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アラブ首長国連邦のスイカ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新データによれば、アラブ首長国連邦(UAE)のスイカ生産量は1967年から2023年にかけて大きな変動を見せてきました。1960年代後半から1980年代初頭にかけて生産量は急増したものの、1983年をピークに減少傾向が続き、現在では年間2,500トン前後が安定的に生産されています。この動向から、地域的な農業条件や経済状況、政策変更が生産量に大きな影響を及ぼしていることが伺えます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,580
3.33% ↑
2022年 2,497
-1.23% ↓
2021年 2,528
-9.52% ↓
2020年 2,794
12.71% ↑
2019年 2,479
12.43% ↑
2018年 2,205
98.51% ↑
2017年 1,111
-53.25% ↓
2016年 2,376
22.98% ↑
2015年 1,932
5.52% ↑
2014年 1,831
22.07% ↑
2013年 1,500
-88.16% ↓
2012年 12,664
507.68% ↑
2011年 2,084
-5.23% ↓
2010年 2,199
21.22% ↑
2009年 1,814
139% ↑
2008年 759
-70.05% ↓
2007年 2,534
29.02% ↑
2006年 1,964
-55.92% ↓
2005年 4,456
48.53% ↑
2004年 3,000
32.39% ↑
2003年 2,266
-66.17% ↓
2002年 6,699
18.97% ↑
2001年 5,631
-57.71% ↓
2000年 13,315
8.93% ↑
1999年 12,223
36.57% ↑
1998年 8,950
32.51% ↑
1997年 6,754
63.26% ↑
1996年 4,137
3.24% ↑
1995年 4,007
-1.26% ↓
1994年 4,058
-12.73% ↓
1993年 4,650
22.05% ↑
1992年 3,810
-7.9% ↓
1991年 4,137
-5.4% ↓
1990年 4,373
-18.73% ↓
1989年 5,381
-40.26% ↓
1988年 9,007
-51.39% ↓
1987年 18,528
-25.89% ↓
1986年 25,000
-25.79% ↓
1985年 33,688
-35.07% ↓
1984年 51,887
-26.99% ↓
1983年 71,070
13.93% ↑
1982年 62,378
124.44% ↑
1981年 27,793
8.98% ↑
1980年 25,502
77.13% ↑
1979年 14,397
58.35% ↑
1978年 9,092
142.39% ↑
1977年 3,751
29.34% ↑
1976年 2,900
52.63% ↑
1975年 1,900
81.82% ↑
1974年 1,045
-64.38% ↓
1973年 2,934
32.7% ↑
1972年 2,211
-40.95% ↓
1971年 3,744
-37.6% ↓
1970年 6,000
100% ↑
1969年 3,000
50% ↑
1968年 2,000
100% ↑
1967年 1,000 -

アラブ首長国連邦におけるスイカ生産は、過去数十年において一貫して一定の軌跡を描いてきました。1967年、わずか1,000トンであった生産量は、農業技術の導入やインフラ整備により急速に伸び、1983年には71,070トンというピークに到達しました。しかし、その後は大幅な減少に転じ、1990年代から2020年代にかけては比較的低い水準で推移しています。2023年には2,580トンとなり、近年の数値の平均範囲に収まっています。

このデータを見ると、スイカ生産の推移にはいくつかの重要な要因が絡んでいることが分かります。まず、一つ目の原因として挙げられるのは、UAEの地理的・気候的制約です。UAEは乾燥地帯に位置し、農業に適した水資源が極めて限られています。特に地下水の過剰利用や淡水化プロジェクトのコストが、農業生産全般に圧力をかけていることが考えられます。スイカは水分の多い農作物であることから、他の作物に比べて特に水需要が高く、この地域では生産の優先順位が下がる傾向があります。

また、1983年以降の生産量の減少において、政策転換や社会経済の変化も重要な役割を担っていると考えられます。UAEは石油輸出を基盤とした急速な経済発展を遂げる中で、農業の相対的な優先度が低下しました。加えて、国内人口の増加に対し、食糧供給の多くを輸入に依存する構造が形成され、安価な輸入スイカに圧倒される形で、国内生産が停滞した可能性があります。

コロナウイルスの世界的流行や2022年以降のウクライナ危機など、最近の地政学的リスクもUAEの農業に少なからず影響を及ぼしています。具体的には、国際的な物流問題や輸出入価格の変動が農業関連のコスト上昇を招き、スイカの生産をさらに複雑化させています。

こうした背景を踏まえ、今後の課題と対策について考える必要があります。UAEが持続可能なスイカ生産を維持し、可能であれば拡大を図るためには、革新的な技術や政策の導入が必須です。例えば、持続可能な灌漑技術の拡張、水資源の効率的な利用を支援するオートメーションやAI技術の導入が挙げられます。さらに、生産性を向上させるため、地域農家への技術支援や、作物の多様化を推奨する政策を推進することが考えられます。そのほか、国際間の協力を深化させ、近隣地域との水資源分配や遺伝子改良された耐乾燥性の強いスイカ品種の導入も有効な手段となるでしょう。

観察された長期的な生産低迷からは、環境と経済の融合という持続可能な開発戦略の重要性が示唆されます。政策立案者や国際機関が農業技術の革新に投資することで、限られた水資源の中でも、UAEスイカ生産が再び息を吹き返す未来は現実のものとなるでしょう。また、この取り組みはUAE国内だけでなく、他の砂漠地帯や乾燥気候の地域でも応用が可能であり、他国との協力モデルを構築する好例となるかもしれません。