国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、マレーシアのヤギ飼養頭数は1961年の約30万頭から始まり、近年まで大きな変動を繰り返しながら推移してきました。特に、2006年から2009年にかけて急激な増加が見られ、最高値の約51万頭を記録しましたが、その後再び減少に転じ、2022年時点では約33万頭に留まっています。この長期的な減少と一時的なピークの背景には、社会経済的要因や政策の影響があると考えられます。
マレーシアのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 329,710 |
2021年 | 323,994 |
2020年 | 324,355 |
2019年 | 312,571 |
2018年 | 359,200 |
2017年 | 385,304 |
2016年 | 416,529 |
2015年 | 431,651 |
2014年 | 429,439 |
2013年 | 435,000 |
2012年 | 462,510 |
2011年 | 476,431 |
2010年 | 496,194 |
2009年 | 514,233 |
2008年 | 477,480 |
2007年 | 428,263 |
2006年 | 349,427 |
2005年 | 287,670 |
2004年 | 264,394 |
2003年 | 246,977 |
2002年 | 234,795 |
2001年 | 234,468 |
2000年 | 237,113 |
1999年 | 237,680 |
1998年 | 236,248 |
1997年 | 241,262 |
1996年 | 254,592 |
1995年 | 282,109 |
1994年 | 304,492 |
1993年 | 291,203 |
1992年 | 293,059 |
1991年 | 298,704 |
1990年 | 331,278 |
1989年 | 330,000 |
1988年 | 326,000 |
1987年 | 317,200 |
1986年 | 301,600 |
1985年 | 335,800 |
1984年 | 346,209 |
1983年 | 335,194 |
1982年 | 342,035 |
1981年 | 359,660 |
1980年 | 342,119 |
1979年 | 356,197 |
1978年 | 355,038 |
1977年 | 372,545 |
1976年 | 355,546 |
1975年 | 358,751 |
1974年 | 342,472 |
1973年 | 323,185 |
1972年 | 346,462 |
1971年 | 357,479 |
1970年 | 368,776 |
1969年 | 356,385 |
1968年 | 357,791 |
1967年 | 332,823 |
1966年 | 354,939 |
1965年 | 338,241 |
1964年 | 347,232 |
1963年 | 335,718 |
1962年 | 310,120 |
1961年 | 304,707 |
マレーシアのヤギ飼養頭数の推移を見ると、1961年から1980年代半ばまでは概ね30万頭から35万頭の間で安定して推移していましたが、その後、1986年には約30万頭まで減少しました。その後も減少傾向が続き、1996年には約25万頭と、初期の水準から大きく落ち込みました。このような減少の背景には、都市化や農村地域の労働力不足、さらにヤギ飼育の収益性の低下が影響を及ぼした可能性があります。
一方で、2000年代に入ると一時的に以下のような回復傾向が見られました。特に2006年から2009年の間には急激な増加が見られ、2009年には約51万頭に達しました。この急増の背景としては、政府による農業振興策や畜産業の効率化が挙げられます。同時に、この時期の世界的な食料需要の高まりや輸出を目的とした増産がヤギ飼養頭数の拡大を後押ししたとも考えられます。しかし2009年以降、再び減少の傾向が見られ、2022年には約33万頭にまで落ち込んでいます。この縮小は、特に近年の人口動態の変化や、農村地域の高齢化、若い世代の農業離れが影響していると考えられます。さらに、2020年からの新型コロナウイルスのパンデミックも飼育資源の確保や輸送に影響を与えた可能性があります。
地域的な課題としては、ヤギの飼養が主に農村部で行われる中、都市部への過度な人口集中と農村部の活性化施策の乏しさが顕著に問題となっています。また、マレーシアではヤギ肉や乳製品の需要が安定している一方で、輸入による補填が多く行われており、国内供給のロジスティクスの課題や飼育技術の改善が求められます。
今後の対策としては、ヤギの生産性を高めるために飼料の効率化や遺伝子資源の改良を進め、飼育コストを削減することが重要です。また、若年層が農業に参入しやすいよう補助金制度や教育プログラムを拡充することが求められます。さらに近隣諸国では、効率的な畜産大規模化プロジェクトの導入が進んでおり、これを参考に技術協力を行うことや、地域間での共同プロジェクトを推進することで国内生産を底上げすることが鍵となるでしょう。
地政学的背景を考慮すると、食料自給率の向上が国家の安定性に直結するため、地域内の協力体制構築が不可欠です。特にASEAN諸国との連携を深め、飼育資源の共有や技術交流の枠組みを形成することは、将来的に食料供給リスクを軽減することにつながります。
結論として、マレーシアのヤギ飼養頭数の変動は、農業政策や社会的要因の影響を強く受けてきました。都市化や若年層の農業離れ、高齢化問題などの課題に対しては、国内生産性向上だけでなく、地域協力や飼育技術の向上といった包括的な対応が必要です。