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ボツワナの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、ボツワナの牛乳生産量は、1961年から1980年代後半にかけて徐々に増加し、1991年にピークの470,754トンを記録しました。しかし、その後は急激に減少する期間と緩やかな増減期が交互に訪れ、2018年以降は再び著しい減少傾向が続き、2023年には27,000トンという歴史的な低水準に至りました。この動きは、国内の社会経済的状況や環境問題、さらには地域や国際的な動向と密接に関連していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 27,000
-87.25% ↓
2022年 211,824
-1.79% ↓
2021年 215,685
21.46% ↑
2020年 177,572
-11.3% ↓
2019年 200,193
-11.85% ↓
2018年 227,110
-1.26% ↓
2017年 230,000
-26.52% ↓
2016年 313,000
-7.8% ↓
2015年 339,480
2.87% ↑
2014年 330,000
-27.99% ↓
2013年 458,249
0.01% ↑
2012年 458,185
0.94% ↑
2011年 453,941
-3.85% ↓
2010年 472,111
5.98% ↑
2009年 445,456
3.91% ↑
2008年 428,680
6.59% ↑
2007年 402,168
0.01% ↑
2006年 402,110
-3.33% ↓
2005年 415,974
1.72% ↑
2004年 408,957
1.75% ↑
2003年 401,943
7.05% ↑
2002年 375,483
-19.15% ↓
2001年 464,447
-1.46% ↓
2000年 471,341
21.54% ↑
1999年 387,815
3.73% ↑
1998年 373,860
-1.81% ↓
1997年 380,758
1.87% ↑
1996年 373,756
-10.02% ↓
1995年 415,398
13.28% ↑
1994年 366,706
17.87% ↑
1993年 311,112
-16.71% ↓
1992年 373,549
-20.65% ↓
1991年 470,754
320.32% ↑
1990年 112,000
4.92% ↑
1989年 106,750
5.17% ↑
1988年 101,500
1.75% ↑
1987年 99,750
1.79% ↑
1986年 98,000
1.82% ↑
1985年 96,250
1.85% ↑
1984年 94,500
-3.57% ↓
1983年 98,000
3.7% ↑
1982年 94,500
3.85% ↑
1981年 91,000 -
1980年 91,000
4% ↑
1979年 87,500
4.17% ↑
1978年 84,000
4.35% ↑
1977年 80,500
6.98% ↑
1976年 75,250
7.5% ↑
1975年 70,000
4.17% ↑
1974年 67,200
-1.54% ↓
1973年 68,250
-1.52% ↓
1972年 69,300
2.06% ↑
1971年 67,900
2.11% ↑
1970年 66,500
2.15% ↑
1969年 65,100
2.2% ↑
1968年 63,700
2.25% ↑
1967年 62,300
2.3% ↑
1966年 60,900
2.35% ↑
1965年 59,500
2.41% ↑
1964年 58,100
2.47% ↑
1963年 56,700
2.53% ↑
1962年 55,300
2.6% ↑
1961年 53,900 -

ボツワナの牛乳生産量の推移を見ると、1960年代から1980年代にかけては持続的に増加していることがわかります。この時期は、国全体で農業基盤の整備が進められたことに加え、牧畜業が主要産業として成長していたことが背景にあります。特に1991年の470,754トンという数値は、この国の牛乳生産がピークを迎えたことを示しています。この当時、牧畜業はボツワナの食料安定化と地方経済の発展において中心的な役割を果たしていました。しかし、それ以降のデータを見ると、牧畜業における状況が大きく変化し、特に2018年以降の急激な減少が顕著です。

1990年代から2000年代にかけての変化には、いくつかの重要な要因が存在します。一つは降水量の不規則性や、気候変動の影響で干ばつが頻発し、家畜の飼育条件が悪化したことです。牧場の劣化や飼料の価格上昇により、牛乳の生産が圧迫されました。さらに、都市部への人口移動や農村地域の過疎化が進み、伝統的な牧畜文化が衰退していく流れも生産の減少に寄与しています。その上、安価な輸入乳製品の台頭により、地元の乳業従事者が経済的なプレッシャーを受けたことも否定できません。

さらに詳しく分析すると、2018年以降の急激な減少は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックとその経済的影響が一因であると考えられます。パンデミックによりサプライチェーンが大幅に混乱し、農村地域では家畜の飼育環境のメンテナンスが困難になりました。2023年に27,000トンという低水準に至った背景には、単なる経済的困難だけでなく、気候変動や社会的不安も絡んでいると見られます。また、2023年時点での生産水準は、ピーク時の1991年と比較して約6%しか残っていないという深刻な事態です。

現在の課題としては、ボツワナ国内の酪農産業が環境的、社会的、経済的な多重リスクに直面している可能性があります。一例として、砂漠化の進行や過放牧による土地の劣化が挙げられます。また、乳業関連のインフラ不足や技術的なサポートの限界も生産量の縮小を助長しているでしょう。このような状況において、政策的な介入が不可欠です。

具体的な提言としては、干ばつ対策の強化を目的とした水資源管理システムの整備や、家畜の餌供給の安定化を図るための輸入飼料の補助などが挙げられます。また、気候変動に強い牧畜技術の普及や、地域に根ざした小規模農家への支援を行い、牧畜業再生を目指すことが重要です。さらに、国内乳業の競争力を高めるため、地元産品のブランド化やマーケティング戦略の強化も検討すべきです。これらの施策を推進するためには、国際機関や近隣諸国との協力も必要となるでしょう。

地政学的な観点では、ボツワナは南部アフリカ全体の食糧供給における役割を果たしているため、牛乳生産量の減少は地域内の食料不安に影響を与える可能性もあります。資源争奪や水利権を巡る交渉においても、今後の対策を強化していく必要があります。

結論として、ボツワナの牛乳生産量の大幅な減少は、国内外の多くの課題の複合的な結果であり、これには環境問題、経済的要因、そして地政学的リスクが絡んでいます。この問題を解決するためには、持続可能な牧畜業のための包括的な戦略が求められます。ボツワナ政府や関連機関は、技術的支援、資源管理、地域協力を強化することで、この産業を立て直すための道筋をつけるべきです。