FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、ボツワナの牛乳生産量は1961年に55,400トンで始まり、1980年代まで安定的に増加しました。しかし、1991年以降に極端な変動が見られ、2010年台以降は顕著に減少しています。2022年には222,938トンとなり、ピーク時(1991年の486,597トン)と比較すると大幅な下降傾向を示しています。
ボツワナの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 222,938 |
2021年 | 227,111 |
2020年 | 189,094 |
2019年 | 211,647 |
2018年 | 238,823 |
2017年 | 241,883 |
2016年 | 325,625 |
2015年 | 351,317 |
2014年 | 344,026 |
2013年 | 476,456 |
2012年 | 476,302 |
2011年 | 471,897 |
2010年 | 487,760 |
2009年 | 462,861 |
2008年 | 444,027 |
2007年 | 419,480 |
2006年 | 419,331 |
2005年 | 430,100 |
2004年 | 421,180 |
2003年 | 413,184 |
2002年 | 388,185 |
2001年 | 478,097 |
2000年 | 486,725 |
1999年 | 401,930 |
1998年 | 389,355 |
1997年 | 398,045 |
1996年 | 389,247 |
1995年 | 432,681 |
1994年 | 381,736 |
1993年 | 326,048 |
1992年 | 388,941 |
1991年 | 486,597 |
1990年 | 115,350 |
1989年 | 110,050 |
1988年 | 104,750 |
1987年 | 102,950 |
1986年 | 101,125 |
1985年 | 99,325 |
1984年 | 97,500 |
1983年 | 100,925 |
1982年 | 97,375 |
1981年 | 93,825 |
1980年 | 93,750 |
1979年 | 90,175 |
1978年 | 86,625 |
1977年 | 83,075 |
1976年 | 77,750 |
1975年 | 72,425 |
1974年 | 69,575 |
1973年 | 70,575 |
1972年 | 71,550 |
1971年 | 70,050 |
1970年 | 68,575 |
1969年 | 67,100 |
1968年 | 65,625 |
1967年 | 64,175 |
1966年 | 62,700 |
1965年 | 61,250 |
1964年 | 59,775 |
1963年 | 58,325 |
1962年 | 56,850 |
1961年 | 55,400 |
ボツワナの牛乳生産量の推移を振り返ると、1960年代から1980年代にかけては持続的な成長を遂げ、特に1970年代後半には急激な拡大が見られます。これは、当時の畜産業の発展や農業技術の向上、国際市場での食料需要の増加に伴う生産拡大の取り組みによると言えます。その後、1991年には過去最高の486,597トンを記録しましたが、同年以降、生産量は突如として大小の変動を繰り返し、2020年代には急激な減少が目立つようになります。
この大きな変動の背景には複数の要因が考えられます。一つは、ボツワナ特有の地理的・気候的条件です。ボツワナは半乾燥地帯に属し、降水量が少なく、特に旱魃(かんばつ)の影響が生産に大きく影響します。特に2010年代後半以降、気候変動の影響が深刻化し、不規則な降水パターンや水資源の不足が、牛乳生産の大幅な低下につながった可能性があります。また、畜産物の競争力を削ぐような病気の蔓延や、飼料コストの上昇なども要因と考えられます。
さらに、経済的・社会的要素も重要です。ボツワナは資源採掘業、特にダイヤモンド産業を経済の中心としており、農業や畜産業への重点的な投資が遅れている可能性があります。また、他国との比較では、例えばインドが持つ乳牛飼育の長い伝統や、アメリカや中国が進めるハイテク農業とは異なり、ボツワナの畜産業は比較的規模が小さく、効率性の面で課題が残されているように見受けられます。さらに、新型コロナウイルス感染症が及ぼした経済的混乱や物流の停滞も、生産量のさらなる低下を後押しした可能性があります。
課題としてまず挙げられるのは、気候変動とそれに関連する水資源の管理です。旱魃や水不足が繰り返し発生すれば、牛の生産性は直接的に影響を受けます。次に、飼料価格の高騰や病気など、畜産に必要な環境を安定化させるための国策が欠如している点も問題です。現状では、生産を支える機械化や近代的酪農技術の十分な導入が遅れています。
これらを改善する具体的な対策として、まず気候変動への適応を進める政策が求められます。例えば、乾燥地でも耐えうる牛種の育成や、効率的な水利用が挙げられるでしょう。また、牧草の生産を安定させるために、灌漑技術の普及や自然エネルギーを活用した地下水の汲み上げシステムを取り入れることも有効です。さらに、国際的な支援プログラムや地域間協力による技術移転を通じて、先進国の知見を積極的に取り入れるべきです。
ボツワナにおける牛乳生産の停滞は、畜産業の持続可能性のみならず、食料安全保障や輸出産業の発展にも影響を及ぼす可能性があります。しかし、適切な政策と国際協力を推進することで、将来的な回復と成長の可能性は十分に残されています。これを実現するためには、政府による長期的な戦略と、それを支える国際的な支援体制の構築が不可欠です。