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ジャマイカのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した最新データによると、ジャマイカのカカオ豆生産量は、ピークを迎えた1987年の3,186トンから長期的な減少傾向に入っています。2022年には222トンにまで落ち込み、過去数十年で最も低い水準のひとつとなっています。このデータは、ジャマイカのカカオ豆生産が様々な課題に直面していることを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 151
-31.8% ↓
2022年 222
-28.62% ↓
2021年 311
61.14% ↑
2020年 193
-40.8% ↓
2019年 326
38.72% ↑
2018年 235
-22.95% ↓
2017年 305
-57.99% ↓
2016年 726
13.97% ↑
2015年 637
-44.8% ↓
2014年 1,154
15.75% ↑
2013年 997
-28.43% ↓
2012年 1,393
179.16% ↑
2011年 499
-63.52% ↓
2010年 1,368
23.47% ↑
2009年 1,108
9.16% ↑
2008年 1,015
-47% ↓
2007年 1,915
221.85% ↑
2006年 595
8.18% ↑
2005年 550
-50.28% ↓
2004年 1,106
-3.82% ↓
2003年 1,150
15% ↑
2002年 1,000
-13.04% ↓
2001年 1,150
4.55% ↑
2000年 1,100
6.18% ↑
1999年 1,036
-38.59% ↓
1998年 1,687
2.06% ↑
1997年 1,653
17.48% ↑
1996年 1,407
-44.56% ↓
1995年 2,538
-1.48% ↓
1994年 2,576
2.14% ↑
1993年 2,522
1.78% ↑
1992年 2,478
41.6% ↑
1991年 1,750
-16.83% ↓
1990年 2,104
51.8% ↑
1989年 1,386
-10.52% ↓
1988年 1,549
-51.38% ↓
1987年 3,186
32.42% ↑
1986年 2,406
1.09% ↑
1985年 2,380
-15.36% ↓
1984年 2,812
22.15% ↑
1983年 2,302
-4.4% ↓
1982年 2,408
37.44% ↑
1981年 1,752 -
1980年 1,752
28.26% ↑
1979年 1,366
-23.98% ↓
1978年 1,797
6.21% ↑
1977年 1,692
2.79% ↑
1976年 1,646
-7.53% ↓
1975年 1,780
10.01% ↑
1974年 1,618
-17.11% ↓
1973年 1,952
-17.91% ↓
1972年 2,378
27.03% ↑
1971年 1,872
-13.45% ↓
1970年 2,163
16.48% ↑
1969年 1,857
-0.38% ↓
1968年 1,864
13.52% ↑
1967年 1,642
-24.47% ↓
1966年 2,174
-11.16% ↓
1965年 2,447
-10.46% ↓
1964年 2,733
14.07% ↑
1963年 2,396
-14.09% ↓
1962年 2,789
-2.82% ↓
1961年 2,870 -

ジャマイカのカカオ豆生産量推移データは、同国がかつてカカオ生産国として一定のポジションを持っていたものの、現在ではその地位が著しく低下していることを明示しています。1960年代の生産量は安定して2,000~3,000トンの間で推移していましたが、1970年代以降、長期的な減少傾向に入りました。特に、1988年や1999年、そして2005年以降、生産量が1,000トン以下に減少したことが顕著な特徴です。

この減少の背景にはいくつかの原因が考えられます。第一に、カカオ豆の国際市場価格の乱高下が挙げられます。価格が不安定であるため、生産者が他の収益性の高い農作物へ転換するケースが多くなりました。第二に、気候変動とそれに伴う自然災害の影響が指摘されています。ジャマイカはハリケーンの通り道に位置しており、これまでに何度もカカオ農地が壊滅的な打撃を受けています。例えば、1988年のハリケーンギルバートのような大規模な災害が生産基盤に与えた悪影響は今も尾を引いています。

さらに農業インフラの老朽化や労働人口の減少も重要な課題です。カカオ農業は伝統的に労働集約型であり、若い労働者の流出や農業従事者の高齢化が生産に影響を与えています。また、病害虫被害も無視できない問題であり、細菌性の病気やカカオ樹に寄生する害虫が収量を著しく削減しています。

データの細部を見てみると、2005年には生産量が550トンと低迷しましたが、その後2007年には1,915トンまで回復しました。しかし、この上昇は一時的なものであり、生産量は再び下降傾向に入りました。最新の2022年のデータではわずか222トンとなっており、この生産量はカカオ豆を主要輸出品とする国としては極めて低い水準です。このような状況はジャマイカのGDPや農業従事者の生活にも影響を及ぼしています。

この課題に対する対策として、まず挙げられるのは、災害耐性を強化した農業技術の普及です。例えば、ハリケーンや病害虫に強いカカオ品種の導入や、農地の集中管理と生産効率の向上が求められます。また、農業労働力を増やすために若者への農業教育プログラムを拡充し、農業を魅力的な職業として捉えられるような社会的仕組みの構築が必要です。さらには、カカオ豆の付加価値を高めるための地域ブランド化や、カカオ製品の加工産業への投資も重要でしょう。

国際的な支援も不可欠です。例えば、国際機関による支援プロジェクトを通じて、ジャマイカのカカオ産業を復興するための技術支援や資金援助を増やすべきです。また、地政学的に見ると、カカオの生産減少は地域的な経済安定性に影響を与える可能性があります。ジャマイカと他のカリブ諸国が共同で農業開発枠組みを形成することで、地域全体で農業の安定化を図ることができます。

結論として、ジャマイカのカカオ豆生産量減少は気候変動や市場動向、社会・経済的な問題に起因していますが、具体的な政策と国際的な協力によって改善の余地が残されています。特に、災害への強靭性の向上、人材育成、そして付加価値創出を柱とする産業戦略は、中長期的な視野でのカカオ産業復興に不可欠です。このような取り組みを通じて、ジャマイカが再びカリブ地域のカカオ生産地としての地位を取り戻すことが期待されます。