Skip to main content

ボツワナの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、ボツワナの小麦生産量は過去数十年間に大きな変動を示しています。1960年代には400トン台で安定していたものの、1980年代にかけて緩やかに増加し、1981年に1,000トンに到達しました。しかし、それ以降は気候変動や農業インフラの課題による影響で変動が大きく、2007年には72トンと大幅に減少しました。近年では1,000トンを超える高水準を示す年が増えており、2021年には1,280トンまで回復しました。

年度 生産量(トン)
2022年 947
2021年 1,280
2020年 1,028
2019年 377
2018年 1,212
2008年 104
2007年 72
2006年 187
2005年 217
2004年 260
2003年 294
2002年 336
2001年 550
2000年 435
1999年 488
1998年 500
1997年 625
1996年 702
1995年 900
1994年 1,000
1993年 876
1992年 500
1991年 1,500
1990年 1,000
1989年 1,000
1988年 1,000
1987年 1,000
1986年 1,000
1985年 1,000
1984年 1,000
1983年 1,000
1982年 1,000
1981年 1,000
1980年 600
1979年 600
1978年 600
1977年 600
1976年 570
1975年 550
1974年 550
1973年 517
1972年 500
1971年 500
1970年 360
1969年 671
1968年 453
1967年 450
1966年 450
1965年 400
1964年 400
1963年 400
1962年 400
1961年 400

ボツワナの小麦生産量は、1960年代には年間400トン前後で安定していたものの、1970年代後半から1980年代初頭にかけて徐々に増加しました。この成長は農業技術の導入や生産効率の向上といった工夫によるものと考えられます。1981年にはついに1,000トンに達し、この数値を1980年代にわたり維持することができました。しかし1990年代以降、気候の不安定さや降水量の減少、農業分野への投資不足など、環境上および経済上の理由が累積し、生産量は再び下降傾向を示しました。2007年には記録的に低い72トンとなり、国全体として農業の持続可能性が問われる局面を迎えました。

近年では、徐々に小麦生産量が持ち直しており、特に2021年には1,280トンの生産量を記録しました。この背景には、政府および国際機関による農業支援プログラムや灌漑インフラの整備が挙げられます。ただし、2022年には947トンへと減少するなど、小麦生産量には依然として年ごとの変動が見られます。これは、依然としてボツワナの農業が雨水や天候条件に強く依存しているためであり、安定的な生産となるための持続可能な施策が求められています。

ボツワナの状況を周辺国や世界的観点から見た場合、同じ南部アフリカの隣国南アフリカは、比較的大きな農業基盤を有し、小麦生産において安定的な輸出国ともなっています。これに比べると、ボツワナは国内自給を目指す中で、生産と需要のバランスに苦慮している様子がうかがえます。また、同様に降水量が少ない中東や北アフリカ諸国では、灌漑技術や気候適応型農業の導入に力を入れており、これらの国々の成功事例をボツワナへ移植する可能性も考えられます。

ボツワナの農業セクターが抱える課題の一つとして、砂漠気候の地域的特性が挙げられます。降水量の不安定さにより生産量が左右されるため、より耐乾旱性の強い小麦品種の導入や、地下水資源を利用した灌漑技術の強化が必要です。さらに、小規模農家への技術支援や金融政策による資金援助が求められる場面も増加しています。

また、地政学的な視点を加えると、小麦などの食糧自給戦略における課題は他国からの輸入依存と密接に関連しています。特に新型コロナウイルス感染症による国際物流の停滞は、ボツワナのような輸入依存型の国々への供給に影響を及ぼしました。これを受けて、国内小麦生産の拡大による供給源の多様化は重要性を増すと考えられます。

結論として、ボツワナが今後安定的かつ持続可能な小麦生産体制を築くためには、技術革新への投資や財政的支援の強化が必要不可欠です。国連や地域連合といった国際機関の協力を得ながら、大規模な灌漑設備の導入や環境適応型農業の発展を促進することで、ボツワナ国民の食糧安全保障がより確保されることが期待されます。