国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、バーレーンの牛乳生産量は1961年に3,750トンであったのに対し、2023年には10,333トンに達しています。長期的な傾向として、1970年代から1980年代にかけて急速な増加が見られましたが、1990年代以降は変動が激しく、近年はやや安定しています。ただし、2019年以降、10,000トン前後で推移する低い生産量にとどまっています。
バーレーンの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 10,333 |
-2.36% ↓
|
2022年 | 10,583 |
5.83% ↑
|
2021年 | 10,000 | - |
2020年 | 10,000 |
-13.73% ↓
|
2019年 | 11,592 |
9.52% ↑
|
2018年 | 10,584 |
-5.55% ↓
|
2017年 | 11,206 |
-3.58% ↓
|
2016年 | 11,623 |
-8.48% ↓
|
2015年 | 12,699 |
-13.26% ↓
|
2014年 | 14,640 |
0.07% ↑
|
2013年 | 14,631 |
4.51% ↑
|
2012年 | 13,999 |
0.07% ↑
|
2011年 | 13,989 |
0.07% ↑
|
2010年 | 13,980 |
55.33% ↑
|
2009年 | 9,000 |
-2.17% ↓
|
2008年 | 9,200 |
-20.69% ↓
|
2007年 | 11,600 |
-8.66% ↓
|
2006年 | 12,700 |
-14.19% ↓
|
2005年 | 14,800 |
40.8% ↑
|
2004年 | 10,511 |
-29.93% ↓
|
2003年 | 15,000 |
-25% ↓
|
2002年 | 20,000 |
42.86% ↑
|
2001年 | 14,000 |
-26.32% ↓
|
2000年 | 19,000 |
8.35% ↑
|
1999年 | 17,535 |
25.24% ↑
|
1998年 | 14,001 | - |
1997年 | 14,001 |
-12.49% ↓
|
1996年 | 16,000 |
-0.41% ↓
|
1995年 | 16,066 |
-11.73% ↓
|
1994年 | 18,200 |
-4.21% ↓
|
1993年 | 19,000 |
1.06% ↑
|
1992年 | 18,800 |
2.86% ↑
|
1991年 | 18,277 |
-1.38% ↓
|
1990年 | 18,533 |
-5.68% ↓
|
1989年 | 19,650 |
17.61% ↑
|
1988年 | 16,708 |
37.31% ↑
|
1987年 | 12,168 |
14.25% ↑
|
1986年 | 10,650 |
11.64% ↑
|
1985年 | 9,540 |
12.43% ↑
|
1984年 | 8,485 |
21.21% ↑
|
1983年 | 7,000 |
15.13% ↑
|
1982年 | 6,080 |
15.15% ↑
|
1981年 | 5,280 |
-7.37% ↓
|
1980年 | 5,700 | - |
1979年 | 5,700 | - |
1978年 | 5,700 | - |
1977年 | 5,700 |
1.79% ↑
|
1976年 | 5,600 |
1.82% ↑
|
1975年 | 5,500 |
-0.25% ↓
|
1974年 | 5,514 |
0.25% ↑
|
1973年 | 5,500 |
15.79% ↑
|
1972年 | 4,750 | - |
1971年 | 4,750 |
5.56% ↑
|
1970年 | 4,500 | - |
1969年 | 4,500 |
5.88% ↑
|
1968年 | 4,250 | - |
1967年 | 4,250 | - |
1966年 | 4,250 |
3.03% ↑
|
1965年 | 4,125 |
3.13% ↑
|
1964年 | 4,000 |
1.6% ↑
|
1963年 | 3,937 |
1.6% ↑
|
1962年 | 3,875 |
3.33% ↑
|
1961年 | 3,750 | - |
バーレーンは面積約770平方キロメートルという極めて小さい島国であり、資源が制約される環境内での農業活動が行われています。牛乳生産は、その中でも食糧自給の重要な一部を占めています。このデータの分析から、バーレーンの牛乳生産の推移には歴史的・地政学的背景、気候的影響、政策的要因が複雑に絡み合っていることが分かります。
1961年から1970年代中頃までは、バーレーンの牛乳生産量は緩やかに増加していました。その後、1980年代には生産量が飛躍的に伸び、特に1988年の16,708トンや1989年の19,650トンという数値は、国内の農業技術の進展や外部支援の成果を示しています。しかし、1990年代に入ると、持続可能な畜産資源の不足や環境の制約から生産は低迷し始め、1997年には14,001トンまで減少しました。この時期、湾岸戦争や地政学的リスクの影響を受け、食糧生産に必要なインフラや輸入品への依存度が高まった可能性があります。
2000年代に入ると、生産量は一時的に回復基調を見せ、2002年には20,000トンというピークに達しました。しかしその後、2004年以降、生産量は大幅に減少し、長期的な減退傾向が続く形となりました。この背景には、主にバーレーン特有の乾燥した気候と水資源の不足が挙げられます。他方で、近年のデータでは、生産量が10,000トン前後で安定しており、大規模な変動は見られなくなっています。
例えば、日本やアメリカと比較すると、バーレーンの生産量は極めて小規模です。日本では、毎年約70~80万トンの牛乳が生産されており、これは人口密度の高い国でも効率的な畜産運営が可能な技術や天候条件が整っているためです。一方、バーレーンは降雨量が極めて少なく、牛の飼料となる作物の栽培も制限されているため、国内生産の拡大には大きな課題が伴います。
また、新型コロナウイルス感染症流行やその後の物流問題も影響を与えています。国境を越えた輸入資源に依存しているバーレーンにとって、物流障害や価格高騰は牛乳生産のコストを大きく押し上げ、持続可能性に影響を与えた可能性があります。
今後の課題としては、まず水資源と飼料供給の確保が重要です。例えば、脱塩技術を利用した水資源の拡張や、輸入飼料への依存を減らすための国際的な農業協定の構築が有効でしょう。また、持続可能な畜産技術を導入し、生産効率を高めることも課題解決への一歩です。さらに、近隣諸国との協力により食品安全保障の枠組みを強化することで、バーレーンの牛乳生産が安定することが期待されます。
総じて、バーレーンの牛乳生産量推移は、国内外の多層的な条件が影響を及ぼしており、短期的に大きな増加を見込むことは難しい状況です。しかし、適切な技術革新と政策が実施されれば、中長期的にはより持続可能な形で生産基盤を強化することが可能です。国際機関や周辺国との協力を生かしながら、課題を長期的な観点で解決していくことが求められています。