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マレーシアのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organizationが発表した最新データによると、マレーシアでは1961年から2022年にかけてバナナ生産量が大きな変動を見せています。1961年に367,000トンだった生産量は、1980年代から1990年代初頭にかけて成長を続け、1993年にピークの540,000トンを達成しました。しかし、その後は減少傾向に入り、2007年には最低値の260,911トンを記録しました。2020年代には30万トン前後で推移しており、近年はやや安定したものの、かつてのピーク水準には達していません。これらの変動には気候条件、農業政策、土壌劣化、生産技術の変化など、さまざまな要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 278,171
-15.6% ↓
2022年 329,573
-0.32% ↓
2021年 330,642
5.36% ↑
2020年 313,811
-3.58% ↓
2019年 325,447
-1.66% ↓
2018年 330,957
-5.57% ↓
2017年 350,493
13.24% ↑
2016年 309,508
-1.9% ↓
2015年 315,500
4.09% ↑
2014年 303,107
5% ↑
2013年 288,677
-0.12% ↓
2012年 289,034
-5.63% ↓
2011年 306,283
-7.92% ↓
2010年 332,639
18.9% ↑
2009年 279,762
2.73% ↑
2008年 272,331
4.38% ↑
2007年 260,911
-31.34% ↓
2006年 380,000
-15.56% ↓
2005年 450,000
-11.76% ↓
2004年 510,000
-3.77% ↓
2003年 530,000
6% ↑
2002年 500,000
-5.66% ↓
2001年 530,000
-1.85% ↓
2000年 540,000
-0.92% ↓
1999年 545,000
1.87% ↑
1998年 535,000
-0.94% ↓
1997年 540,095
0.83% ↑
1996年 535,638
-0.36% ↓
1995年 537,550
1.42% ↑
1994年 530,000
-1.85% ↓
1993年 540,000
5.88% ↑
1992年 510,000
0.2% ↑
1991年 509,000
0.79% ↑
1990年 505,000
1% ↑
1989年 500,000
2.04% ↑
1988年 490,000
1.03% ↑
1987年 485,000
1.04% ↑
1986年 480,000
0.63% ↑
1985年 477,000
0.42% ↑
1984年 475,000
0.42% ↑
1983年 473,000
0.64% ↑
1982年 470,000
2.17% ↑
1981年 460,000
3.37% ↑
1980年 445,000
-1.11% ↓
1979年 450,000
2.27% ↑
1978年 440,000
-2.22% ↓
1977年 450,000
-1.1% ↓
1976年 455,000
8.33% ↑
1975年 420,000
-2.33% ↓
1974年 430,000
10.26% ↑
1973年 390,000
-4.88% ↓
1972年 410,000
2.76% ↑
1971年 399,000
9.62% ↑
1970年 364,000
21.33% ↑
1969年 300,000
23.97% ↑
1968年 242,000
0.41% ↑
1967年 241,000
-4.37% ↓
1966年 252,000
-32.08% ↓
1965年 371,000
3.34% ↑
1964年 359,000
-2.71% ↓
1963年 369,000
-0.81% ↓
1962年 372,000
1.36% ↑
1961年 367,000 -

マレーシアのバナナ生産量推移を見ると、過去60年間で地域農業の特徴的な変化や政策課題が浮かび上がります。1961年から1980年代後半にかけては、農地拡大と生産技術の進化が一役買い、安定的な増加傾向にありました。この成長は、国内のバナナ需要の増加、輸出の可能性拡大、そして農民の安定収入をもたらしました。しかし、1993年以降、生産量は徐々に減少しました。1990年代後半から2000年代初頭にかけての減少期は特に顕著で、その後徐々に回復するように見えたものの、2022年の生産量は329,573トンと、ピーク時の60%程度にとどまっています。

このような変動の要因の一つとして、気候変動の影響が挙げられます。マレーシアではモンスーンのパターンが変化し、バナナの生育に適した降雨量の維持が困難になった地域が多くなりました。また、病害や害虫も収量低下に影響を与えています。特にバナナの主要な病害である「パナマ病」は、耐性が弱い品種に壊滅的な影響を与えることで知られており、マレーシアでもこの問題への対応が急務となっています。

さらに、土地の利用状況の変化も重要な課題です。パーム油の生産が同国農業の中心になっている現在、バナナの農地は他の作物にシフトされることが多くなりました。この政策シフトにより、資源の優先順位が変更され、結果としてバナナに費やされる人材や技術革新への投資が減少しています。

2007年の260,911トンという最低値は、世界経済やマレーシア国内情勢の不安定さを反映していると同時に、バナナ生産分野特有の問題の結果とも言えます。その後、2020年代には30万トン程度の安定水準に戻ってきたものの、これ以上の持続的成長には新たな政策が求められます。

このような状況を踏まえ、いくつかの対策が提案されます。第一に、バナナ生産の効率を向上させるための品種改良が不可欠です。耐病性の高い種の導入や、最新技術を取り入れた灌漑システムの普及が、この目的に資するでしょう。第二に、農業従事者に対する教育と支援を通じて、持続可能な農業手法への移行を後押しすることが重要です。これにより、土壌の劣化を防ぎつつ、生産の収益性を高めることが可能となります。

国際市場への依存度を最適化するために、近隣諸国および地域間協力を進めることも秘訣と言えます。東南アジアは全体としてバナナの消費が高く、地域市場を活性化させるプラットフォームを構築することで、リスクを分散させることが可能です。

加えて、気候変動の影響に強い農業への適応は、すぐには実現しない長期的な課題ですが、回復力ある農業政策の策定が求められます。たとえば、日本や韓国が行っているような、高精度の気象予測を活用した栽培管理技術の応用は、収量の安定化に寄与するかもしれません。

最後に、バナナ生産が地域経済や食料安全保障に果たす役割を評価しながら、政策のバランスを保つことが大切です。パーム油やその他の主要作物との土地利用競合の問題を解決するためには、政府および農業関連機関の協力的な取り組みを必要とします。今後も地域全体の農業の持続可能性を高めるために、国際的な情報共有や資金調達メカニズムの活用も積極的に進めるべきでしょう。

結論として、マレーシアのバナナ生産量は経済的、環境的、地域的な課題に直面しており、それらに適切に対応するための具体的な取り組みが求められています。このような多層的な努力を通じて、生産量の復興や農業セクターの成長だけでなく、地域社会の安定と繁栄も実現できる可能性があります。