国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新のデータによると、ジャマイカの馬肉生産量は歴史的に減少傾向を示しています。1961年の63トンをピークとして、2023年には40トンにまで減少しました。この減少は、特に1970年代から1980年代で顕著で、その後はおおむね安定傾向にありますが、近年さらにわずかな落ち込みが見られます。このデータは、ジャマイカ国内の食肉供給や畜産業を巡る状況、さらには食文化や需要の変化を示唆しています。
ジャマイカの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 40 |
-0.35% ↓
|
2022年 | 40 |
-0.45% ↓
|
2021年 | 40 |
-0.45% ↓
|
2020年 | 40 |
-0.52% ↓
|
2019年 | 40 |
-0.44% ↓
|
2018年 | 41 |
-2.71% ↓
|
2017年 | 42 |
-0.5% ↓
|
2016年 | 42 |
-1.9% ↓
|
2015年 | 43 |
-1.93% ↓
|
2014年 | 44 |
-3.31% ↓
|
2013年 | 45 | - |
2012年 | 45 | - |
2011年 | 45 | - |
2010年 | 45 | - |
2009年 | 45 | - |
2008年 | 45 |
-3.23% ↓
|
2007年 | 47 |
3.33% ↑
|
2006年 | 45 |
1.69% ↑
|
2005年 | 44 | - |
2004年 | 44 | - |
2003年 | 44 | - |
2002年 | 44 | - |
2001年 | 44 | - |
2000年 | 44 | - |
1999年 | 44 | - |
1998年 | 44 | - |
1997年 | 44 | - |
1996年 | 44 | - |
1995年 | 44 | - |
1994年 | 44 | - |
1993年 | 44 | - |
1992年 | 44 |
1.72% ↑
|
1991年 | 44 | - |
1990年 | 44 | - |
1989年 | 44 | - |
1988年 | 44 |
3.57% ↑
|
1987年 | 42 | - |
1986年 | 42 | - |
1985年 | 42 | - |
1984年 | 42 | - |
1983年 | 42 | - |
1982年 | 42 |
-3.45% ↓
|
1981年 | 44 |
-3.33% ↓
|
1980年 | 45 |
-1.64% ↓
|
1979年 | 46 |
-1.61% ↓
|
1978年 | 47 | - |
1977年 | 47 |
-1.59% ↓
|
1976年 | 47 |
-1.56% ↓
|
1975年 | 48 |
-1.54% ↓
|
1974年 | 49 |
-1.52% ↓
|
1973年 | 50 |
-2.08% ↓
|
1972年 | 51 |
-3.71% ↓
|
1971年 | 53 |
2.94% ↑
|
1970年 | 51 |
-15% ↓
|
1969年 | 60 |
-1.96% ↓
|
1968年 | 61 | - |
1967年 | 61 |
-5.12% ↓
|
1966年 | 65 |
0.94% ↑
|
1965年 | 64 |
0.24% ↑
|
1964年 | 64 |
5.46% ↑
|
1963年 | 60 |
-6.06% ↓
|
1962年 | 64 |
1.42% ↑
|
1961年 | 63 | - |
ジャマイカの馬肉生産量についての動向を確認すると、1961年には63トンが記録され、以降はゆるやかな減少が続きました。1970年代には年間50トンを下回る水準に入り、その後約40トン台で安定する期間が見られます。2023年時点では40トンと過去最低水準を記録しています。この長期間にわたる減少の背景には、国内の食肉需要の変化、経済的な要因、あるいは社会文化的な側面が影響していると考えられます。
まず第一に、馬肉がジャマイカにおいて主要な食材として広く消費されているわけではない点が挙げられます。他国と比較すると、たとえば日本や欧州の一部地域では馬肉が食文化として根付いている場合がありますが、ジャマイカでは鶏肉や豚肉、牛肉などが主流です。そのため、馬肉が特定の消費者層に限定されており、需要が低い状態が続いています。
第二に、地政学的な影響や農業政策の変化も無視できません。1960年代と比較した場合、農業の産業構造が変化し、より収益性の高い作物や畜産物に注力する傾向が見られます。例えば、ジャマイカにおけるラム肉やヤギ肉など、輸出需要もある高価値商品に資源が向けられた可能性があります。
また、1970年代以降の減少の要因として、土地利用の変化や都市化の進展が考えられます。世界的な傾向として、農村地域の人口が減少し、それに伴い伝統的な農業や牧畜業の縮小が報告されています。ジャマイカでもこれに類似した状況が進行し、馬の飼養に適した土地や経済的リソースが制限されていった可能性があります。
近年では、動物福祉やエシカル消費への関心が高まる中、馬肉の生産が倫理的な観点から見直される動きも出てきています。このような社会的な背景が持続的な生産量の低下につながっていると見られます。また、新型コロナウイルスの感染拡大による物流の混乱や市場の縮小が、2020年以降の生産量維持への課題となった可能性があります。
現在の40トン台の低水準は、持続可能な生産を行いつつ需要に適応したレベルで続けられていると解釈することもできますが、輸出市場の拡大や国内での需要促進が難しいことから、大幅な回復が期待できない状況にあります。将来的にこの伝統産業を維持するには、馬肉の品質向上や付加価値商品の開発が必要になるでしょう。たとえば、グルメ市場をターゲットにした高級馬肉商品の展開や、観光産業と連携した地域ブランド作りが有効な方策となり得ます。
一方で、ジャマイカ政府および国際機関には、小規模農家の支援や馬の飼育環境の改善に向けた助成策をさらに進めることが求められます。技術革新を取り入れた効率的な生産方式の導入により、農家の採算性を高めつつ、地域経済にも貢献することが可能です。
結論として、ジャマイカの馬肉生産は、減少傾向が長期的に続いており、需要の減少と供給制約の関係が要因となっています。しかしながら、この独特な食肉市場には、国際市場や観光業との統合を目指すことで成長の余地があります。国の政策支援や国際的な協力体制を強化することで、小規模かつ持続可能な生産体制を確立し、馬肉の文化的価値を再評価する機会を築くべきです。この課題をクリアすることで、ジャマイカの畜産業が新たな可能性を見出すことが期待されます。