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ボツワナの羊飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ボツワナの羊飼養数は1961年から急速な増加を開始し、1972年には40万匹を超えました。しかし、その後は干ばつや環境変化の影響もあり、波のある増減を経て、2020年代に入り急激な減少傾向を示しています。直近の2022年には13万3502匹と、ピーク時の1971年の約40%程度にまで減少しました。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 239,693
79.54% ↑
2022年 133,502
-20.56% ↓
2021年 168,060
-28.71% ↓
2020年 235,743
-2.95% ↓
2019年 242,911
1.92% ↑
2018年 238,340
1.59% ↑
2017年 234,621
-2.13% ↓
2016年 239,715
-1.12% ↓
2015年 242,432
6.68% ↑
2014年 227,247
-17.17% ↓
2013年 274,357
-6.67% ↓
2012年 293,966
-0.65% ↓
2011年 295,894
5.97% ↑
2010年 279,237
-4.83% ↓
2009年 293,395
-3.25% ↓
2008年 303,238
19.86% ↑
2007年 252,992
48.82% ↑
2006年 170,000
3.03% ↑
2005年 165,000
13.79% ↑
2004年 145,000
-34.09% ↓
2003年 220,000
-19.41% ↓
2002年 273,000
-10.78% ↓
2001年 306,000
-7.27% ↓
2000年 330,000
-10.57% ↓
1999年 369,000
-6.11% ↓
1998年 393,000
-3.91% ↓
1997年 409,000
17.19% ↑
1996年 349,000
3.56% ↑
1995年 337,000
41.6% ↑
1994年 238,000
-4.84% ↓
1993年 250,100
-16.63% ↓
1992年 300,000
-14.04% ↓
1991年 349,000
10.13% ↑
1990年 316,900
10.92% ↑
1989年 285,700
10.35% ↑
1988年 258,900
7.74% ↑
1987年 240,300
4.93% ↑
1986年 229,000
14.67% ↑
1985年 199,700
19.44% ↑
1984年 167,200
1.52% ↑
1983年 164,700
17.64% ↑
1982年 140,000
0.21% ↑
1981年 139,700
-5.93% ↓
1980年 148,500
-2.3% ↓
1979年 152,000
41.4% ↑
1978年 107,500
-36.76% ↓
1977年 170,000
-29.17% ↓
1976年 240,000
-14.29% ↓
1975年 280,000
-20% ↓
1974年 350,000
6.71% ↑
1973年 328,000
-18.34% ↓
1972年 401,654
2.54% ↑
1971年 391,715
22.41% ↑
1970年 320,000
14.77% ↑
1969年 278,830
20.53% ↑
1968年 231,336
9.24% ↑
1967年 211,764
40.12% ↑
1966年 151,133
20.58% ↑
1965年 125,335
-8.41% ↓
1964年 136,847
7.33% ↑
1963年 127,500
14.33% ↑
1962年 111,524
15.98% ↑
1961年 96,160 -

ボツワナでは、羊の飼養は農村部の生活基盤として重要な役割を果たしています。特に肉や乳製品、生計の確保において羊の存在は欠かせません。データによれば、1961年から1972年にかけ急速な増加が見られ、この背景には農村部での人口増加や農業生産力の向上が影響を及ぼしたと考えられます。加えて、羊肉の需要も一定の経済発展と共に拡大していった可能性があります。一方で、1972年以降は干ばつや土地利用の変化、疫病の発生など環境要因により、飼養数は何度か大きな減少を経験しました。特に1977年から1978年の急激な減少や、近年の2021年からの急低下は特筆すべき現象と言えます。

1977年から1978年の大きな減少は、複数の農業レポートで指摘されているように、アフリカ南部全体を襲った大干ばつによるものと推測されます。この時期、家畜の飼料や水の不足が深刻であったため、羊の生存率が大きく低下していたとされています。また、2004年頃に見られる再びの急落も、局地的な疫病の発生や市場条件の悪化が要因であった可能性が考えられます。

2021年以降の飼養数減少は、パンデミック以降の経済的混乱や、気候変動による極端な天候パターンの影響が指摘されています。この時期には、燃料価格の上昇や、輸出市場の混乱が羊の飼育コストを押し上げ、多くの農家が採算の合わない羊の飼養を縮小または停止した可能性があります。

ボツワナに特有の地政学的な背景として、南部アフリカでの水資源の争奪や、隣国との交易関係の変化も見逃せません。羊の飼養には十分な水と牧草地の確保が欠かせませんが、ボツワナではこれらの資源が他分野、たとえば鉱業や都市用水の使用で優先される傾向もあります。また、地域的な貿易摩擦や炭疽病の伝播リスクにより、国際市場へのアクセスも定期的に制約されています。

このような状況を踏まえると、羊産業の未来にはいくつかの課題が挙げられます。主なものとして、第一に気候変動に対処する農業政策の重要性です。たとえば、乾燥に強い牧草の植え付けや、効率的な灌漑システムの導入が有効です。第二に、疫病監視体制の強化が急務です。近年再発している炭疽病リスクに対し、家畜ワクチン接種や早期発見システムを普及することで、重大な損害を防ぐことができます。第三に、地域間協力の強化により、農産物貿易を円滑化し市場アクセスを維持することです。南部アフリカ諸国との輸送インフラ整備や規制調整も、ボツワナの羊産業にとって有益です。

結論として、ボツワナの羊飼養数の減少には気候変動や疫病、経済状況が複雑に絡み合っています。ただし、対策を講じることで、この下落傾向を反転させることも不可能ではありません。政府や国際機関、農家が一丸となり、効率的かつ持続可能な飼養環境の構築に努めるべきでしょう。これにより、羊産業をボツワナの重要な経済基盤として再活性化させることが期待されます。