国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ガボンの牛乳生産量は1960年代から2023年にかけて大きな変動を見せています。1961年には105トンであった生産量は、1990年代初頭に急速な増加を示し、2007年には13,000トンを超える水準に到達しました。さらに2015年には約14,150トンとピークを迎えましたが、それ以降は一時的な減少を経験し、直近の2023年では10,745トンとなっています。この傾向から、ガボンの生乳生産量には特定の社会的・経済的要因が大きく影響していることがうかがえます。
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ガボンの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 10,745 |
0.55% ↑
|
2022年 | 10,686 |
0.39% ↑
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2021年 | 10,644 |
0.4% ↑
|
2020年 | 10,602 |
0.52% ↑
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2019年 | 10,548 |
-0.19% ↓
|
2018年 | 10,568 |
-24.51% ↓
|
2017年 | 14,000 |
1.08% ↑
|
2016年 | 13,850 |
-2.12% ↓
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2015年 | 14,150 |
1.07% ↑
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2014年 | 14,000 |
1.03% ↑
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2013年 | 13,857 |
2.07% ↑
|
2012年 | 13,577 |
2.11% ↑
|
2011年 | 13,297 |
0.01% ↑
|
2010年 | 13,295 |
1.07% ↑
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2009年 | 13,154 |
0.01% ↑
|
2008年 | 13,152 |
1.08% ↑
|
2007年 | 13,011 |
27.54% ↑
|
2006年 | 10,201 |
0.06% ↑
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2005年 | 10,195 |
0.06% ↑
|
2004年 | 10,188 |
0.06% ↑
|
2003年 | 10,182 |
-2.06% ↓
|
2002年 | 10,396 |
0.06% ↑
|
2001年 | 10,389 |
0.06% ↑
|
2000年 | 10,382 |
19.44% ↑
|
1999年 | 8,693 |
1.64% ↑
|
1998年 | 8,553 |
3.37% ↑
|
1997年 | 8,274 |
1.72% ↑
|
1996年 | 8,134 |
-24.57% ↓
|
1995年 | 10,784 |
37.28% ↑
|
1994年 | 7,855 |
1.81% ↑
|
1993年 | 7,716 |
1.84% ↑
|
1992年 | 7,576 |
7.9% ↑
|
1991年 | 7,021 |
602.14% ↑
|
1990年 | 1,000 |
17.65% ↑
|
1989年 | 850 |
-3.95% ↓
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1988年 | 885 |
12.74% ↑
|
1987年 | 785 |
12.95% ↑
|
1986年 | 695 |
69.51% ↑
|
1985年 | 410 |
76.34% ↑
|
1984年 | 233 |
9.41% ↑
|
1983年 | 213 |
-8.6% ↓
|
1982年 | 233 |
14.81% ↑
|
1981年 | 203 |
14.89% ↑
|
1980年 | 176 |
17.5% ↑
|
1979年 | 150 |
25% ↑
|
1978年 | 120 |
3.23% ↑
|
1977年 | 116 |
3.33% ↑
|
1976年 | 113 |
20% ↑
|
1975年 | 94 |
-16.67% ↓
|
1974年 | 113 |
-25% ↓
|
1973年 | 150 |
-11.11% ↓
|
1972年 | 169 |
36.36% ↑
|
1971年 | 124 |
59.68% ↑
|
1970年 | 78 |
-35.42% ↓
|
1969年 | 120 |
-20% ↓
|
1968年 | 150 | - |
1967年 | 150 | - |
1966年 | 150 |
11.11% ↑
|
1965年 | 135 |
20% ↑
|
1964年 | 113 |
7.14% ↑
|
1963年 | 105 |
-15.15% ↓
|
1962年 | 124 |
17.86% ↑
|
1961年 | 105 | - |
ガボンの牛乳生産量データを見ると、近年までの推移は国としての農産業発展や経済変革を反映していると考えられます。1960年代から1980年代までは生産量が総じて低く、特殊な年を除けば概ね数百トン程度に留まっていました。しかし、1990年代から2000年代初頭にかけては急激な伸びを示し、2000年代後半以降は1万トンを超える水準が続いています。このような劇的な増加は、ガボンにおける農業生産の効率向上や畜産業への政策的支援の成功を示すものと考えられます。
1991年の生産量急増(7,021トン)を皮切りに、その後の10年で生乳生産は飛躍的に伸びています。この背景には、ガボン政府による農村部支援の拡大や小規模酪農業の推進があると指摘されています。また、1990年代はガボンが石油産業に依存していた経済構造から一部の多様化を図り、農業にも投資を集中させた時期でした。その結果、畜産業に必要なインフラ整備や技術普及が進み、酪農業者の収益性が向上し始めたと考えられます。
一方で、2007年以降の成長が鈍化し、2018年には一時的に10,568トンまで減少した点には注目が必要です。この低迷は、ガボンが直面しているいくつかの課題によるものです。一例として、気候変動の影響や地域ごとの極端な気象条件があります。酪農業はとりわけ水や飼料の供給に依存するため、干ばつや豪雨などの自然災害が牛乳生産量に深刻な影響を与えることがあります。また、経済的な不安定さや政治的な動揺が農産業従事者への投資や支援の断続に繋がり、生産の質や規模に悪影響を及ぼした可能性があります。
さらに、このような内的要因に加え、外的要因も無視できません。他国との貿易構造変化や地域間競争力の低下は、牛乳の輸入増加や国内市場の需要との不整合を生み、地元生産者が競争力を失う結果を招く危険があります。たとえば、南アフリカやケニアでは近代的な生産技術や設備を導入した大規模酪農産業が成長しており、これらの国々との競争がガボンの市場に影響を及ぼしていると推測されます。
現在の年産10,745トンという数字は、かつての成長率に比べ緩やかな伸びであるものの、一定の安定傾向を見せています。これを活かしながら持続可能な生産を確保するためには、いくつかの取り組みが重要です。第一に、気候変動に対する適応策として地域適応型の酪農技術を導入し、持続可能な水・飼料管理システムの構築を進めるべきです。また、小規模酪農家を対象とした教育や研修プログラムを充実させることも、生産性向上に寄与するでしょう。さらに、輸出市場へのアクセス拡大のために、製品の品質管理や衛生基準を国際基準と整合させる努力が必要です。
一方で、地政学的なリスクも見逃せません。ガボンを含む中部アフリカ諸国では、資源争奪による地域紛争や政治的緊張が酪農セクターを含む農業全般に波及する可能性があります。これが生産基盤の不安定化を引き起こす恐れがあるため、国際的な関係者間での協力体制を強化し、安定した環境づくりが急務です。
結論として、ガボンの牛乳生産は過去数十年で飛躍的な進展を遂げており、現在も比較的安定した水準を維持していることがわかります。しかしながら、気候変動や農業技術の近代化、地域間競争など、直面する課題は依然として大きいです。持続可能な農業を推進するためには、政府による長期的な政策支援や国際的な技術協力が不可欠です。