FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、2023年のマレーシアにおけるヤギ肉の生産量は2,659トンとなり、過去数年の中で回復傾向を見せています。このデータをみると、長期間にわたる生産量の推移の中で、初期には低い水準で安定していたものの、2000年代に入ってから急速に成長を見せ、その後、一時的な減少を経た後に再び上昇しています。
マレーシアのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 2,659 |
27.79% ↑
|
2022年 | 2,080 |
7.46% ↑
|
2021年 | 1,936 |
6.21% ↑
|
2020年 | 1,823 |
-16.03% ↓
|
2019年 | 2,171 |
-15% ↓
|
2018年 | 2,554 |
7.85% ↑
|
2017年 | 2,368 |
-25.8% ↓
|
2016年 | 3,192 |
8.94% ↑
|
2015年 | 2,930 |
-2.17% ↓
|
2014年 | 2,995 |
-8.09% ↓
|
2013年 | 3,259 |
-10.7% ↓
|
2012年 | 3,649 |
60.86% ↑
|
2011年 | 2,269 |
35.8% ↑
|
2010年 | 1,671 |
10.42% ↑
|
2009年 | 1,513 |
10.4% ↑
|
2008年 | 1,370 |
9.98% ↑
|
2007年 | 1,246 |
11.25% ↑
|
2006年 | 1,120 |
9.91% ↑
|
2005年 | 1,019 |
12.85% ↑
|
2004年 | 903 |
0.56% ↑
|
2003年 | 898 |
21.52% ↑
|
2002年 | 739 |
22.8% ↑
|
2001年 | 602 |
15.94% ↑
|
2000年 | 519 |
9.85% ↑
|
1999年 | 473 |
10.73% ↑
|
1998年 | 427 |
-1.4% ↓
|
1997年 | 433 |
-1.75% ↓
|
1996年 | 441 |
-4.33% ↓
|
1995年 | 460 |
-22.54% ↓
|
1994年 | 594 |
7.09% ↑
|
1993年 | 555 |
-3.05% ↓
|
1992年 | 573 |
-2.08% ↓
|
1991年 | 585 |
23.8% ↑
|
1990年 | 472 |
3.39% ↑
|
1989年 | 457 |
14.35% ↑
|
1988年 | 399 |
-0.23% ↓
|
1987年 | 400 |
-19.12% ↓
|
1986年 | 495 |
-11.26% ↓
|
1985年 | 558 |
-3.46% ↓
|
1984年 | 578 |
-5.93% ↓
|
1983年 | 614 |
9.4% ↑
|
1982年 | 561 |
-11.22% ↓
|
1981年 | 632 |
-18.43% ↓
|
1980年 | 775 |
8.81% ↑
|
1979年 | 713 |
-14.78% ↓
|
1978年 | 836 |
2.08% ↑
|
1977年 | 819 |
-1.56% ↓
|
1976年 | 832 |
-1.63% ↓
|
1975年 | 846 |
1.66% ↑
|
1974年 | 832 |
-8.77% ↓
|
1973年 | 912 |
-12.32% ↓
|
1972年 | 1,040 |
3.46% ↑
|
1971年 | 1,006 |
4.19% ↑
|
1970年 | 965 |
-2.27% ↓
|
1969年 | 987 |
8.56% ↑
|
1968年 | 910 |
-13.28% ↓
|
1967年 | 1,049 |
-15.68% ↓
|
1966年 | 1,244 |
5.96% ↑
|
1965年 | 1,174 |
8.5% ↑
|
1964年 | 1,082 |
10.49% ↑
|
1963年 | 979 |
-7.08% ↓
|
1962年 | 1,054 |
-7.81% ↓
|
1961年 | 1,143 | - |
マレーシアのヤギ肉生産量の推移を振り返ると、1960年代の初期にはほぼ一定の水準を保ち、年間おおよそ1,000トン前後で推移していました。しかし、1970年代末から1980年代にかけては、生産量が漸減し、特に1987年は400トンまで減少するなど、近代の農業における需要と供給のズレが顕著になった期間といえます。この背景には、都市化の進展や農村部の労働人口の減少が影響していることが考えられます。
一方で、2000年代以降は転換期を迎え、生産量が驚異的に増加しました。特に2011年から2012年にかけての2,269トンから3,649トンへの急上昇が顕著です。これは、ヤギ肉が国内および国際的な市場で高品質なタンパク源として注目されるようになり、政府による畜産業の活性化政策や輸出促進策が奏功した可能性が高いと考えられます。このような伸びは、近隣諸国、たとえばタイやインドネシアと比べても非常に大きな特徴となっています。
しかし、2015年以降は減少と回復を繰り返しながらも、2019年の2,171トン、2020年の1,823トンと低迷する時期を迎えました。この時期には新型コロナウイルス感染症の影響も加わり、生産と物流が共に停滞した可能性があります。また、環境変動や食肉消費の多様性、新たな輸入政策も要因として挙げられます。2023年には2,659トンと回復の兆しを見せていますが、依然として2012年の水準には追いついていません。
このデータが示唆する課題の一つは、マレーシアが依然として需要を十分に満たすために輸入依存を続けていることです。国内の生産体制をいかに強化するかは、食料安全保障上の重要な政策課題です。例えば、日本では地域の農協や行政が中心となって畜産業を支援する政策が見受けられます。これに倣い、マレーシアでも、生産者への補助金、教育プログラム、育種技術の導入が有効な対策として挙げられます。
また、気候変動の影響にも対応する必要があります。特にマレーシアのような熱帯地域では、高温多湿な気候が牧草の生産や飼育環境に影響を及ぼすため、持続可能な生産モデルが求められます。たとえば、オーストラリアやニュージーランドのような牧畜業の先進国では、飼料の改善や動物の健康管理技術が生産効率の向上に寄与しています。このような技術を積極的に取り入れるべきです。
今後の方向性として、他国との協力による技術交流や、地域経済の活性化を目指した農村部の産業構造改革が挙げられます。特に、ASEAN諸国との協力体制の構築は、地域全体の食料生産を向上させると同時に、国民の食生活の安定にも寄与する可能性があります。
結論として、マレーシアにおけるヤギ肉生産の推移は、その国の経済構造や社会情勢、政策の変化を反映しています。データが示す過去の課題を分析し、技術革新や政策改善を通じ、生産量の安定化と増加を図ることが重要です。具体的には、政府主導の畜産業支援策の強化と、気候条件に適した効率的な生産技術の導入が今後の焦点となるでしょう。