国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、ジャマイカの天然蜂蜜の生産量は、1961年の915トンから2022年の766トンへと推移しています。過去60年以上で生産量に大きな変動が観察され、一時的な増加と減少が繰り返されていますが、近年はおおむね横ばいの傾向を見せています。特に1967年から1978年にかけては1,200トンに達するピークを記録しましたが、その後の数十年間で徐々に減少しています。
ジャマイカの天然蜂蜜生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 765 |
-0.04% ↓
|
2022年 | 766 |
0.04% ↑
|
2021年 | 765 |
0.04% ↑
|
2020年 | 765 |
-0.11% ↓
|
2019年 | 766 |
0.49% ↑
|
2018年 | 762 |
0.14% ↑
|
2017年 | 761 |
-0.06% ↓
|
2016年 | 761 |
-0.38% ↓
|
2015年 | 764 |
-0.73% ↓
|
2014年 | 770 |
-1.28% ↓
|
2013年 | 780 | - |
2012年 | 780 |
4% ↑
|
2011年 | 750 |
0.79% ↑
|
2010年 | 744 |
-2.7% ↓
|
2009年 | 765 | - |
2008年 | 765 |
0.14% ↑
|
2007年 | 764 |
0.14% ↑
|
2006年 | 763 |
0.14% ↑
|
2005年 | 762 |
0.14% ↑
|
2004年 | 760 |
0.14% ↑
|
2003年 | 759 |
0.14% ↑
|
2002年 | 758 |
0.14% ↑
|
2001年 | 757 |
0.14% ↑
|
2000年 | 756 |
0.14% ↑
|
1999年 | 755 |
0.14% ↑
|
1998年 | 754 |
0.14% ↑
|
1997年 | 753 |
0.15% ↑
|
1996年 | 752 |
0.15% ↑
|
1995年 | 751 |
0.15% ↑
|
1994年 | 750 |
0.15% ↑
|
1993年 | 748 |
0.15% ↑
|
1992年 | 747 |
0.15% ↑
|
1991年 | 746 |
-26.69% ↓
|
1990年 | 1,018 |
1.8% ↑
|
1989年 | 1,000 | - |
1988年 | 1,000 | - |
1987年 | 1,000 | - |
1986年 | 1,000 | - |
1985年 | 1,000 | - |
1984年 | 1,000 | - |
1983年 | 1,000 | - |
1982年 | 1,000 | - |
1981年 | 1,000 | - |
1980年 | 1,000 | - |
1979年 | 1,000 |
-16.67% ↓
|
1978年 | 1,200 | - |
1977年 | 1,200 | - |
1976年 | 1,200 | - |
1975年 | 1,200 |
9.09% ↑
|
1974年 | 1,100 |
1.01% ↑
|
1973年 | 1,089 | - |
1972年 | 1,089 |
4.41% ↑
|
1971年 | 1,043 |
0.77% ↑
|
1970年 | 1,035 |
-11.54% ↓
|
1969年 | 1,170 |
4% ↑
|
1968年 | 1,125 |
-6.25% ↓
|
1967年 | 1,200 |
33.33% ↑
|
1966年 | 900 | - |
1965年 | 900 | - |
1964年 | 900 | - |
1963年 | 900 | - |
1962年 | 900 |
-1.64% ↓
|
1961年 | 915 | - |
ジャマイカの天然蜂蜜生産量の長期的な変化を振り返ると、農業および環境の背景要因が大きく影響していることがわかります。データの初期段階である1961年から1978年にかけて、生産量は1,200トン前後まで大幅に増加しました。この時期の農業政策や技術の導入、さらには気候条件が好適であったことが背景にあると考えられます。しかし、その後1979年から2022年に至るまで、生産量は1,000トンを下回る傾向を見せ始め、特に1991年以降は700トン台にまで低下しました。
この生産量の低迷には、いくつかの環境的および経済的要因が重なっています。一つは、蜂群崩壊症候群(CCD:Colony Collapse Disorder)に関連する影響です。これは、農薬や病気、気候変動などが原因で養蜂に大きな影響を与える現象であり、ジャマイカにおいても蜂の減少が報告されています。また、1980年代以降の低迷を招いた要因としては、経済の多角化にともなう養蜂からの人材流出や、農業インフラの老朽化も見逃せないポイントです。1991年からの急激な生産量低下は特に印象的で、これにはハリケーンなどの自然災害や経済的困難が影響した可能性があります。
2000年代以降のデータを見ると、天然蜂蜜生産量は大幅な回復を見せることなく、700トン台で安定しています。2022年には766トンと報告されていますが、これは1960年代後半のピークに比べて大きく下回る数字です。この現状を受け、ジャマイカ蜂蜜産業の持続的な成長に向けての課題が浮き彫りになっています。具体的な対策としては、まず気候変動に対する適応策が重要です。たとえば、訪花植物の多様性を高めることや、生態系を保護するための地域協力を強化することが考えられます。
また、農業指導を通じて養蜂農家の技術能力を高めることも優先課題です。これには、低環境負荷の農薬への転換や、持続可能な養蜂技術の普及が含まれます。さらに、蜂蜜の価値向上を目指したブランディングやマーケティングの強化も有効です。他国、特に蜂蜜輸出で成功しているニュージーランドやブレイジングハニーの産地として知られるマレーシアから学べる点が多くあります。これらの国は、生産量に加え品質を重視し、輸出市場で高い評価を得ています。
地政学的な側面では、カリブ地域全体の気候変動や地震などの自然災害リスクも生産に影響を与える可能性があります。これらのリスクに備えるためにも、生態系保護と持続可能性を重視した政策の採用が急務となっています。さらに、国際連合や地域協力機関を通じた資金調達や技術サポートを活用し、長期的な生産基盤の構築を目指すことが必要です。
結論として、ジャマイカの蜂蜜産業を未来にわたり持続させるためには、生態系保護、農業教育の充実、マーケティングの強化、そして地域間協力が鍵となります。これらの取り組みを統合的に進めることで、蜂蜜生産は単なる農業活動にとどまらず、地域経済や生態系の維持にも貢献する重要な要素となり得ます。ジャマイカ政府のみならず、地域住民や国際組織、民間企業など、あらゆるステークホルダーが連携することで、この目標が達成されるでしょう。