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アラブ首長国連邦の羊肉生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国連食糧農業機関)の最新データによると、アラブ首長国連邦(UAE)の羊肉生産量は、急激な増加と顕著な減少を繰り返しながら推移し、特に1970年代から1980年代にかけての増加が目立ちました。しかしその後、生産量は大きく減少し、2023年には約3,824トンと、ピーク時である1994年の約30,690トンと比較して顕著に低下しています。このデータは、UAEの食料生産体制や市場構造、さらには地政学的要因といった複合的な現状を反映しており、持続可能な畜産業の実現に向けた課題が浮き彫りになります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,824
-13.44% ↓
2022年 4,418
7.15% ↑
2021年 4,123
1.56% ↑
2020年 4,059
0.52% ↑
2019年 4,038
-4.83% ↓
2018年 4,243
-16% ↓
2017年 5,052
15.33% ↑
2016年 4,380
7.66% ↑
2015年 4,068
13.54% ↑
2014年 3,583
-27.22% ↓
2013年 4,923
-29.87% ↓
2012年 7,020
1.3% ↑
2011年 6,930
-1.28% ↓
2010年 7,020
-41.79% ↓
2009年 12,060
4.69% ↑
2008年 11,520
6.67% ↑
2007年 10,800
-22.08% ↓
2006年 13,860
40% ↑
2005年 9,900
16.92% ↑
2004年 8,467
-41.2% ↓
2003年 14,400
-15.79% ↓
2002年 17,100
12.91% ↑
2001年 15,144
-5.47% ↓
2000年 16,020
-11.88% ↓
1999年 18,180
-25.74% ↓
1998年 24,480
-22.29% ↓
1997年 31,500
-1.96% ↓
1996年 32,130
2% ↑
1995年 31,500
2.64% ↑
1994年 30,690
3.33% ↑
1993年 29,700
19.57% ↑
1992年 24,840
-6.76% ↓
1991年 26,640
25.42% ↑
1990年 21,240
15.69% ↑
1989年 18,360
-19.05% ↓
1988年 22,680
6.78% ↑
1987年 21,240
22.92% ↑
1986年 17,280 -
1985年 17,280
-4% ↓
1984年 18,000
51.52% ↑
1983年 11,880
-2.94% ↓
1982年 12,240
43.16% ↑
1981年 8,550
-2.06% ↓
1980年 8,730
32.88% ↑
1979年 6,570
55.32% ↑
1978年 4,230
42.42% ↑
1977年 2,970
50% ↑
1976年 1,980
22.22% ↑
1975年 1,620
-10% ↓
1974年 1,800
11.11% ↑
1973年 1,620
16.88% ↑
1972年 1,386
2.67% ↑
1971年 1,350
10.29% ↑
1970年 1,224
172% ↑
1969年 450
8.7% ↑
1968年 414
9.52% ↑
1967年 378
10.53% ↑
1966年 342
3.83% ↑
1965年 329
1.67% ↑
1964年 324
7.14% ↑
1963年 302
1.82% ↑
1962年 297
3.13% ↑
1961年 288 -

UAEの羊肉生産量推移を年代ごとに眺めると、興味深いトレンドが見られます。1961年から1970年にかけて、羊肉の生産量は僅かな増加の後、1970年には約1,224トンと急激な増加を記録しました。この成長の背景には、当時の経済発展が拍車をかけた農業の近代化や農地拡大が挙げられます。その後、1977年以降、同分野における投資や技術導入が進み、1984年には18,000トンというピークを迎えます。この伸びは、人口増加と共に国内の動物性タンパク質需要が大きく高まったことを示しています。

しかし、1990年代後半以降は状況が一変します。1998年には24,480トンであった生産量が、2004年には8,467トンにまで減少しています。この急激な低下の原因は、まず第一に、水資源不足の深刻化が指摘されます。UAEは極度の乾燥地帯であり、過剰放牧と水資源の利用競争が農業全般に悪影響を与えたことが考えられます。また、急速な都市化が進んだ結果、農地が縮小し、持続的な畜産業を維持するのが困難になりました。

さらに、国内生産の減少は輸入依存度の増加を招いています。UAEは羊肉の需要を賄うため、オーストラリアを中心とした輸入に大きく頼っています。輸入を補うことで短期的には供給を安定させることができていますが、輸入依存の高まりは地政学的リスクや貿易紛争、供給チェーンの主導権喪失という課題を伴います。また、新型コロナウイルスのパンデミック時には、物流の停滞が羊肉供給に影響を与えました。このことからも、持続可能な国内生産の重要性が強調されます。

2023年の生産量は3,824トンであり、これは過去数十年と比較すると非常に低い数値です。UAE政府は、食料安全保障政策の強化を掲げていますが、羊肉を含む畜産業においても急務の課題が多く残されています。その一つとして、給水効率を大幅に改善するための新しい農業技術の導入や、耐乾燥性の高い家畜種の開発が挙げられます。さらに、国内の養羊業者への支援を強化し、家畜飼料の自給率を向上させることが鍵となるでしょう。

他国と比較すると、日本はUAEと同じく土地制約から畜産に一定の困難が伴っていますが、小規模効率型の養羊モデルを構築しています。一方、中国やインドは急成長する経済と広大な農地を背景に羊肉生産を増加させています。UAEはこれらの事例を研究し、地域の条件に合った独自のモデルを開発する必要があります。

また、地政学的背景も考慮すべきです。ペルシャ湾地域はエネルギー資源の分布をめぐる国際的な争いの中心地であり、不安定な情勢が社会や産業に影響を与える可能性があります。こうしたリスク管理を組み込んだ長期戦略が重要です。

今後の課題として、UAEは過剰な輸入依存から脱却し、ローカル生産を適度に回復させる必要があります。これには、精密農業やICT技術を活用した生産効率の向上が不可欠です。また、湾岸諸国全体での協力が、資源の有効活用を促進し、持続可能な食料システムを構築するうえで効果的な手段となるでしょう。国際機関と協力した研究開発や人材育成も進めるべき領域です。

結論として、UAEの羊肉生産量推移は、経済・社会・環境要因が相互に影響した結果として一貫性に欠ける動きをしてきました。そのため、現代的な課題に合わせた政策と技術対応を通じて、持続可能で地元密着型の畜産業へと転換する取り組みが求められています。