国際連合食糧農業機関(FAO)が最新の統計データとして公開した情報によると、マレーシアのカシューナッツ生産量は、2023年時点で16,905トンとなっています。1961年の3,600トン以来、特に1974年以降は大きな増加傾向が見られ、2020年代には安定的ながら緩やかな成長が続いています。ただし、この約60年間の間には短期的な減少や不安定な変化も観察されています。近年では世界のカシューナッツ需要が増加している一方、他国との国際競争が課題となっています。
マレーシアのカシューナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 16,905 |
0.55% ↑
|
2022年 | 16,813 |
0.84% ↑
|
2021年 | 16,673 |
0.85% ↑
|
2020年 | 16,533 |
0.88% ↑
|
2019年 | 16,389 |
0.62% ↑
|
2018年 | 16,287 |
0.53% ↑
|
2017年 | 16,201 |
0.89% ↑
|
2016年 | 16,058 |
1.53% ↑
|
2015年 | 15,816 |
2.27% ↑
|
2014年 | 15,466 |
-0.48% ↓
|
2013年 | 15,541 |
-2.87% ↓
|
2012年 | 16,000 |
7.19% ↑
|
2011年 | 14,927 |
2.28% ↑
|
2010年 | 14,595 |
2.28% ↑
|
2009年 | 14,270 |
2.26% ↑
|
2008年 | 13,955 |
7.34% ↑
|
2007年 | 13,000 |
-4.08% ↓
|
2006年 | 13,553 |
0.99% ↑
|
2005年 | 13,421 |
0.85% ↑
|
2004年 | 13,308 |
0.69% ↑
|
2003年 | 13,217 |
0.7% ↑
|
2002年 | 13,125 |
0.68% ↑
|
2001年 | 13,036 |
0.64% ↑
|
2000年 | 12,952 |
-1.03% ↓
|
1999年 | 13,088 |
1.17% ↑
|
1998年 | 12,936 |
1.22% ↑
|
1997年 | 12,779 |
1.28% ↑
|
1996年 | 12,618 |
-2.94% ↓
|
1995年 | 13,000 |
7.4% ↑
|
1994年 | 12,104 |
-0.82% ↓
|
1993年 | 12,204 |
1.7% ↑
|
1992年 | 12,000 |
9.09% ↑
|
1991年 | 11,000 |
10% ↑
|
1990年 | 10,000 |
-26.18% ↓
|
1989年 | 13,546 |
37.38% ↑
|
1988年 | 9,860 |
37.4% ↑
|
1987年 | 7,176 |
44.53% ↑
|
1986年 | 4,965 |
-17.25% ↓
|
1985年 | 6,000 |
-20% ↓
|
1984年 | 7,500 |
63.04% ↑
|
1983年 | 4,600 |
557.14% ↑
|
1982年 | 700 |
-61.11% ↓
|
1981年 | 1,800 |
-65.38% ↓
|
1980年 | 5,200 |
-10.34% ↓
|
1979年 | 5,800 |
-40.82% ↓
|
1978年 | 9,800 |
-14.04% ↓
|
1977年 | 11,400 |
-5% ↓
|
1976年 | 12,000 |
7.14% ↑
|
1975年 | 11,200 |
12% ↑
|
1974年 | 10,000 |
203.03% ↑
|
1973年 | 3,300 |
-10.81% ↓
|
1972年 | 3,700 |
2.78% ↑
|
1971年 | 3,600 |
-16.28% ↓
|
1970年 | 4,300 |
10.26% ↑
|
1969年 | 3,900 |
5.41% ↑
|
1968年 | 3,700 |
2.78% ↑
|
1967年 | 3,600 | - |
1966年 | 3,600 | - |
1965年 | 3,600 | - |
1964年 | 3,600 | - |
1963年 | 3,600 | - |
1962年 | 3,600 | - |
1961年 | 3,600 | - |
マレーシアのカシューナッツ生産量は、1961年の3,600トンから2023年の16,905トンまで長期的に増加してきました。しかし、この増加は一貫して直線的なものではなく、いくつかの急激な変化や停滞期間が特徴的です。たとえば、1974年に一気に10,000トンへ増加した一方で、1981年からは急速に減少し700トンまで落ち込みました。その後1980年代後半から再び増加に転じ、1990年代以降はおおむね安定しながらも年々微増しています。2000年代には毎年数十トン単位の増加が続き、2020年代には16,000トン台を達成しています。
これらの生産量の変動要因には、国内外の市場需要、気候的要因、農業技術の進展、政策支援、市場競争力の変化が影響を及ぼしていると考えられます。特に1974年の急増は、マレーシアの農業政策における支援や、新たな品種の導入、輸出促進策が寄与したと予想されます。一方で1980年代初期の急激な落ち込みは、天候不順や生産者の利益低下による作付面積の縮小といった課題が影響した可能性が高いです。
近年、16,000トンを超える生産量を維持していることは、安定的かつ継続的な市場対応が進んでいることを示していますが、他国との競争が激化する中で、マレーシア特有の課題も浮き彫りになっています。たとえば、インドやベトナムはカシューナッツの主要生産国として世界市場をリードしており、輸出量やコスト競争力においてマレーシアを圧倒しています。このため、マレーシアは国際市場における顧客特性への対応や、付加価値の高い製品化が急務と言えるでしょう。
また、地政学的なリスクや気候変動の影響も考慮する必要があります。2020年代には新型コロナウイルスのパンデミックや物流の混乱があったものの、カシューナッツ生産には大きな影響を及ぼさなかったものの、今後も自然災害や極端な気候変動が主要な懸念要素となり得ます。さらに、農業従事者の高齢化と若い世代の農業離れも、中長期的な生産量の維持における課題です。
これらの課題を克服するためには、いくつかの施策が必要です。第一に、気候変動に強い品種の開発や灌漑システムの導入です。適応能力の高い農業技術を導入することで、生産量の安定性を向上させることが期待されます。第二に、農業従事者の教育と支援を拡充し、若者が参入しやすい環境をつくることです。第三に、国際市場で差別化された製品を生産するため、オーガニックカシューナッツなど高付加価値商品のブランド化を進める必要があります。さらに、インドやベトナムなどの主要生産国と協調し、地域間の協力枠組みを強化することで競争力を高めることが重要となります。
結論として、マレーシアのカシューナッツ生産量は長期的に増加しつつも、市場競争や気候変動といった多様な課題に直面しています。これらに対応するため、国内外の動向を踏まえた適切な政策や技術導入が求められます。それにより、国際市場における競争力を高め、安定した生産と収益の確保が実現できるでしょう。