国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、サモアの牛乳生産量は、1961年から2023年の間に一貫した増減を繰り返しながら、近年では減少傾向が見られます。1960年代には700トン前後だった牛乳生産量が、1980年代以降に1,000トンを越え、その後徐々に増加して2015年には1,971トンへと拡大しました。しかし、2015年以降は減少に転じ、2023年には1,618トンとなっています。この推移は、地域や経済環境の変化、気候の影響、輸出入政策の問題が絡んでいる可能性があります。
サモアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,618 |
-2.6% ↓
|
2022年 | 1,661 |
-1.21% ↓
|
2021年 | 1,682 |
12.15% ↑
|
2020年 | 1,499 |
-3.09% ↓
|
2019年 | 1,547 |
-7.54% ↓
|
2018年 | 1,673 |
-4.45% ↓
|
2017年 | 1,751 |
-3.29% ↓
|
2016年 | 1,811 |
-8.13% ↓
|
2015年 | 1,971 |
8.49% ↑
|
2014年 | 1,817 |
22.35% ↑
|
2013年 | 1,485 | - |
2012年 | 1,485 |
0.34% ↑
|
2011年 | 1,480 |
-1.33% ↓
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2010年 | 1,500 |
-5.23% ↓
|
2009年 | 1,583 |
16.42% ↑
|
2008年 | 1,360 |
0.06% ↑
|
2007年 | 1,359 |
0.06% ↑
|
2006年 | 1,358 |
0.06% ↑
|
2005年 | 1,357 |
0.06% ↑
|
2004年 | 1,356 |
2.05% ↑
|
2003年 | 1,329 |
2.12% ↑
|
2002年 | 1,301 |
0.06% ↑
|
2001年 | 1,301 |
-13.3% ↓
|
2000年 | 1,500 |
3.45% ↑
|
1999年 | 1,450 |
7.41% ↑
|
1998年 | 1,350 |
8.63% ↑
|
1997年 | 1,243 |
0.06% ↑
|
1996年 | 1,242 |
0.06% ↑
|
1995年 | 1,241 |
-4.52% ↓
|
1994年 | 1,300 |
4% ↑
|
1993年 | 1,250 |
4.17% ↑
|
1992年 | 1,200 |
-4% ↓
|
1991年 | 1,250 |
4.17% ↑
|
1990年 | 1,200 |
-7.69% ↓
|
1989年 | 1,300 | - |
1988年 | 1,300 | - |
1987年 | 1,300 |
30% ↑
|
1986年 | 1,000 |
-9.09% ↓
|
1985年 | 1,100 |
10% ↑
|
1984年 | 1,000 | - |
1983年 | 1,000 | - |
1982年 | 1,000 | - |
1981年 | 1,000 | - |
1980年 | 1,000 |
25% ↑
|
1979年 | 800 |
33.33% ↑
|
1978年 | 600 | - |
1977年 | 600 | - |
1976年 | 600 | - |
1975年 | 600 |
-3.23% ↓
|
1974年 | 620 |
5.8% ↑
|
1973年 | 586 |
-2.33% ↓
|
1972年 | 600 |
20% ↑
|
1971年 | 500 | - |
1970年 | 500 | - |
1969年 | 500 | - |
1968年 | 500 | - |
1967年 | 500 | - |
1966年 | 500 |
-52.61% ↓
|
1965年 | 1,055 |
-6.22% ↓
|
1964年 | 1,125 |
60.03% ↑
|
1963年 | 703 | - |
1962年 | 703 |
0.43% ↑
|
1961年 | 700 | - |
サモアの牛乳生産量の推移を振り返ると、まず1960年代は比較的低調な水準で推移し、500~1,000トンを上下する状況が続きました。この時期は、国内の酪農業が本格化する以前であり、農業全体の発展途上段階であったと言えます。その後、1980年代に入ると国内の酪農政策が着実に進展し、生産量は安定的に1,000トンを超える基準に達しました。1990年代後半から2000年代中盤にかけても増加が続き、特に1999年から2000年には1,500トンに達し、成長が顕著となりました。この背景には、国内酪農業の効率化や技術の進展が含まれていると考えられます。
2014年から2015年にかけては、生産量が急激に増加し、1,817トン(2014年)から1,971トン(2015年)へと拡大しました。この増加は、国内需要の増加や輸出に対する対応力の強化を反映している可能性があります。しかし、その後は逐年減少に転じており、特に2019年以降の減少率は顕著です。2023年の生産量は1,618トンと、ピーク時である2015年の1,971トンから約18%減少しています。
この減少の背景には、いくつかの要因が考えられます。第一に、気候変動の影響が挙げられます。サモアは気候変動の影響を特に受けやすい島嶼国であり、洪水や台風といった自然災害が農業生産に与える影響は非常に大きいです。第二に、国内の酪農市場に関連するインフラの不足や、若年層の農業従事者の減少といった社会的背景も無視できません。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって、輸入飼料や農業機械の調達に支障が出たことも生産量の低下の一因とされています。
さらに、輸出入依存度の高いサモアの農業は、市場価格の変動や貿易政策の影響を受けやすいという地政学的リスクも抱えています。特に中国やオーストラリア、ニュージーランドといった近隣国の市場状況が、サモアの酪農業に直接的な影響を与えることがあります。このような外部要因は、国内生産量の安定化に向けた大きな課題となっているのです。
将来的にサモアの牛乳生産を持続可能にするためには、いくつかの具体的対策が考えられます。まず、気候変動に対応する農業技術の導入が必須です。たとえば、耐久性の高い牧草品種の導入や、洪水被害を軽減する農地管理技術の普及が挙げられます。また、農業従事者への支援を強化し、若者が農業を職業として選択しやすい環境を整えることも重要です。次に、輸入依存度を下げるために、国内飼料生産を増強し、農産物の自給率を上げていくことが求められます。
サモアの牛乳生産が安定し、さらには成長していくためには、国内外の協力が欠かせません。国際機関や近隣諸国との連携を深め、技術支援や経済的サポートを得ることで、持続可能な酪農業の実現に近づくでしょう。このような取り組みによって、サモアの農業がさらなる発展を遂げ、地域住民の生活向上にも寄与できると考えられます。