国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによりますと、ジャマイカの羊肉生産量は1961年以降、大きな減少傾向を示しています。初期の1960年代では年間40トンを超える生産量が見られた一方で、2020年代には一桁台で推移する年が増えています。この長期的な減少には、農業政策の変化、産業構造の転換、そして自然災害や土地利用の変化といった複数の要因が関わっている可能性があります。
ジャマイカの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 6 |
-25% ↓
|
2022年 | 8 |
60% ↑
|
2021年 | 5 |
25% ↑
|
2020年 | 4 |
-20% ↓
|
2019年 | 5 |
-37.5% ↓
|
2018年 | 8 | - |
2017年 | 8 |
-20% ↓
|
2016年 | 10 |
-33.33% ↓
|
2015年 | 15 |
-16.67% ↓
|
2014年 | 18 |
-33.33% ↓
|
2013年 | 27 |
3.85% ↑
|
2012年 | 26 |
36.84% ↑
|
2011年 | 19 |
72.73% ↑
|
2010年 | 11 |
-35.29% ↓
|
2009年 | 17 |
41.67% ↑
|
2008年 | 12 |
20% ↑
|
2007年 | 10 |
25% ↑
|
2006年 | 8 |
-20% ↓
|
2005年 | 10 |
11.11% ↑
|
2004年 | 9 |
12.5% ↑
|
2003年 | 8 |
-11.11% ↓
|
2002年 | 9 |
12.5% ↑
|
2001年 | 8 | - |
2000年 | 8 | - |
1999年 | 8 | - |
1998年 | 8 |
-20% ↓
|
1997年 | 10 |
25% ↑
|
1996年 | 8 |
14.29% ↑
|
1995年 | 7 |
40% ↑
|
1994年 | 5 |
25% ↑
|
1993年 | 4 |
-20% ↓
|
1992年 | 5 |
-50% ↓
|
1991年 | 10 |
66.67% ↑
|
1990年 | 6 |
20% ↑
|
1989年 | 5 |
-44.44% ↓
|
1988年 | 9 |
12.5% ↑
|
1987年 | 8 |
-11.11% ↓
|
1986年 | 9 |
-10% ↓
|
1985年 | 10 |
-23.08% ↓
|
1984年 | 13 |
30% ↑
|
1983年 | 10 |
-9.09% ↓
|
1982年 | 11 |
-8.33% ↓
|
1981年 | 12 |
-36.84% ↓
|
1980年 | 19 |
11.76% ↑
|
1979年 | 17 |
-41.38% ↓
|
1978年 | 29 |
26.09% ↑
|
1977年 | 23 |
-4.17% ↓
|
1976年 | 24 |
14.29% ↑
|
1975年 | 21 |
23.53% ↑
|
1974年 | 17 |
-5.56% ↓
|
1973年 | 18 |
-30.77% ↓
|
1972年 | 26 |
-3.7% ↓
|
1971年 | 27 |
12.5% ↑
|
1970年 | 24 |
-4% ↓
|
1969年 | 25 |
-26.47% ↓
|
1968年 | 34 |
-19.05% ↓
|
1967年 | 42 | - |
1966年 | 42 |
27.27% ↑
|
1965年 | 33 |
3.13% ↑
|
1964年 | 32 |
-15.79% ↓
|
1963年 | 38 |
-2.56% ↓
|
1962年 | 39 |
-9.3% ↓
|
1961年 | 43 | - |
ジャマイカの羊肉生産量の推移を振り返ると、1961年の43トンをピークに、安定した生産量がしばらく続いていました。しかし、1970年代以降、次第に減少し、その後は20トンを下回る水準へと縮退しました。その背景には、いくつかの複雑な要因が絡み合っていると考えられます。まず、人口の都市化が進む中で農業従事者が減少し、伝統的な養羊業が縮小した可能性があります。また、ジャマイカの地理的特徴である山岳地帯の多さや限られた耕作地も、羊の飼育に適さない環境要因として立ちはだかっています。
1980年代から1990年代のデータを見ると、生産量は特に著しく減少し、政策や経済面での影響が懸念されます。この時期は農業全体における構造調整が行われたことや、主要輸出品であるバナナやサトウキビの生産に重点が置かれた結果、羊肉生産の優先順位が下がったことが影響している可能性があります。さらに、ジャマイカは地政学的にハリケーンの通り道に位置し、頻繁な自然災害が家畜産業に大きな被害を与えた背景も考えられます。
2000年代に入り、政策の転換や一部での再投資によってわずかな回復が見られましたが、この回復期は短期的なものであり、持続的な成長には至りませんでした。2012年や2013年に生産量が一時的に増加した際にも、その背景には特定地域での試行的なプロジェクトや、一時的な国内需要の増加が考えられるものの、長期的には再び減少傾向に戻っています。この持続可能でない動きは、国内の畜産業政策の未整備や市場競争力の欠如によるものと思われます。
2020年代では、新型コロナウイルスの影響を受け、輸送や需要の混乱が生産にも波及しました。2020年に4トンという最低水準を記録した後、依然として改善の兆しは見えづらい状況です。また、他国と比較した場合、例えば羊肉生産が伸び続けている大規模農業を展開するニュージーランドやオーストラリアとは対照的に、ジャマイカの小規模農業モデルは競争力を欠いており、輸入品への依存が高まっている点も課題です。
この状況を打開するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず、国内の羊肉需要と供給のバランスを再確認し、持続可能な養羊プランを立案する必要があります。例えば、地理的に適した地域での生産を推進し、効率的な飼育方法を導入することが効果的です。また、地域特産品としてのブランド化や、有機的農法を活用した高付加価値製品の開発を図ることも重要です。さらに、国際協力機関からの技術援助や資金調達を活用し、生産基盤の強化を図るべきです。
一方で、自然災害への対応策も重要な課題です。気候変動の影響を受けやすい地域であるジャマイカにとって、農業分野における災害リスク管理の進展が極めて重要となります。例えば、災害時の家畜保護プログラムを策定し、損害を最小限に抑える仕組みを整える必要があります。
総じて、ジャマイカの羊肉生産量の推移は、過去数十年間での一貫した減少傾向が見られ、その背景には地政学的および経済的な課題が重なっていると考えられます。この現状を基礎に、将来的な復興と成長を目指すためには、技術革新、政策の優先順位付け、自然災害への備えといった具体的で実行可能な対策が必要です。国際的な協力と地域性を考慮に入れた持続可能な戦略が、この分野の再興に貢献するでしょう。