アラブ首長国連邦の鶏飼養数推移（1961年～2023年）

アラブ首長国連邦（UAE）の鶏飼養数は、1961年のわずか40羽から、2022年の26,282羽まで驚異的に増加しました。この増加は、特に1970年代から1980年代初頭にかけて顕著で、年平均成長率が非常に高いことが特徴的です。その後、成長は徐々に緩やかになるものの、近年も安定的に増加傾向が続いています。このデータは、UAEの経済発展や食糧安全保障、人口成長などの要因との関連性を示しています。

国際連合食糧農業機関（Food and Agriculture Organization）が発表したデータによると、アラブ首長国連邦の鶏飼養数は、1961年の40羽から2022年には26,282羽に急増しました。この増加の背景には、経済成長、都市化、食生活の変化、食糧自給率向上への政策的な取り組みなど多くの要因が絡んでいます。

1960年代から1970年代は、主に伝統的な農業形態による鶏の飼育が主流でした。この時期の飼養数は緩やかに増加していましたが、1979年の736羽から1980年の1,949羽への急上昇を皮切りに、1980年代前半にはさらに飛躍的な成長が見られました。この急増は、UAEの石油経済に支えられた経済成長と結びついており、農業分野への資本投下や技術革新が進んだことが要因と考えられます。また、人口の増加とそれに伴う鶏肉需要の高まりも重要な要素となっています。このような状況は、新興国が経済発展期に一般的に経験する現象とも一致します。

1990年代にかけて、増加のペースはやや鈍化するものの、安定的に成長が継続しました。しかし、1997年から2002年にかけては一時的な減少傾向が見られます。この変動は、おそらく市場の供給過多や輸入鶏製品との競争が激化したこと、さらには地域的な経済変動が影響していた可能性があります。この期間の生産減少は、UAEが国内農業の競争力を強化し、持続可能な形での生産を模索する契機となりました。

2010年以降、飼養数は再び増加傾向に転じ、特に2019年から2022年にかけての年間増加が顕著です。これは、政府の食糧安全保障政策と技術応用の拡大、近年のパンデミックに対応した国内生産能力の強化が影響していると考えられます。新型コロナウイルスの影響で国際貿易が一時的に停滞した際、UAE政府は食料自給力の向上を重要視しました。その結果、鶏飼養セクターへの投資が増え、効率的な生産システムの導入が加速しました。

未来への課題としては、気候変動や水資源の不足、地政学的リスクが挙げられます。UAEは砂漠気候の国であり、鶏の飼育に必要な水や飼料の確保が常に課題となります。また、中東地域はしばしば地政学的な緊張にさらされるため、輸入に依存する資材や飼料の供給が妨げられるリスクもあります。さらに、持続可能な農業の実現と、二酸化炭素排出削減という国際的な責任も重要なテーマです。

これらの課題に対する具体的な対策として、UAE政府と農家は、省エネルギー型の鶏舎の導入、代替飼料の開発、水資源の効率的な利用技術の推進に取り組むべきです。また、地域的な協力体制を築き、隣国や国際機関との情報や資源の共有を進めることも有効です。一方、地元市場だけでなく輸出市場への参入を強化することで、収益構造の多様化とリスク分散を図ることも重要です。

総じて、UAEの鶏飼養産業は、経済成長とともに拡大した成功例の一つと言えるでしょう。今後も持続的かつ効率的な成長を実現していくためには、技術革新と環境への配慮、リスク管理のバランスが求められます。国際的な連携と政策支援を通じてUAEの食糧安全保障のモデルケースを築き上げることが期待されます。