マレーシアのココナッツ生産量推移（1961年～2023年）

出典： Food and Agriculture Organization「国際連合食糧農業機関」

国際連合食糧農業機関（FAO）の最新データによると、マレーシアにおけるココナッツの生産量は、1961年の1,220,000トンをピークに、近年では全体的に減少傾向を示しています。2023年の生産量は482,801トンで、過去60年間で顕著に低下していることがわかります。ただし、一部の年では一時的な増加が見られ、2022年には一時的に604,428トンに達しましたが、翌2023年には再び減少しました。このトレンドは農業生産の構造的な課題や外的要因を反映していると考えられます。

年度	生産量(トン)	増減率
2023年	482,801	-20.12% ↓
2022年	604,428	6.25% ↑
2021年	568,894	1.41% ↑
2020年	560,984	4.54% ↑
2019年	536,606	8.29% ↑
2018年	495,531	-4.26% ↓
2017年	517,589	2.54% ↑
2016年	504,773	-0.17% ↓
2015年	505,614	-15.04% ↓
2014年	595,097	-4.74% ↓
2013年	624,727	0.09% ↑
2012年	624,152	10.95% ↑
2011年	562,556	2.26% ↑
2010年	550,140	19.69% ↑
2009年	459,640	-17.2% ↓
2008年	555,120	4.73% ↑
2007年	530,040	3.38% ↑
2006年	512,700	-10.21% ↓
2005年	571,000	-8.49% ↓
2004年	624,000	7.59% ↑
2003年	580,000	-18.54% ↓
2002年	712,000	-
2001年	712,000	-3.05% ↓
2000年	734,400	-1.45% ↓
1999年	745,200	-1.43% ↓
1998年	756,000	-15.15% ↓
1997年	891,000	-4.09% ↓
1996年	929,000	-9.28% ↓
1995年	1,024,000	0.79% ↑
1994年	1,016,000	-3.42% ↓
1993年	1,052,000	0.77% ↑
1992年	1,044,000	4.19% ↑
1991年	1,002,000	-11.64% ↓
1990年	1,134,000	0.35% ↑
1989年	1,130,000	-0.26% ↓
1988年	1,133,000	10.86% ↑
1987年	1,022,000	-12.43% ↓
1986年	1,167,000	-3.39% ↓
1985年	1,208,000	0.83% ↑
1984年	1,198,000	-2.84% ↓
1983年	1,233,000	-1.52% ↓
1982年	1,252,000	1.79% ↑
1981年	1,230,000	3.54% ↑
1980年	1,188,000	8.49% ↑
1979年	1,095,000	5.9% ↑
1978年	1,034,000	-8.01% ↓
1977年	1,124,000	-8.47% ↓
1976年	1,228,000	-3.84% ↓
1975年	1,277,000	18.13% ↑
1974年	1,081,000	-1.46% ↓
1973年	1,097,000	-5.19% ↓
1972年	1,157,000	-5.16% ↓
1971年	1,220,000	-5.5% ↓
1970年	1,291,000	8.85% ↑
1969年	1,186,000	-5.5% ↓
1968年	1,255,000	8.38% ↑
1967年	1,158,000	-1.03% ↓
1966年	1,170,000	8.33% ↑
1965年	1,080,000	5.06% ↑
1964年	1,028,000	-7.72% ↓
1963年	1,114,000	0.27% ↑
1962年	1,111,000	-8.93% ↓
1961年	1,220,000	-

マレーシアにおけるココナッツ生産量の推移データから、長期にわたる減少傾向を確認することができます。1961年から1970年代にかけては比較的高い水準を維持し、年間1,200,000トン前後の生産量が見られました。しかしその後、1980年代から徐々に生産量が低下し始め、特に1990年代後半以降、急激な減少が顕著になっています。ここには複合的な要因が絡んでいると考えられ、例えば農業方針の転換、生産コストの増加、気候変動の影響、高齢化したココナッツ農園および植え替えの遅れなどが挙げられます。

1998年以降、年間70万トンを下回るようになり、2005年には57万1,000トンまで減少。同時期には天然ゴムやパーム油など、より収益性の高い作物への転換が進んだことも、ココナッツ生産の重要性を減少させた大きな要因とされています。その後も安定的な減少傾向が見られ、2018年では49万5,531トンと歴史的な低水準となりました。一方で、2020年から2022年にかけて生産量が一時的に回復する動きがありましたが、2023年には約48万3,000トンに再び減少しています。この変動の背景には、短期的な市場需要や気候変動による天候の変化が影響していると考えられます。

また、地政学的背景も重要な考慮事項です。東南アジア全域におけるココナッツ需要の変化は、マレーシアの生産にも影響を及ぼしています。例えば、近年インドやインドネシアがココナッツの生産・輸出においてますます競争力を高める中、マレーシアの市場シェアは相対的に縮小してきています。特にインドネシアは世界最大のココナッツ生産国として知られていますが、その言い換えとして、生産効率の高い品種の導入や近代的な農業手法の活用が進んでおり、こうした競合国との技術格差がマレーシアの競争力を制約する要因であると言えるでしょう。

このようなトレンドを踏まえると、今後マレーシアが直面する主な課題は、老朽化した農園の近代化、新しい品種の開発および導入、そして農業従事者の確保にあるといえます。特に農業従事者不足という問題は、人口動態や農業労働者の高齢化が進む中で深刻化しています。この問題の解決には、若年層を農業分野に取り込むための政策が不可欠であり、具体例としては農業分野での教育や補助金の提供、さらに公共および民間の協力による技術支援が挙げられます。

また、自然災害や疫病の直接的な影響も無視できません。近年、熱帯地域では気候変動に伴い洪水や干ばつの頻度が増加しており、ココナッツ生産に悪影響を与えています。これに対応するためには、耐旱性や病気耐性を強化したココナッツ品種の研究・栽培が求められます。国際連合食糧農業機関が提供する技術支援や資金援助を活用することで、こうした課題への対応が進むことが期待されます。

結論として、マレーシアのココナッツ生産量は長期的に見ると減少トレンドが続いていますが、近年の増減からは、正しい政策や技術革新を適切に導入することで回復の道筋を描く余地があるといえます。国際的な競争に打ち勝つためには、地域間の協力を強化し、持続可能な農業モデルを構築することが今後の重要な戦略になるでしょう。