国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによれば、サモアのコーヒー豆生産量は1960年代に150トンで安定していた時期がありましたが、1970年代以降急激な減少を経験しました。その後、1980年代から2000年代にかけては一桁台に低迷し、近年は再びわずかな増加を見せて12トン前後で推移しています。この長期的な減少傾向と近年のわずかな回復は、サモアの地政学的状況や農業政策、国際市場の動向に関連すると考えられます。
サモアのコーヒー豆生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 12 |
2021年 | 12 |
2020年 | 12 |
2019年 | 11 |
2018年 | 12 |
2017年 | 11 |
2016年 | 11 |
2015年 | 11 |
2014年 | 11 |
2013年 | 11 |
2012年 | 11 |
2011年 | 10 |
2010年 | 10 |
2009年 | 8 |
2008年 | 8 |
2007年 | 8 |
2006年 | 8 |
2005年 | 8 |
2004年 | 8 |
2003年 | 8 |
2002年 | 8 |
2001年 | 8 |
2000年 | 8 |
1999年 | 9 |
1998年 | 10 |
1997年 | 11 |
1996年 | 12 |
1995年 | 13 |
1994年 | 14 |
1993年 | 15 |
1992年 | 16 |
1991年 | 17 |
1990年 | 18 |
1989年 | 20 |
1988年 | 20 |
1987年 | 20 |
1986年 | 20 |
1985年 | 20 |
1984年 | 20 |
1983年 | 20 |
1982年 | 20 |
1981年 | 20 |
1980年 | 20 |
1979年 | 20 |
1978年 | 20 |
1977年 | 20 |
1976年 | 20 |
1975年 | 20 |
1974年 | 40 |
1973年 | 40 |
1972年 | 40 |
1971年 | 150 |
1970年 | 150 |
1969年 | 150 |
1968年 | 150 |
1967年 | 150 |
1966年 | 150 |
1965年 | 135 |
1964年 | 120 |
1963年 | 130 |
1962年 | 130 |
1961年 | 115 |
サモアのコーヒー豆生産量は、最初期である1960年代には年間150トンに到達しており、島国の小規模生産者による輸出作物の一つとして定着していました。しかし1970年代初頭、大幅な減少が見られ、生産量は40トンに急落しました。そして同年代後半にはわずか20トンに低下し、その後の生産量は長期にわたって低迷が続きました。この急激な減少は、気候変動による自然災害、農地の減少、あるいは土地の管理体制の崩壊や、輸出市場の価格変動によるインセンティブの低下が要因として指摘されています。
特に1970年代から1980年代にかけて、サモアを襲ったサイクロンなどの自然災害が、農地やインフラに深刻なダメージを与えたことが挙げられます。また、増加する農業の多様化や作物選択の中で、より収益性の高い作物が重視された結果、コーヒー産業が優先度から外れた可能性も考えられます。このように、農業経済そのものがコーヒーに依存しなくなったことが生産量激減に影響しているといえるでしょう。
1990年代以降、生産量はさらに低落し、一方で世界的なコーヒー市場の競争は激化しました。ブラジル、ベトナム、コロンビアなどの大規模生産国による低コストの大量供給が、サモアのような小国のコーヒー産業の競争力を大きく削ぎました。一部の研究では、輸出価格が低迷する中で農家がコーヒー栽培を放棄し、他の生計手段に切り替えたことが示されています。
一方で2010年代以降、年間生産量が僅かながらも増加しつつある点が注目されます。これは、品質を重視したプレミアム市場向けのコーヒー生産への転換や、観光業と連動した「ローカルブランド」の推進といった取り組みが一定の成果を挙げている可能性を示唆しています。この場合、小規模生産者が協同組合を形成することや、政府および国際援助機関からの支援が重要な役割を果たしています。
しかし、課題は依然として顕在しています。サモアのコーヒー産業が直面する最も大きな問題の一つは気候変動のリスクです。サモアのような太平洋の島国では、サイクロンや干ばつといった極端な気象現象が頻発し、農業全体に大きな負荷がかかっています。これに対応するためには、災害に強い農業インフラの整備や、気候変動に耐性のあるコーヒー品種の導入が必要です。
また、国際市場での競争力向上に向けて、オーガニックやフェアトレード認証などの価値付加型マーケティング戦略を推進することが求められます。現在、日本やアメリカ、ヨーロッパの一部では、高品質で環境に配慮したコーヒー需要が高まっており、これを的確に捉えることで市場拡大の可能性があります。小規模生産国としての利点を活かし、多国籍企業との差別化を図る戦略が有効です。
最後に、地域協力や国際連携が鍵となります。太平洋地域全体での農業知識や技術の共有、資金の配分、共通の課題解決に向けた枠組みづくりが重要となります。これにより、サモアは持続的なコーヒー産業の再建だけでなく、同地域の農業強化にも寄与できる可能性があります。
結論として、サモアのコーヒー豆生産量は50年以上にわたり減少を続けてきたものの、近年の微増傾向は一定の希望を示しています。この流れを拡大させるためには、地政学的リスクや気候変動への対応策、国際市場での競争力向上、さらに地元生産者を巻き込んだ協力体制の構築が不可欠です。国際機関や政府の支援の下、この伝統ある産業が再び輝きを取り戻すことが期待されます。