれています。
起源は中世の都市国家
執政制度の起源は、中世の自治都市の時代にさかのぼります。
公式観光局によると、2人の「コンスル」の存在を記した最初の文書は、12月12日付の1243年または1244年のものです。文書の状態から、年をどちらか一方へ確定できないとされています。
当時の2人は、フィリッポ・ダ・ステルペートとオッドーネ・ディ・スカリートでした。
古代ローマの執政官も2人でしたが、サンマリノの制度を単純に「ローマ制度のコピー」とするのは正確ではありません。中世イタリアの自治都市に見られた共同統治の伝統の中で形成され、サンマリノ独自の法律と慣行として発展してきた制度です。
こうした共和制の制度的連続性は、2008年に「サンマリノ歴史地区とティターノ山」が世界遺産へ登録された際にも評価されています。
執政を選ぶのは60議席の大評議会
執政を選ぶのは、サンマリノの議会に当たる「大評議会」です。
大評議会は60人の議員で構成される一院制の立法機関です。執政選挙は秘密投票で行われます。
サンマリノ政府の説明では、議員は2人一組の候補へ投票します。投票者の過半数を得た組が選出され、必要な多数に届かなければ上位候補による決選投票へ進みます。
選出の流れを簡略化すると、次のようになります。
- 大評議会で2人一組の候補を示す
- 議員が秘密投票を行う
- 必要な多数を得た2人を選出する
- 内務担当の国務長官が公共宮殿のバルコニーから結果を発表する
- 4月1日または10月1日に2人が宣誓し、就任する
国民が執政へ直接投票する制度ではありません。しかし、国民が選挙で選んだ議会が国家元首を選ぶ仕組みです。
誰でも執政になれるわけではない
資格法では、執政の主な要件を次のように定めています。
- 生来のサンマリノ市民である
- 25歳を超えている
- 前の執政任期終了から3年以上が経過している
政府・観光当局の説明では、執政は大評議会議員の中から選ばれます。
就任中は、ほかの公職や職業、事業との兼任も認められません。半年間は国家元首としての職務へ集中し、利害の衝突を避けるためです。
前任者が3年間再任できない規則は、同じ人物が短期間に何度も国家元首を務め、影響力を固定化することを防ぎます。
執政は何をするのか
政は政府の日常的な政策を指揮する首相とは異なります。
サンマリノで行政を担う政府は「国務会議」で、国務長官たちによって構成されます。一方、執政は共同国家元首であり、国家機関が憲法に沿って均衡を保ちながら働くことを見守ります。
主な役割は次のとおりです。
- 国家を代表する
- 憲法秩序の最高の保証者となる
- 大評議会を招集し、議長を務める
- 法律を公布する
- 選挙や国民投票の日程を定める
- 外国の外交使節を受け入れる
- 政府形成に向けた協議を行う
- 市民からの請願や国民発案を受け取る
執政は大評議会を主宰しますが、議長としての投票権はありません。
法律について疑義がある場合は、一度だけ理由を示して大評議会へ再検討を求められます。ただし、大評議会が再び承認した場合は公布しなければなりません。
強い政策決定権を持つ一人の指導者ではなく、国家制度の働きと均衡を守る役割が中心です。
半年ごとに交代しても政治が止まらない理由
国家元首が半年ごとに代わると、長期的な政治ができないように思えるかもしれません。
しかし、サンマリノの政治は執政だけで動いているわけではありません。
- 大評議会:法律をつくる
- 国務会議:行政と政策を担う
- 裁判機関:司法を担う
- 執政:共同国家元首として制度を保証する
それぞれの機関が別の役割を持ち、執政が交代しても議会、政府、行政組織は活動を続けます。
国家元首の仕事を制度の保証と儀礼に重点化し、短期で交代させることによって、長期的な政治運営と権力集中の防止を両立させているのです。
4月1日と10月1日は公開の就任式
新しい執政が就任する日は、政治上の手続きであると同時に、サンマリノを代表する伝統行事です。
歴史地区では、軍楽隊、衛兵、政府関係者、外交団などが参加する行列が進みます。聖マリノ大聖堂での儀式を経て、公共宮殿で宣誓と就任が行われます。
公式観光局によると、行列や広場での行事は一般の人も見学できます。
主な流れは次のとおりです。
