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マレーシアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、マレーシアにおける羊肉生産量は1961年の911トンから2023年の1,710トンまで大きく変動してきました。特に2000年代以降に生産量の増加傾向が顕著で、2017年にはピークの2,032トンに達しましたが、その後は波状的な減少と増加を繰り返しています。2022年は1,496トンと直近の底を記録したものの、2023年には再び1,710トンに回復しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,710
14.25% ↑
2022年 1,496
-4.47% ↓
2021年 1,566
-25.19% ↓
2020年 2,094
3.19% ↑
2019年 2,029
7.95% ↑
2018年 1,880
-7.49% ↓
2017年 2,032
12.94% ↑
2016年 1,799
21.8% ↑
2015年 1,477
-4.77% ↓
2014年 1,551
8.46% ↑
2013年 1,430
23.6% ↑
2012年 1,157
40.58% ↑
2011年 823
14.94% ↑
2010年 716
10.32% ↑
2009年 649
10.37% ↑
2008年 588
10.11% ↑
2007年 534
11.25% ↑
2006年 480
8.84% ↑
2005年 441
5.76% ↑
2004年 417
3.22% ↑
2003年 404
3.32% ↑
2002年 391
16.3% ↑
2001年 336
-8.88% ↓
2000年 369
-12.38% ↓
1999年 421
34.98% ↑
1998年 312
154.42% ↑
1997年 123
-6.89% ↓
1996年 132
-37.55% ↓
1995年 211
85.18% ↑
1994年 114
86.32% ↑
1993年 61
-36.51% ↓
1992年 96
-0.23% ↓
1991年 96
-69.66% ↓
1990年 318 -
1989年 318
-20% ↓
1988年 398
66.67% ↑
1987年 239
35.14% ↑
1986年 176
56.34% ↑
1985年 113
-22.83% ↓
1984年 146
-54% ↓
1983年 318
299.75% ↑
1982年 80
-28.57% ↓
1981年 111
-27.5% ↓
1980年 154
-35.6% ↓
1979年 239
-28.57% ↓
1978年 334
-30% ↓
1977年 477
-12.64% ↓
1976年 546
25.7% ↑
1975年 434
26.72% ↑
1974年 343
-11.34% ↓
1973年 387
-57.35% ↓
1972年 906
7.55% ↑
1971年 843
1.92% ↑
1970年 827
4% ↑
1969年 795
33.33% ↑
1968年 596
1.72% ↑
1967年 586
-18.08% ↓
1966年 716 -
1965年 716
-2.22% ↓
1964年 732
-20.65% ↓
1963年 922
-6.24% ↓
1962年 984
7.98% ↑
1961年 911 -

マレーシアの羊肉生産は、1960年代から長期的な視点で見ると変動を繰り返しています。1960年代初頭は年間900トン台で推移していましたが、1964年以降に生産量が減少し、1970年代には300トン台から500トン程度にとどまりました。この間、農業政策や産業構造の変化、気候条件の影響が羊肉生産に関わった可能性があります。特に1973年から1979年にかけての急激な減少は、地政学的リスクや経済的要素、また牧畜方式の転換に関連していると考えられます。

1980年代になるとさらに生産量の落ち込みが目立ちます。この時期、国内では都市化が進み、農業や牧畜業に従事する人口が減少したことが主因と推測されます。また、同時に輸入に依存する傾向が加速し、国内生産の必要性が薄れた可能性があります。しかし1990年代中盤以降に、1998年の312トンを皮切りに増加傾向に転じました。この背景には、地域経済の成長や羊肉の需要増加による市場環境の変化があったと推察されます。

2000年代以降は、マレーシアの羊肉生産が着実に増加しました。例えば、2007年から2015年の間に生産量は534トンから1,477トンまで約3倍の成長を見せています。これは畜産業への投資増加や政府の農業振興政策によるものと考えられます。ただし、2016年以降は一部の年で生産量が減少しますが、全体的には再び増大傾向が続きました。そして2017年には史上最高の2,032トンを記録。この記録的な数値は国内需要の急増や効率的な生産技術の導入に起因しているとみられています。

2021年と2022年にはそれぞれ1,566トンと1,496トンと顕著な落ち込みが見られました。この時期、世界的な新型コロナウイルス感染症の影響により、物流の停滞や労働力不足が発生した結果、牧畜業が大きな打撃を受けた可能性があります。しかし2023年には1,710トンに持ち直し、回復傾向が現れています。これは、パンデミック後の正常化と持続可能な農業政策を背景に需要と供給がある程度安定してきたためと考えられます。

マレーシアのようにイスラム教徒が多い国では、羊肉は宗教的行事や日常の食文化において重要なタンパク源となっています。しかし同時に、国内の羊肉供給が外国からの輸入に依存している現状も課題です。2022年時点において国内生産の規模は依然として需要の大部分を賄うには十分ではありません。このため、マレーシア政府は国産羊肉の生産能力を向上させるための政策をさらに強化する必要があります。

具体的には、小規模な牧畜農家への技術支援の拡充や生産効率を高めるためのインフラ投資が提案されます。また、持続可能な農業への転換も重要な視点です。過剰生産による環境負荷を避けつつ、自然資源を活用したエコフレンドリーな育種システムを導入することで、国産羊肉の品質と生産性を向上させることができます。

さらに、地政学的リスクや気候変動への対応も避けて通れません。輸入依存リスクを減らすため、近隣国との地域間協力や流通の多様化を通して食肉の供給を確保する枠組みの検討が重要です。特に気候変動が牧草不足や家畜の健康に悪影響を与える可能性があるため、適応型牧畜の普及は将来的にも重要なテーマとなるでしょう。

結論として、マレーシアの羊肉生産量は増減の波を経ながらも、長期的には成長傾向にあります。しかし、課題の解決には政府、農家、消費者の協力が不可欠です。今後の持続可能な発展に向けた具体的な政策や取り組みが期待されます。