Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、アラブ首長国連邦(UAE)における牛飼養数の推移には、一定期間にわたり増加・減少がみられる特徴があります。特に、1961年の5,000頭から長期的には増加していますが、1975年や2005年には大きな減少が観察され、最近では安定した水準を示しています。2022年の牛飼養数は106,759頭と記録され、過去数年間と同程度の数値を維持しています。
アラブ首長国連邦の牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 106,759 |
2021年 | 104,602 |
2020年 | 103,102 |
2019年 | 100,914 |
2018年 | 103,361 |
2017年 | 106,177 |
2016年 | 108,384 |
2015年 | 110,929 |
2014年 | 89,510 |
2013年 | 85,359 |
2012年 | 78,717 |
2011年 | 88,617 |
2010年 | 100,860 |
2009年 | 103,909 |
2008年 | 65,179 |
2007年 | 61,927 |
2006年 | 58,838 |
2005年 | 55,903 |
2004年 | 100,000 |
2003年 | 113,082 |
2002年 | 107,444 |
2001年 | 101,795 |
2000年 | 96,050 |
1999年 | 90,686 |
1998年 | 84,753 |
1997年 | 79,208 |
1996年 | 74,026 |
1995年 | 69,183 |
1994年 | 64,657 |
1993年 | 60,428 |
1992年 | 56,475 |
1991年 | 52,781 |
1990年 | 49,328 |
1989年 | 46,102 |
1988年 | 46,118 |
1987年 | 44,109 |
1986年 | 41,433 |
1985年 | 35,172 |
1984年 | 32,871 |
1983年 | 31,000 |
1982年 | 28,400 |
1981年 | 26,832 |
1980年 | 25,665 |
1979年 | 25,000 |
1978年 | 23,332 |
1977年 | 18,566 |
1976年 | 15,900 |
1975年 | 28,000 |
1974年 | 38,000 |
1973年 | 33,000 |
1972年 | 23,000 |
1971年 | 20,000 |
1970年 | 15,000 |
1969年 | 12,000 |
1968年 | 10,000 |
1967年 | 8,000 |
1966年 | 6,000 |
1965年 | 6,000 |
1964年 | 5,800 |
1963年 | 5,600 |
1962年 | 5,300 |
1961年 | 5,000 |
アラブ首長国連邦の牛飼養動態は、国家の農業政策、経済状況、地域の気候条件に直結する重要な指標です。このデータは主に国内の食料供給、酪農業、畜産業の発展状況およびその課題を示しています。1961年にわずか5,000頭と小規模で始まった飼養数は、その後急速に増加を見せ、20世紀末には10万頭に達しました。このような増加は、国家の近代化や人口増加に伴う動物性タンパク質の需要拡大、酪農インフラの発展によるものと考えられます。
注目すべきなのは、1975年と2005年における急激な減少です。特に1975年には飼養数が38,000頭から28,000頭に減少し、その後1976年にはさらに15,900頭まで急落しています。この減少は畜産に関連する疫病の流行、輸入飼料や水資源不足、さらには政治的、経済的な問題が影響している可能性があります。同様に2005年も短期間で半減し、55,903頭まで減少しました。この時期は、中東地域における急激な都市化や砂漠化の影響、さらには大規模な畜産・農業構造への移行期が影響を与えた可能性があります。
しかしながら、2010年以降のデータを見ると、UAEの牛飼養数は比較的安定した傾向を示しています。特に2015年の110,929頭をピークに、ほぼ10万頭前後で推移しています。一方で直近の2022年には106,759頭と若干の増加がみられ、国内の畜産業が安定基調にあることを示唆しています。
この動態には、地域特有の課題が影響しています。まず第一に、UAEは半乾燥地域に位置するため、牛の飼養に必要な飼料の多くを輸入に頼らざるを得ない状況にあります。また、水資源の極端な不足や気候変動は、今後の畜産業にとって主要なリスク要素です。さらに、地政学的背景では輸入依存度が高いことから、サプライチェーンの途絶や輸送コストの増加が牛飼養数の変動に影響を与える懸念があります。産業全体の感染症対策や、国際貿易に依存する食料供給システムの強靭化も重要な課題です。
次に対策として提案したいのは、第一に輸入飼料への過度な依存を抑え、地元で適応可能な飼料開発を推進することです。また、脱塩技術による水の有効利用や、乾燥地域向けの飼養技術の普及は、持続可能な畜産業の実現に大きく寄与するでしょう。第二に、地域間協力の強化も有効と考えられます。湾岸諸国で同様の問題を抱える国々と協調し、農業や畜産業関連のノウハウや資源を共有する枠組みを構築することで、リスクを分散できる可能性があります。
結論として、UAEの牛飼養数は長期的には増加を示し、現在では安定した水準を維持していますが、過去には急激な減少や波乱もみられました。これらの変動には、地域的な気候条件や政策、地政学的リスクが大きく影響しています。将来的には、持続可能な水資源や飼料の確保、インフラのさらなる整備が課題となるでしょう。国際機関や近隣諸国と連携した戦略策定が必要であり、それによって食料安全保障の向上や、より安定した畜産業の基盤構築が期待されます。