国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ボツワナの羊肉生産量は1961年の490トンから長期的に増加傾向を示していましたが、大きな変動も見られています。特に1997年の2,030トン、1998年の2,170トンが過去のピークで、その後は減少と回復を繰り返しています。直近の2023年には1,483トンとなり、2022年の急激な低下(744トン)から部分的に回復しています。この動向には気候変動、疾病、地域的な環境問題が関連している可能性があります。
ボツワナの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,483 |
99.27% ↑
|
2022年 | 744 |
-21.85% ↓
|
2021年 | 952 |
-29.85% ↓
|
2020年 | 1,358 |
-8.88% ↓
|
2019年 | 1,490 |
1.33% ↑
|
2018年 | 1,470 |
5.03% ↑
|
2017年 | 1,400 |
-6.04% ↓
|
2016年 | 1,490 |
-3.25% ↓
|
2015年 | 1,540 |
5.41% ↑
|
2014年 | 1,461 |
-18.12% ↓
|
2013年 | 1,784 |
-4.9% ↓
|
2012年 | 1,876 |
1.52% ↑
|
2011年 | 1,848 |
1.54% ↑
|
2010年 | 1,820 |
1.17% ↑
|
2009年 | 1,799 |
-8.21% ↓
|
2008年 | 1,960 |
8.53% ↑
|
2007年 | 1,806 | - |
2006年 | 1,806 |
12.17% ↑
|
2005年 | 1,610 |
9.52% ↑
|
2004年 | 1,470 |
10.53% ↑
|
2003年 | 1,330 |
-13.64% ↓
|
2002年 | 1,540 |
-8.33% ↓
|
2001年 | 1,680 |
-7.69% ↓
|
2000年 | 1,820 |
-13.33% ↓
|
1999年 | 2,100 |
-3.23% ↓
|
1998年 | 2,170 |
6.9% ↑
|
1997年 | 2,030 |
26.09% ↑
|
1996年 | 1,610 |
4.55% ↑
|
1995年 | 1,540 |
27.91% ↑
|
1994年 | 1,204 |
6.17% ↑
|
1993年 | 1,134 |
-14.74% ↓
|
1992年 | 1,330 |
-12.04% ↓
|
1991年 | 1,512 |
5.88% ↑
|
1990年 | 1,428 |
10.87% ↑
|
1989年 | 1,288 |
8.24% ↑
|
1988年 | 1,190 |
6.25% ↑
|
1987年 | 1,120 |
6.67% ↑
|
1986年 | 1,050 |
13.64% ↑
|
1985年 | 924 |
17.86% ↑
|
1984年 | 784 |
3.7% ↑
|
1983年 | 756 |
17.39% ↑
|
1982年 | 644 |
32.95% ↑
|
1981年 | 484 |
-23.79% ↓
|
1980年 | 636 |
16.41% ↑
|
1979年 | 546 |
-2.5% ↓
|
1978年 | 560 |
-4.76% ↓
|
1977年 | 588 |
-12.5% ↓
|
1976年 | 672 |
-14.29% ↓
|
1975年 | 784 |
-20% ↓
|
1974年 | 980 |
-5.41% ↓
|
1973年 | 1,036 |
2.31% ↑
|
1972年 | 1,013 |
2.82% ↑
|
1971年 | 985 |
0.49% ↑
|
1970年 | 980 | - |
1969年 | 980 |
7.69% ↑
|
1968年 | 910 |
8.33% ↑
|
1967年 | 840 |
9.09% ↑
|
1966年 | 770 |
22.22% ↑
|
1965年 | 630 |
-2.17% ↓
|
1964年 | 644 |
2.22% ↑
|
1963年 | 630 |
12.5% ↑
|
1962年 | 560 |
14.29% ↑
|
1961年 | 490 | - |
1961年の時点でのボツワナの羊肉生産量は490トンと、農業国としてのボツワナにとっては小規模なものでした。その後、技術の発展や牧畜業の普及に伴い、生産量は着実に増加し、1990年ごろには1,428トンに達しています。1997年から1998年にかけては、過去最高の2,170トンを記録し、ボツワナの羊肉産業が大きく発展した時期といえます。しかし、それ以降は一貫した増加は見られず、1,000~2,000トン台での波動的な推移が続いています。
ここで注目すべき点は、2010年代後半からの急激な減少傾向です。2020年の1,358トンからさらに2021年には952トン、2022年には744トンと大幅に落ち込みました。この急激な減少は、干ばつや他の気候要因に加え、羊への疫病の流行、さらには羊肉需要の世界的な変化が影響を及ぼした可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、物流や国際市場での取引が混乱したことも一因と考えられます。一方、2023年には1,483トンにまで回復しており、一定の持続可能な対策が講じられた可能性があります。
ボツワナの羊肉産業は、同地域の乾燥した気候条件のもとで策定された持続可能な農業政策に依存しています。しかし、近年の気候変動の影響が深刻化し、降水量の減少や水資源の枯渇が牧草地の生産性低下につながっているという課題が見受けられます。また、ボツワナは地域内で家畜市場をリードする地位にありながら、南アフリカなど隣接諸国との競争が影響しています。他の主要国(たとえばアメリカやオーストラリア)と比較すると、効率的な大規模生産への転換が遅れる点が課題とされています。
今後、この国の羊肉生産を安定化させるためには、いくつかの方策が考えられます。一つは、牧草地の管理強化や灌漑技術の改善による生産環境の安定化です。また、家畜の疫病対策としてワクチンプログラムを拡充し、感染症流行による大規模損失を未然に防ぐ取り組みが必要です。さらに、地域間協力を強化し、サプライチェーン中のボトルネック解消を図ることも有効です。特に、南部アフリカ開発共同体(SADC)の枠組みを活用した共同事業や輸出促進プログラムが期待されます。
結論として、ボツワナの羊肉産業は過去のデータが示すように重要な側面を持ちながらも、気候変動、疾病、国際市場の変化など複数の課題に直面しています。これらの問題を解決するためには、持続可能な牧畜管理や疫病対策、地域的な競争力強化など多岐にわたる取り組みが求められます。国際的な支援や技術交流も含めて、ボツワナが地域経済の重要な柱として羊肉生産を維持・発展させる道筋を模索することが必要です。