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マレーシアのカカオ豆生産量推移(1961-2022)

マレーシアにおけるカカオ豆の生産量は、1961年の600トンから1989年にはピークとなる247,000トンに達し、その後は急速に減少しました。2022年の生産量は493トンと、大幅な生産縮小が続いています。この推移は、他の農業産品との競争や市場条件の変化、生産コストの上昇など、多様な要因を考慮する必要があります。

年度 生産量(トン)
2022年 493
2021年 537
2020年 706
2019年 1,017
2018年 826
2017年 1,012
2016年 1,723
2015年 1,729
2014年 2,665
2013年 2,809
2012年 3,645
2011年 4,605
2010年 15,654
2009年 18,152
2008年 27,955
2007年 35,180
2006年 31,937
2005年 27,964
2004年 33,423
2003年 36,236
2002年 47,661
2001年 57,708
2000年 70,262
1999年 83,668
1998年 90,183
1997年 106,027
1996年 120,071
1995年 131,475
1994年 177,172
1993年 200,000
1992年 220,000
1991年 230,000
1990年 247,000
1989年 243,000
1988年 230,000
1987年 167,000
1986年 130,000
1985年 99,000
1984年 90,000
1983年 68,000
1982年 61,000
1981年 49,068
1980年 35,372
1979年 28,515
1978年 21,879
1977年 17,513
1976年 15,170
1975年 12,880
1974年 10,480
1973年 6,733
1972年 5,000
1971年 4,500
1970年 3,200
1969年 2,750
1968年 2,350
1967年 2,250
1966年 1,700
1965年 1,200
1964年 850
1963年 400
1962年 600
1961年 600

1961年にスタートしたマレーシアのカカオ豆生産は、1960年代後半から1970年代にかけて着実に成長を遂げました。この時期、多くの新興国同様、マレーシアでもカカオ栽培が重要な輸出産品と見なされ、政府支援のもと生産量が増加し続けました。1970年代末から1980年代にかけては、国際的な市場需要の拡大と適した気候条件を背景に、生産が飛躍的に成長し、1989年には247,000トンのピークを記録しました。

しかし1990年代に入ると状況が変化しました。パームオイルやゴムなど高収益の農作物に圧され、カカオ栽培から撤退する農家が増加しました。また、労働力のコスト上昇と不安定な価格変動、さらにアジア近隣諸国、特にインドネシアやフィリピンなどの競合からの供給増加により競争が激化しました。これらの要因が重なり合い、1994年以降、生産量の減少が顕著になりました。その結果、2022年にはわずか493トンと、かつてのピークから大幅に落ち込みました。

この動向を理解するには、いくつかの地域的要因や国際的課題への言及が必要です。まず、環境的条件がカカオ豆に与えた影響です。マレーシアのカカオ産地では土壌劣化や気候変動の影響が報告されており、十分な収量を得ることが難しくなっています。他方、カカオ生産システムの近代化や利益量の向上が遅れたことも、他の作物への移行を加速化させた要因といえます。

国際的な観点から見れば、インドネシアやアフリカ西部エリア(特にガーナやコートジボワール)の大規模生産シフトが、マレーシアのカカオ豆市場競争力に影響を与えてきました。加えて、長年のマレーシア農業政策では、輸出収益の高いパームオイルを優先する姿勢が顕著で、これが間接的にカカオ生産縮小をもたらしました。

さらに、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による生産活動の縮小や物流の課題が、2020年以降のさらなる低下をもたらしている可能性も考えられます。これによって、即座には克服の難しい生産縮小のトレンドが明確化しました。

今後については、いくつかの現実的な提言が考えられます。第一に、栽培技術の革新と生産効率の向上を目指した制度的な支援が重要です。これには、環境持続性に重点を置いた農法の導入や、新たな品種の研究開発と普及支援が含まれるべきです。第二に、地域間での協調的な取引枠組みを強化し、近隣諸国と競争ではなく協力する形で国際市場シェアを維持する可能性を探るべきです。たとえば、ASEANの枠組みの中での共同プロジェクト推進が有意義と考えられます。第三に、カカオから派生する商品、例えば製菓製品やカカオバターの生産を通じた付加価値の創出が鍵になるでしょう。

最終的には、環境的・地政学的背景の影響を最小化しつつ、多様な農作物の均衡的な栽培と持続可能な資源利用を志向する政策が、マレーシアの農業全体の安定性を高め、カカオ豆生産の新たな可能性を引き出す助けとなると考えられます。国際的需要を慎重に見極めつつ、持続的な生産モデル構築が急務といえるでしょう。