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アラブ首長国連邦のジャガイモ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アラブ首長国連邦におけるジャガイモ生産量は1975年の280トンから2022年の1,920トンまでの間で、大きな変動を繰り返しています。特に2000年に15,578トンと過去最高を記録しましたが、それ以降は再び減少傾向が続いています。近年では、気候変動や水資源の制限が生産量に大きな影響を与えていると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,288
-32.9% ↓
2022年 1,920
3.6% ↑
2021年 1,853
76.31% ↑
2020年 1,051
-74.93% ↓
2019年 4,193
829.71% ↑
2018年 451
25.63% ↑
2017年 359
-92.62% ↓
2016年 4,862
41.06% ↑
2015年 3,447
277.05% ↑
2014年 914
-66.7% ↓
2013年 2,745
-29.84% ↓
2012年 3,912
-16.55% ↓
2011年 4,688
-20.5% ↓
2010年 5,897
-16.94% ↓
2009年 7,100
0.14% ↑
2008年 7,090 -
2007年 7,090 -
2006年 7,090 -
2005年 7,090 -
2004年 7,090
-0.06% ↓
2003年 7,094
-29.38% ↓
2002年 10,046
-12.61% ↓
2001年 11,496
-26.2% ↓
2000年 15,578
196.39% ↑
1999年 5,256
2.42% ↑
1998年 5,132
-5.57% ↓
1997年 5,435
26.31% ↑
1996年 4,303
28.26% ↑
1995年 3,355
-5.36% ↓
1994年 3,545
88.16% ↑
1993年 1,884
-56.49% ↓
1992年 4,330
38.16% ↑
1991年 3,134
-21.32% ↓
1990年 3,983
-20.96% ↓
1989年 5,039
-8.2% ↓
1988年 5,489
91.19% ↑
1987年 2,871
-4.3% ↓
1986年 3,000
-27.95% ↓
1985年 4,164
4.39% ↑
1984年 3,989
21.5% ↑
1983年 3,283
30.85% ↑
1982年 2,509
53.08% ↑
1981年 1,639
67.76% ↑
1980年 977
-70.99% ↓
1979年 3,368
68.15% ↑
1978年 2,003
163.55% ↑
1977年 760
80.95% ↑
1976年 420
50% ↑
1975年 280 -

ジャガイモ生産量の推移を見ると、アラブ首長国連邦では一貫した増加または減少の傾向は見られず、大きな変動が特徴となっています。1975年から1985年にかけては徐々に増加が見られましたが、1986年以降生産量が安定せず、特に2000年には過去最高となる15,578トンを記録したものの、その後の減少に転じ、2022年の1,920トンは過去に比べ低水準にあります。

この変動には、地政学的要因、気候条件、農業技術の発展度合いが関係していると考えられます。特に、ジャガイモ生産がピークを迎えた2000年頃には、政府の農業振興政策の成果や、新しい灌漑技術の導入が寄与したものと推測されます。一方で、その後の減少に関しては、アラブ首長国連邦特有の乾燥した気候条件と、水資源の不足が大きな要因であると考えられます。ジャガイモは一般的に水を多く必要とする作物であり、淡水資源の制限が厳しい地域では栽培に困難が伴います。

さらに影響を与えた可能性があるのは、グローバルな気候変動とそれに伴う砂漠化の進行です。これらの自然条件の変化は、特に2010年以降の生産量低下と密接に関連していると考えられます。例として、2013年から2014年の急激な減少は、過酷な乾燥条件と農地における塩害の拡大が原因とされています。

また、アラブ首長国連邦では都市開発や工業化が加速しているため、農地面積の増減も注目すべき課題です。特に近年では、都市部への人口集中が進む一方、水と土地資源の有限性が農業部門への影響を顕在化させています。他方、サウジアラビアやエジプトといった地域の近隣国では農業技術や淡水化プラントを活用して比較的安定した生産を維持している点から、アラブ首長国連邦においてもさらなる技術革新が期待されます。

将来的には、持続可能な農業を実現するためにいくつかの具体的な対策が必要です。一つの方向性として、節水型農業技術の導入が挙げられます。これには、水分の使用効率を高めるドリップ灌漑技術や、塩分耐性のあるジャガイモ品種の育成が含まれます。また、都市部で広がりを見せている垂直農法(工場型農業)を採用することで、都市開発と農業生産の両立も可能になると考えられます。さらに、政府や国際機関が連携して農業資源の合理的な配分を進めることが重要です。

地政学的リスクとしては、近隣諸国との水資源争奪が挙げられます。アラブ首長国連邦は地下水や淡水化プラントへの依存が高く、周辺地域の政治的不安定化はこれらの資源供給に影響を与える可能性があります。また、紛争や気候変動により水とエネルギーのコストが高騰することで、ジャガイモをはじめとする農産物生産がより難しくなることが懸念されています。

結論として、データは長期的に見ればアラブ首長国連邦のジャガイモ生産が複雑な課題に直面していることを示しています。持続可能な農業を推進するためには、先端技術の導入と国際的な協力が鍵となります。国際機関が主体となって各国間の技術共有を進めることや、アラブ首長国連邦国内での農業政策強化を通じて、地域の食糧安全保障を確保する取り組みが必要です。