国際連合食糧農業機関(FAO)によると、マレーシアの牛飼養数は過去数十年間で増減を繰り返しつつ、全体的には増加基調を示しました。特に1960年代から1980年代後半にかけて急激な伸びを見せた一方、2010年以降は減少が見られる年もあり、2022年時点では721,344頭となっています。一時的な伸びや縮小にはさまざまな要因が影響していると考えられます。
マレーシアの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 721,344 |
2021年 | 717,431 |
2020年 | 699,424 |
2019年 | 657,407 |
2018年 | 676,686 |
2017年 | 703,832 |
2016年 | 737,827 |
2015年 | 742,338 |
2014年 | 743,019 |
2013年 | 751,629 |
2012年 | 744,377 |
2011年 | 768,710 |
2010年 | 836,859 |
2009年 | 860,491 |
2008年 | 851,227 |
2007年 | 842,186 |
2006年 | 786,201 |
2005年 | 790,065 |
2004年 | 793,005 |
2003年 | 759,152 |
2002年 | 720,246 |
2001年 | 748,183 |
2000年 | 738,783 |
1999年 | 714,916 |
1998年 | 714,337 |
1997年 | 690,756 |
1996年 | 693,542 |
1995年 | 715,279 |
1994年 | 728,753 |
1993年 | 703,116 |
1992年 | 668,793 |
1991年 | 653,321 |
1990年 | 667,720 |
1989年 | 661,000 |
1988年 | 637,000 |
1987年 | 663,300 |
1986年 | 607,200 |
1985年 | 619,100 |
1984年 | 618,328 |
1983年 | 585,575 |
1982年 | 566,422 |
1981年 | 557,760 |
1980年 | 549,522 |
1979年 | 509,709 |
1978年 | 503,826 |
1977年 | 469,199 |
1976年 | 451,136 |
1975年 | 425,620 |
1974年 | 398,657 |
1973年 | 365,740 |
1972年 | 361,696 |
1971年 | 348,786 |
1970年 | 325,522 |
1969年 | 320,426 |
1968年 | 306,337 |
1967年 | 340,273 |
1966年 | 335,082 |
1965年 | 336,301 |
1964年 | 331,364 |
1963年 | 322,779 |
1962年 | 328,002 |
1961年 | 329,555 |
マレーシアにおける牛飼養数は1961年から2022年にかけておおむね増加傾向を示してきましたが、その成長の推移は一定ではなく、年による変動が見られます。1960年代に30万頭台だった飼養数は、1970年代以降少しずつ増加し、1980年代には50万頭を超えるまで拡大しました。この急な増加は、食肉需要の高まりや農業関連政策の進展によるものと考えられます。
1980年代後半から1990年代にかけては一時的にやや減少がありました。その後の1990年代末から2000年代初頭にかけて、再び増加トレンドに転じ、2007年には過去最大の842,186頭に達しました。しかし2010年代に入ると、766,000頭台を記録するなど飼養数がやや落ち込みを見せるようになります。この要因としては、国内の畜産業における収益モデルの限界、都市化の進行、土地利用パターンの変化、さらには農業分野における労働力不足などが考えられます。
特に2010年から2020年の間は新型コロナウイルス感染症の影響も避けられませんでした。パンデミックによりサプライチェーンが分断され、農業関連経済が停滞したことは牛飼養数にも影響を及ぼした可能性があります。それでも2020年以降は徐々に回復が見られ、2022年には721,344頭へと上向きました。
マレーシアの牛飼養数推移に見られる課題としては、以下のような点が挙げられます。第一に、国内の食肉需要拡大に対して牛飼養数が追いついていないことです。隣国インドネシアやベトナムなどが畜産分野で急速に成長している中、マレーシアも食肉供給の安定化に向けた計画が必要です。第二に、地政学的リスクや気候変動が畜産業に長期的影響を与える可能性があります。マレーシアはモンスーンの影響を受けるため、洪水や干ばつといった変動気候が飼養環境や飼料供給に与える打撃が懸念されます。
将来的には、国内畜産業の効率化を図るとともに、自給能力を高める取り組みが重要です。具体的には、以下のような政策が求められるでしょう。まず、地域別で異なる気候条件に応じた管理手法を導入することが挙げられます。また、牧畜に従事する労働者を増やすため、若年層への農業教育や従事者支援策を拡充することが必要です。さらに、政府の補助金を活用して飼料自給率を向上させたり、革新的技術を活用したスマート畜産システムの導入を推進したりすることも有効です。
マレーシアの牛飼養数は、国内の伝統的な畜産業に限らず、食肉輸出や地域協力の分野でも成長性を持っています。今後の発展を支えるためには、国内外の需要と課題を考慮した包括的アプローチが欠かせません。マレーシア政府および国際機関の連携により、持続可能な畜産業の発展が期待されます。