Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、ボツワナの鶏卵生産量は、1961年の192トンから2023年の3,510トンへと長期的な増加傾向を示しています。ただし、大きな変動も見られ、特に1992年や2015年などには大幅に減少した年があります。直近では2020年頃から微減の傾向が見られています。
ボツワナの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 3,510 |
-1.13% ↓
|
2022年 | 3,550 |
-0.84% ↓
|
2021年 | 3,580 |
5.29% ↑
|
2020年 | 3,400 |
-7.36% ↓
|
2019年 | 3,670 | - |
2018年 | 3,670 |
28.32% ↑
|
2017年 | 2,860 |
-24.74% ↓
|
2016年 | 3,800 |
18.75% ↑
|
2015年 | 3,200 |
-28.89% ↓
|
2014年 | 4,500 |
-4.26% ↓
|
2013年 | 4,700 |
2.17% ↑
|
2012年 | 4,600 |
2.22% ↑
|
2011年 | 4,500 | - |
2010年 | 4,500 |
5.53% ↑
|
2009年 | 4,264 |
-5.24% ↓
|
2008年 | 4,500 |
-10% ↓
|
2007年 | 5,000 |
5.71% ↑
|
2006年 | 4,730 |
12.62% ↑
|
2005年 | 4,200 |
2.44% ↑
|
2004年 | 4,100 |
2.5% ↑
|
2003年 | 4,000 |
3.9% ↑
|
2002年 | 3,850 |
5.48% ↑
|
2001年 | 3,650 |
14.06% ↑
|
2000年 | 3,200 |
16.36% ↑
|
1999年 | 2,750 |
19.57% ↑
|
1998年 | 2,300 |
24.32% ↑
|
1997年 | 1,850 |
42.31% ↑
|
1996年 | 1,300 |
-55.93% ↓
|
1995年 | 2,950 |
59.46% ↑
|
1994年 | 1,850 |
85% ↑
|
1993年 | 1,000 |
-31.03% ↓
|
1992年 | 1,450 |
-27.5% ↓
|
1991年 | 2,000 |
2.56% ↑
|
1990年 | 1,950 |
8.33% ↑
|
1989年 | 1,800 |
9.09% ↑
|
1988年 | 1,650 |
43.48% ↑
|
1987年 | 1,150 |
9.52% ↑
|
1986年 | 1,050 |
16.67% ↑
|
1985年 | 900 |
36.99% ↑
|
1984年 | 657 |
-23.96% ↓
|
1983年 | 864 |
-15.79% ↓
|
1982年 | 1,026 |
9.62% ↑
|
1981年 | 936 |
23.81% ↑
|
1980年 | 756 |
13.51% ↑
|
1979年 | 666 |
-5.13% ↓
|
1978年 | 702 |
11.43% ↑
|
1977年 | 630 |
7.69% ↑
|
1976年 | 585 |
8.33% ↑
|
1975年 | 540 |
15.38% ↑
|
1974年 | 468 |
8.33% ↑
|
1973年 | 432 |
-2.44% ↓
|
1972年 | 443 |
106.43% ↑
|
1971年 | 215 |
-44.6% ↓
|
1970年 | 387 |
24.89% ↑
|
1969年 | 310 |
-18.69% ↓
|
1968年 | 381 |
5.76% ↑
|
1967年 | 361 |
8.45% ↑
|
1966年 | 332 |
9.26% ↑
|
1965年 | 304 |
10.17% ↑
|
1964年 | 276 |
11.36% ↑
|
1963年 | 248 |
12.77% ↑
|
1962年 | 220 |
14.66% ↑
|
1961年 | 192 | - |
ボツワナにおける鶏卵生産の推移データは、農業経済や国内の食糧安全保障政策における重要な指標を提供しています。鶏卵は栄養価が高く、ボツワナのような発展途上国において安価で重要な蛋白源とされており、国内での供給状況は自給自足率や食品輸入依存度とも深く関わっています。
このデータを俯瞰すると、1960年代から1980年代初頭にかけては緩やかな成長を見せており、その後1988年から1991年の期間に急成長を遂げたことが確認できます。この時期、1,650トンから2,000トンへと到達したことにより、国内の生産能力が拡大した可能性が示唆されます。これは農業従事者の事業規模の拡大や地域インフラの改善、政府の農業支援策などが影響を与えた結果と考えられます。しかし1992年には1,450トンへと急減しており、その原因としては干ばつや家畜疫病の発生、生産コストの上昇といった外的要因が考えられます。
1995年の2,950トンの後、2003年から2007年にかけては4,000トン以上の安定した生産量が続き、国内消費需要を満たすという点で大きな飛躍を遂げています。一方で2008年には4,500トンから4,264トンへと減少に転じており、リーマンショック後の経済不況や輸入飼料価格の上昇の影響も無視できません。このような波もありながらも2013年頃まで4,500トン前後で推移していたものの、2015年には3,200トンまで急激に低下し、それ以降は回復基調を見せながらも安定した成長は見られません。2023年時点では3,510トンと減少傾向から脱しきれない状況が続いています。
また、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響も無視できません。2020年以降の鶏卵生産量の減少は、ロックダウンに伴う物流の遅延や食品需要の変動、農業活動の制限といった影響が複合的に作用した結果と考えられます。
ボツワナでは、地政学的にも重要な輸入依存度が課題とされています。多くの農産物を他国から輸入に頼る現状は、隣国南アフリカの経済的変動や地域紛争のリスクにさらされています。特に飼料や需要の多い農業資材が他国依存であることは、国内の生産安定に影を落としています。持続可能な生産システムを確立するためには、地元での飼料生産拡大や農業技術の改善、人材育成が必要不可欠です。
今後、ボツワナが安定した鶏卵生産を目指すためには、複数の課題への対応が求められます。短期的には、政府補助金や助成金を通じた農家支援や、国内での飼料製造業の促進が有効でしょう。長期的には、気候変動の影響に適応した農業技術の普及や地域間の農業協力を強化する枠組みが必要になります。具体的には、多国間での資源や技術の共有、例えば南部アフリカ開発共同体(SADC)の枠組みを利用して、農業の持続可能な発展を図ることが効果的です。
結論として、ボツワナの鶏卵生産量は過去数十年にわたって大幅に向上しましたが、地政学的リスクや気候変動、疫病などの外的要因による変動リスクも大きい現状にあります。持続可能な生産体制の構築と、国際協力を強化する戦略的アプローチが求められるでしょう。これにより、国内消費の安定だけでなく、将来的な輸出産業としての発展も視野に入れるべきです。