国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アラブ首長国連邦(UAE)のオクラ生産量は、1999年から2023年にかけて大きな変動を示しています。特に、1999年の2,706トンから2005年の8,533トンへの急上昇は際立っており、その後の生産量は減少傾向にあります。近年では、2020年の最低値526トンを底に、2021年から緩やかな回復を見せ、2023年には1,171トンとなりました。
アラブ首長国連邦のオクラ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,171 |
-9.16% ↓
|
2022年 | 1,289 |
36.34% ↑
|
2021年 | 946 |
79.78% ↑
|
2020年 | 526 |
-38.14% ↓
|
2019年 | 850 |
-53.28% ↓
|
2018年 | 1,820 |
31.18% ↑
|
2017年 | 1,387 |
28.46% ↑
|
2016年 | 1,080 |
-35.05% ↓
|
2015年 | 1,663 |
-2.8% ↓
|
2014年 | 1,711 |
2.16% ↑
|
2013年 | 1,674 |
-3.01% ↓
|
2012年 | 1,726 |
9.33% ↑
|
2011年 | 1,579 |
-3.66% ↓
|
2010年 | 1,639 |
15.83% ↑
|
2009年 | 1,415 |
138.22% ↑
|
2008年 | 594 |
-59.12% ↓
|
2007年 | 1,453 |
-9.41% ↓
|
2006年 | 1,604 |
-81.2% ↓
|
2005年 | 8,533 |
509.5% ↑
|
2004年 | 1,400 |
5.9% ↑
|
2003年 | 1,322 |
-32.45% ↓
|
2002年 | 1,957 |
-21.72% ↓
|
2001年 | 2,500 |
42.61% ↑
|
2000年 | 1,753 |
-35.22% ↓
|
1999年 | 2,706 | - |
アラブ首長国連邦は、限られた農業用地と水資源から農産物生産をおこなう国であり、その特徴はオクラの生産量推移にも反映されています。アラビア半島で栽培されるオクラは、国内の需給に応えるために重要な作物であると同時に、地域全体の食糧安全保障にも寄与しています。しかしながら、1999年から2023年にわたる生産データを見ると、全体的に安定的とは言い難い状況が続いていることが分かります。
1999年から2004年の間に1,700トンから2,700トン程度で推移していた生産量は、2005年に劇的に増加し、8,533トンに達しました。この急上昇の原因として、農地開発や生産技術の一時的な改善が考えられます。その一方で、この高水準の生産量は持続されず、2006年以降再び急激に低下し、元の生産水準に戻り、それ以降は大きな成長の兆しを見せていません。2008年には594トンという極めて低い値を記録し、2020年には526トンと同様に最低水準に落ち込みました。
特に2020年における生産量の急減は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行とそれに伴う物流の制約、さらには国内労働力の不足によるものと推測されます。その後、2021年からの回復基調は、パンデミック下での新しい農業政策や外部からの輸入依存解消を目的とした取り組みが功を奏した結果と捉えることができますが、依然として生産量は2005年のピークを大きく下回るレベルに留まっています。
この変動の背景には、水不足や高温気候といった自然条件、そして限られた耕作地の競争的利用といったUAE特有の課題があります。また、国際市場価格の変動や、政策優先度の転換による農業支援策の不安定さも要因として挙げられます。他国の状況と比較すると、生産の大部分を国内消費に依存するUAEのスタイルは、中国やインドのような輸出主導型の大規模農業モデルとは対照的です。
今後、UAEが持続可能なオクラ栽培を続けるためには、水資源の効率的管理と農業技術のさらなる導入が鍵を握ると考えられます。例えば、最新の灌漑技術や、耐乾性を持つオクラ品種の研究開発が一層推進されるべきです。また、周辺諸国との農業協力を拡大し、専門技術や労働力供給を共有することで競争力を高めることも重要です。さらに、クリーンエネルギーを活用した施設園芸のような環境に優しい農業モデルの導入もUAEの抱える制約を克服する有効な方法となり得ます。
結論として、アラブ首長国連邦のオクラ生産の歴史は、自然環境や政策、世界的情勢といった多様な要因により大きな影響を受けており、持続的な発展にはこれらを包括的に考慮した対策が求められます。国際機関や他国と連携し、農業の持続可能性を高める努力を続けることで、食糧自給率の向上と、地域全体の食糧安全保障に寄与する可能性が期待されています。