- リベルタ広場での掲旗
- 公共宮殿と大聖堂を結ぶ行列
- 大聖堂での宗教儀礼
- 公共宮殿での公式演説
- 新しい2人の宣誓と就任
- 国歌演奏と広場での降旗
細かな式次第は変更される可能性がありますが、4月1日と10月1日の就任は毎年繰り返されます。
中世以来の国家制度が、現在も市民や訪問者の前で更新される日なのです。
任期が終わると、市民が異議を申し立てられる
サンマリノの制度で特に興味深いのが、任期後の「執政審査」です。現地では「Sindacato della Reggenza」と呼ばれます。
政府の公式資料によると、任期終了後15日以内であれば、選挙人名簿に登録された市民は、執政の任期中の行為や不作為について書面で申し立てることができます。
申し立ては、憲法規範の合憲性を保障する機関によって審査されます。
任期中の執政には職務上の保護がありますが、任期が終われば一般市民へ戻ります。国家元首だったことによる恒久的な特権はありません。
半年という短い任期、2人による相互けん制、任期後の審査。この三つが組み合わさり、最高位の公職にも責任を求める仕組みになっています。
2026年前半期の執政は誰?
2026年7月時点の執政は、アリーチェ・ミーナとウラジーミロ・セルヴァです。
大評議会は2026年3月16日、2人を同年4月1日から10月1日までの執政に選出しました。
10月1日には次の2人が就任するため、人物名を記事に残す場合は必ず基準日を添える必要があります。
制度そのものは変わらなくても、在任者は半年ごとに更新されます。
アンドラの2人の国家元首とは何が違う?
国家元首が複数いる制度は、サンマリノだけではありません。
たとえば、アンドラにはフランス大統領とスペインのウルヘル司教という2人の共同公がいます。しかし、共同公はアンドラ議会が半年ごとに選ぶわけではありません。それぞれが別の地位に就くことで、自動的に共同公になります。
サンマリノでは、自国の議会が自国民の中から2人を選び、2人が6か月だけ共同国家元首を務めます。
「2人いること」だけでなく、「短期の選挙制」「共同での職務」「再任制限」「任期後の審査」が一体になっている点に、この国の制度の個性があります。
まとめ
サンマリノでは、2人の執政が共同で国家元首を務めます。
- 正式名称はカピターニ・レジェンティ
- 国家元首は常に2人
- 任期は6か月
- 毎年4月1日と10月1日に交代する
- 大評議会が秘密投票で選ぶ
- 候補者には国籍・年齢などの資格がある
- 前の任期終了から3年間は再任できない
- 2人は共同で行動し、互いに拒否権を持つ
- 主な役割は国家代表と憲法秩序の保証
- 任期後は、市民が行為や不作為について申し立てられる
半年という短さは、国家元首を軽く扱っているからではありません。
権力を分け、頻繁に交代させ、最後に市民が責任を問えるようにする。サンマリノの執政制度は、小さな共和国が長く自治を守るために育ててきた仕組みなのです。
この記事に関するクイズ
第1問
サンマリノの執政の任期はどれくらいでしょう?
- A. 3か月
- B. 6か月
- C. 1年
- D. 5年
答え:
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
正解:B. 6か月
任期は4月1日から10月1日、または10月1日から翌年4月1日までの半年です。
第2問
新しい執政が就任する日はいつでしょう?
- A. 1月1日と7月1日
- B. 3月1日と9月1日
- C. 4月1日と10月1日
- D. 6月1日と12月1日
答え:
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
正解:C. 4月1日と10月1日
この2日には歴史地区で行列や宣誓を含む就任式が行われます。
第3問
2人の執政を選ぶ機関はどこでしょう?
- A. 国務会議
- B. 大評議会
- C. 最高裁判所
- D. イタリア議会
答え:
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
正解:B. 大評議会
サンマリノの一院制議会である大評議会が、秘密投票によって2人を選びます。